在宅介護

ヤングケアラーとは?どんな問題が起きているのかを知ろう

ヤングケアラーという言葉をご存知でしょうか?

ヤングケアラーとは介護や家事、育児などを行っている18歳未満の子どものことを指します。

現在ヤングケアラーは社会的な問題として、大きくクローズアップされています。

ヤングケアラーという言葉を知らない人も多いかもしれませんが、この記事ではヤングケアラーの抱える問題やその原因についてご紹介します。

ヤングケアラー問題とは?

ヤングケアラー問題は、子どもの人生を左右してしまう大きな問題です。

子どもは自分に与えられた環境に疑問を持てず、「これが当たり前」だと環境の改善を望むこともできません。

ヤングケアラーの実態を知り、少しでも事態の改善に努めなければならないのです。

15歳~19歳未満のケアラーは37,000人

2020年3月に毎日新聞社が行った調査では、ヤングケアラーと呼ばれる15歳~19歳の子供の数は、全国に推計で37,000人以上いることが報告されています。

  • 家族の代わりに介護をしている
  • 家計を支えるために労働をしている
  • アルコールや薬物依存の家族に対応している
  • 慢性的な病気の家族の看病をしている
  • 障がいや病気の家族の代わりに家事を行っている

これらの行動は、家庭でのお手伝いの範囲をはるかに超えています。

長期で継続的に行われているのがヤングケアラー問題の特徴で、学業に支障が出ているケースも少なくありません。

核家族化や女性の社会進出による晩婚化なども影響し、子どもが若いうちに親の介護や祖父母の介護を担わなくてはいけないともいわれています。

虐待とは別のカテゴリーで扱われていますが、中には虐待と変わらない状況に追い込まれている子どもがいるのも現実です。

生死に直面するケースも

ヤングケアラー問題は、子どもの生死にかかわるケースも十分にあります。

  • 親が働けず経済的に困窮してしまう
  • 正しいケアの方法がわからず事態を悪化させてしまう
  • 食事や睡眠をとれないほど時間的に追われてしまう

など、子どもには責任がない部分で常に追い込まれてしまう危険性をはらんでいるのです。

希薄な近隣関係も原因?

近隣との希薄な関係性もヤングケアラー問題を深刻にしている原因の1つです。

昔は近所付き合いがあり、町内会などの組織も十分に機能していました。

隣の家族構成や病気などの状態をよく知り、お互いに声を掛け合って足りない部分を補っていたのです。

近年では濃厚な近所づきあいを避ける傾向が強く、挨拶をする顔見知り程度のお付き合いしかしていない人が増えています。

隣で起きている深刻な問題に気付ける基盤がないのです。

近所に助けを求めるという風習が希薄になってきていることが、ヤングケアラー問題をより深刻にしてしまっているといえるでしょう。

ヤングケアラー問題の原因を考える

ヤングケアラー問題は早急に改善策を打たなければいけない問題です。

厚生労働省は『ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム』を発足し、問題の解決に動いています。

しかし、今現在問題に直面している子どもが多くいることも事実です。

いったいどんなことが原因で、ここまで多くのヤングケアラーを生み出してしまったのでしょうか?

支援に関する知識不足

1つ目の原因は、ヤングケアラーの支援に対する知識の不足です。

子どもたちは日々の生活に追われ、情報収集の機会を持つことが難しい毎日を送っています。

国や各自治体では実態の調査や改善のプロジェクトを立ち上げていますが、実際にケアを行っている本人や家族からのSOSがなければ、具体的な支援を行うことができません。

  • どこに助けを求めればよいのか
  • 具体的にどんな支援を受けられるのか
  • 支援にかかる費用はいくらか

まだ認識の浅いヤングケアラーについては、高齢者の介護保険やひとり親家庭の支援ほど情報が発信されていません。

情報を得る機会がない、SOSの発信ができない、支援策を知らない…これがヤングケアラーの問題を引き起こす原因の1つといえます。

実態把握の難しさ

ヤングケアラーが潜在化してしまうのは実態把握の難しさも考えられます。

  • 介護や世話をしていることを周囲に言えない
  • 介護や看護が必要な家族がいることを知られたくない
  • 同年代の友達や学校の先生には相談ができない

以上のような理由で学校でも把握ができないのが現実です。

ケアラー本人がSOSを発信できない、発信の仕方がわからないという状況は、実態の把握ができない大きな原因でしょう。

問題の認識不足

ケアラー本人が自分の問題を認識できていないことは、ヤングケアラー問題の根本といえます。

  • お手伝いの一環として捉えている
  • 「家族だから」「やって当たり前だから」という意識が根強い
  • 家庭のことだから他人には言えない
  • 病気や障がいなどに関する支援の知識がない

子どもが学校や部活動などと並行して、家族のケアをすることは容易ではないはずです。

でも『介護経験のない友人に話しても仕方がない』『自分の家のことだから自分で解決するしかない』と思い込んでしまう問題の認識不足は問題をさらに大きくしてしまうのです。

まとめ

ヤングケアラー問題は私たちの生活の身近な問題と捉える必要があります。

家族という限定された中で起きている問題ではありますが、社会全体の問題として改善していく必要があるのです。

この記事を読んでいるケアラーの方がいたら、自分が問題を抱えているのだという意識を持ってください。

SOSを発信し、支援を求めることが恥ずかしいことではないということに気付いてください。

国や自治体、支援団体が助けてくれるのだということを知ってください。

そして周りの大人は、少しでも異変を感じたら手を差し伸べる勇気を持ちましょう。

ヤングケアラーへの支援の充実は、早急に取り組まなければいけないのです。

  • LINEで送る