介護保険制度を利用して在宅介護や施設介護を受ける場合、サービスを提供してくれる事業所との間に、トラブルや不満が発生することがあるかと思います。
料金を支払っているので、自分たちが納得いくサービスを受けたいですよね。
そこで今回はどのようにトラブルや不満を解決していけば良いかをご紹介します。
そもそも苦情や不満を言ってもいいの?
介護保険制度が施行されたのは2001年でした。
それまでは措置制度によって特養などへの入所が決まっていたので、利用者やその家族が声を上げて不満を口にする風潮があまりありませんでした。
措置制度が終了し個人契約となったことにより、利用者は自由に施設を選ぶことができるようになったのです。
それによって、施設側に競争意識が生まれ、どの施設も質の高いサービスを提供するような努力が必要になりました。
その努力は、利用する側の意見を参考にしないといけないという観点から、積極的に苦情や不満、それにサービスに関する相談をオープンにして受け入れるようになっているのです。
よって、介護保険制度施行前と違い、介護保険事業所には苦情の窓口を設置していたり、行政関係にも窓口があるのです。
苦情や不満は誰にどの程度まで相談できるのか
例えば、施設介護によってお世話になっている場合、その施設のスタッフと顔なじみの関係あると思います。
そのような場合には、
「うちのおばあさんの服が汚れていたから気を付けてほしい」
「車いすが汚れていたので確認をお願いします」
「居室の臭いが気になるのですが・・・」
など、気軽に何でも言える関係を築いておくのが理想でしょう。
しかし、なかなか言い出せない人も少なくはありません。
そんな場合は、生活相談員(支援相談員)に声を掛けることをおすすめします。
生活相談員(支援相談員)は、家族と利用者とコミュニケーションを取り、連絡・調整を行います。
近くのスタッフになかなか声を掛けられない場合は、是非、生活相談員(支援相談員)に声を掛けてみてください。
きっと、親身になって話を聞いてくれます。
正式に苦情を申し出る窓口
前々から気軽にスタッフに不満を訴えているのに、改善してもらえていない・・・という場合には、正式に苦情を申し出るのも一つの方法です。
ケアマネジャー(在宅介護の場合)に申し出る
デイサービスやショートステイなどを利用する、在宅介護の場合は担当するケアマネジャーが窓口になっています。
ケアマネジャー本人に対する苦情は勿論、実際にサービスを受けているデイサービスやショートステイ、訪問介護、訪問看護などの苦情も一括して窓口になっています。
サービス提供事業者窓口に申し出る
実際にサービスを受けている事業所に苦情相談窓口があります。
例えば、特養や老健、サービス付き高齢者向け住宅などの、介護保険が利用できる施設では苦情相談窓口を必ず設置しなければならないとされていますので、そちらに相談するといいでしょう。
デイサービスやデイケア、訪問介護、ショートステイなどの居宅介護事業所でも同じで、苦情窓口が必置とされています。
ちなみに、担当窓口は生活相談員やサービス提供責任者などが行うことが多く、苦情受付責任者は管理者となっています。
自治体の介護保険窓口に申し出る
自治体によって介護保険を担当する課の名称は違います。
例えば、『介護保険課』『生活介護課』『介護福祉課』などの名称になっています。
ネットで、『自治体名(例えば横浜市) 介護保険 苦情窓口』で検索するとヒットすることが多いようです。
電話での相談でも構いませんし、直接出向いても話を聞いてくれます。
国民健康保険団体連合会の窓口に申し出る
一見、介護保険と国保連はあまり関係がないように思えますが、以下のように苦情について位置付けられています。
介護保険法第176条に基づき、介護保険が目的とするところの円滑な運用に資するため、被保険者等からの苦情を受け付け、サービスの質の向上にかかる指導又は助言をすることになっています。 指定サービス事業者は「運営基準」の中で、利用者の苦情に迅速かつ適切に対応することが明示されています。
また、国民健康保険団体連合会から指導又は助言を受けた場合には、それに従って必要な改善を行わなければならないとされています。
電話で連絡しても構いませんし、直接窓口まで出向いても対応してくれます。
サービス提供事業者に苦情を申し出た時の流れ
折角勇気を出して苦情や不満を申し出ても、適切な対応がなされなければ不満が増すばかりです。
苦情を受け付けた時点で、どのような流れで解決されるかを解説します。
①申し出は担当者へ
面会などでなどで見かけた介護スタッフに伝えても大丈夫ですが、できたら苦情受付担当者に直接伝えるのが理想です。
内容が変化して担当者に伝わる可能性があるためです。
担当者の名前は、契約時に押印した『契約書』や『重要事項説明書』などに記載されていたり、施設内の掲示板にも書かれていることもあります。
②伝えたいことは最終確認を
担当者に伝える場合、必ず今回の苦情について施設側にどのようにしてもらいたいか伝えます。
これが曖昧だと、自分が思っていた展開にならないことがあります。
例えば、
管理者から正式に謝罪の言葉が欲しい
今後このようなことがないように気を付けて欲しい
改善内容を文書で説明して欲しい
などがあります。
③第三者委員会への報告について検討する
第三者委員会(内部審査)といって、施設などの職員でない人を委員会のメンバーにして、苦情処理が適正に行われるようになっています。
そちらにも、苦情について報告して欲しければその旨を伝えましょう。
通常は、苦情処理の流れの中で、納得出来なければ第三者委員会に伝えることが多いです。
第三者委員会に報告する必要がないと判断するのは、施設側でなく苦情を申し出る側です。必要がないと感じたら「今回は第三者委員会への報告はしなくても構いません」と伝えればいいでしょう。
④苦情に対しての結果報告
苦情に対して、その結果どうだったかの説明があります。
その際に、②で述べた内容の対応をしてくれることになるでしょう。