高齢者は免疫力が低下し 、様々な感染症に罹患しやすいとされています。
感染症といってもその範囲は広く、通常の風邪から新型コロナウイルスまで様々です。
罹患することによって重度化することも多くあり、若い人なら大事にならないものでも、死に至るほど危険なものも存在するのです。
今回は、高齢者が罹患しやすい感染症の解説をしていきます。
インフルエンザ
毎年インフルエンザの予防接種を受ける人も多いと思います。
インフルエンザが怖いのは、高齢者の場合、感染すると重篤な状態になる可能性が高いということです。
感染力が高く、高齢者施設でも集団感染するケースもあります。
症状としては、38度を超えるような高熱に加えて、関節や筋肉が痛むのが特徴です。
但し、認知症や寝たきりの高齢者の場合、自分で体調の不調を訴えることができないので、周囲の介助者の早期発見が必要です。
ノロウイルス感染症
冬場に多いのがノロウイルス感染症です。
二枚貝 などにこのウイルスが含まれており、加熱せず口にすると感染のリスクは一気に高まります。
牡蠣などは生で食べるとおいしいですが、高齢者施設では必ず十分加熱したものを提供するようになっています。
症状は激しい嘔吐と下痢が特徴です。
特に嘔吐された汚物の処理を丁寧に上手くしないと、一気に第三者へと感染が拡大していくので注意が必要です。
尿路感染症
高齢者施設でも時折この尿路感染症に感染する方がいます。
この感染症は尿道口から雑菌が入り、膀胱や尿路などで感染を起こすのです。
尿道が短い女性の方が男性よりも感染のリスクが高いとされています。
さらに女性の場合、オムツを着用している人は、排泄物に含まれる雑菌が尿路口に侵入し、尿路感染症を引き起こすリスクが一気に高まります。
予防策としては、オムツ交換の時の排便処理は、排泄物である便が尿路口を汚さないように、腹部側から背中側に向かって拭き取るようにし、きれいな微温湯で洗い流すことも必要です。
また、水分補給も大切です。
高齢者は口渇感(喉の渇き)が低下し、全体的に水分が低下する傾向にありますので、十分な水分補給を行わないと尿が出にくくなり、体内に雑菌を溜め込みやすくなります。
水分補給が苦手な人は1日にどれぐらい水分が補給できるか意識しておくことが重要です。
誤嚥性肺炎
高齢者の場合、通常の肺炎も気を付けなければなりませんが、誤嚥性肺炎にも十分気を付けなければなりません。
食事をしたときの食べ物は、通常食道を通過して胃に運ばれます。
しかし、高齢者の場合は喉元の弁機能が低下し、食べ物が器官を通過して肺で炎症を起こすことがあるのです。
誤嚥性肺炎になる原因は食べ物だけではありません。
口腔内の機能が低下してなければ、唾液や痰は自分で外に排出したり、自然に食道の方に運ばれます。
しかし、寝たきりの高齢者の場合は、このような機能自体が低下し、自分の唾液や痰が器官の方に入り誤嚥性肺炎を引き起こすのです。
これを予防する方法として、口腔内を清潔にしておくことが大切です。
例えば、胃婁などで口から食事を食べない高齢者でも、一日3回は口腔ケアを行い清潔を保つように心がけます。
また、痰が喉元に絡んでゴロゴロと音を立てる場合があります。このような時は医師に相談して吸引ができるようにすることも大切です。
MRSA
黄色ブドウ球菌とも言います。通常、人間の体内に存在しており、健康な人なら無害な菌です。
しかし、高齢者など抵抗力が低下している人が感染してしまうと、肺血症や髄膜炎などの重篤な状況になることもあるのです。
緑膿菌
実は非常に身近なところから検出される菌であり、流し台、生野菜、花瓶など湿気がある環境で確認されます。
通常は弱毒性で、健康な人には感染させることはありません。
しかし、高齢者など抵抗力が低下している人に対して、尿路感染症、菌血症や敗血症などを引き起こし、重篤な状態になることもあります。
疥癬
ヒゼンダニというダニの一種が皮膚の下に寄生して、卵を産み付けてどんどん繁殖していく感染症です。
患部は、湿りやすい場所である、脇の下、指の間、陰部、太ももの内側が多いのが特徴で、とにかく痒くて夜間も眠れないほどと言われています。
治療をしないまま放っておくと、皮膚を掻きむしって出血を伴うことも珍しくありません。
疥癬は健康な人でも感染してしまうため、施設のスタッフや介護をする家族も感染します。
疥癬に感染した高齢者に対しては必ず手袋を使用し、直接触らないようにします。
また、衣類や寝具を介しても感染するリスクがあるため、更衣介助やシーツ交換の際も手袋を使用しましょう。
皮膚が赤くなり痒がっているような状況が続けば皮膚科を受診し、専用の薬を処方してもらってください。
また、感染後は毎日入浴することが望ましく、清潔を保つことが大切です。
白癬菌
いわゆる水虫のことで、『白癬菌』と専門用語で呼びます。
足の指と指の間にできれば『水虫』になります。
爪が白っぽく、もろくなってしまう『爪水虫』があります。
全身中に感染してしまい、炎症や痒みをともなうものを『ぜにたむし』というものがります。
陰部付近に赤色の斑点ができれば『いんきんたむし』になります。
頭部に白癬菌が感染する場合があり、これを『しらくも』と呼びます。
水虫も感染力が強く、感染者の拭いたバスマットで足を拭いただけで感染することも珍しくありません。
爪水虫の場合、外部から塗る薬だけでは完治しないとされており、皮膚科を受診すれば飲み薬も処方されます。
いずれにしても、皮膚に異常を感じたら、早期に皮膚科を受診して専門の薬で対応するように心がけましょう。
高齢者の感染症を予防・早期発見するポイント
症状が出にくいことを知っておく
一般的に高齢者は症状が出にくいとされています。
例えば、肺炎に感染すれば発熱を伴うのが特徴ですが、高齢者の場合そのような症状が出ない場合があります。
症状が出ないということは、異変に気が付きにくいということになり、発見が遅れてしまうケースも珍しくありません。
『何かだるそうにしているけど、熱がないから大丈夫』というような思い込みを捨てるようにしましょう。
介護者が媒介者にならないように
在宅介護においては、一人が複数の高齢者の介護をすることも珍しい時代ではありません。
そこで注意が必要なのが、介護者が媒介者にならないようにすることです。
例えば、インフルエンザに感染した高齢者の介護をする際は、うがいや手洗いマスクの着用を基本とし、排泄物や食事の器などは素手で触らないようにしましょう。
どうやって感染するかを知る
感染症はその原因となる病原体が体内に入り、症状が出てしまう病気のことです。
その病原体が体から体に移動することによって『感染』が起こるのです。
垂直感染とされている、母子感染があり、妊娠中または出産の際に病原体が赤ちゃんに感染するケースもあり、これはある意味防ぎようがないとも考えられます。
一方、水平感染とされるものには4種類があります。
接触感染
人から人へ直線接触することによって感染します。
飛沫感染
くしゃみや咳をして菌が飛び散り、それを吸い込むことによって感染します。
空気感染
空気中を漂うとても小さな粒子菌を吸い込むことによって感染します。
媒介物感染
ノロウイルス感染症のところで先述しましたが、2枚貝などを媒介して感染することを指します。