病気・症状

食べられなくなったときの対応は?胃婁とはどんなもの?

一般的には高齢になると食欲がなくなり、出された食事を全て食べないこともよくあることです。
口から栄養が入らなくなると、体力はどんどん衰えて、やがて死を迎えることになるでしょう。
今回は、高齢者が食べ物を口から摂取できなくなった場合、どのような対応策があるかを解説していきます。

そもそもなぜ食欲がなくなるのか

消費カロリーが減少するため

単純に消費されるカロリーと、摂取されるカロリーが同じだとバランスが取れていることになります。

高齢になると活動量が減少し、消費カロリーも少なり、その結果、食欲が減少して「食べたい」と思うことが少なくなるのです。

特に、車椅子生活や寝たきりの高齢者はこれが顕著に現れます。

脳の機能が低下するため

いわゆる認知症によって食欲が低下するのです。

通常は目の前に出された食事を目にすると「美味しそう」「食べていようかな」「どんな味がするのだろう」「これは量が多いな」など、食べ物として認知することができます。

しかし、重度の認知症になると、食べ物を食べ物だと認識することができなくなります。

その結果、自分で食べるという行為ができなくなってしまうのです。

疾患が関係することも

37.8度の高熱と錠剤の写真

高齢者になると様々な疾患を引き起こしやすくなります。例えば、若い人なら、自分の体調不良を周囲に訴えることができ、食欲がないことも伝えることができます。

しかし、寝たきりや認知症の高齢者はそのように訴えることができませんん。

例えば、虫歯や口内炎によって、口に食べ物を入れても痛くて吐き出してしまうこともあるのです。

まずは家族で相談

栄養が口から入らなくなるとやがては死を迎えます。

そうならないためにも、何らかの手を施して栄養が体内に入っていくようにするのか?

それとも、自然に任せるのかを考えないといけません。

勿論、本人に意識があるのなら本人の意思を尊重するのがいいでしょう。

在宅介護で食べられなくなったら

在宅介護であれば、食欲不振や体重減少などに気が付きやすいでしょう。

そうなると、家族だけではどうすればいいか分からず、慌てる場合もありますが、基本的には、介護保険で関わる各関係機関への連絡・相談を行うようにします。

まずは主治医に相談

もしもしオレオレの写真

家族で話し合いをした結果を踏まえて、主治医に相談します。

もし、医療や介護の力でなんとか体内に栄養を摂取する選択をした場合、アドバイスをもらえます。

例えば、栄養補助食品の情報提供を受けることもあります。

あるいは、介護領域でなく、積極的に医療を受けて体内に栄養を吸収させる方法の説明をしてくれます。

ケアマネへの連絡も忘れずに

ケアマネはケアプランを作成し、一か月どのような介護サービスを利用して支援を行うか提案してくれます。

『食事が食べられなくなってきてい・・・』という情報は、家族からケアマネに行う場合もあれば、逆にサービス提供事業者から報告があるケースもあります。

いずれにしても、食べられくなりつつある状態が気になり始めたらケアマネに一言報告をするようにしましょう。

好物を食べてもらう

ジューサーでスムージーを作る様子の写真

本人の年齢にもよりますが、好きなものは食べることができることもあります。

考え方としては、3食の食事に限らず、食べられるものを食べられるタイミングで食べてもらうように食への意識を変えていきます。

例えば、野菜が苦手な人に対しては、無理に野菜料理を作り介助するのではなく、プリンやヨーグルト、ジュースなどを好んで食べる人もいます。

栄養補助食品を考える

少ない量で、比較的多くのカロリーが摂れるのが栄養補助食品です。

ドラックストアなどで購入できます。

栄養補助食品と聞くと、あまり味がなく美味しくないイメージがあるかもしれませんが、コーヒー味、フルーツ味、ヨーグルト味など、飽きずに食べられるように工夫がされています。

ゼリータイプやドリンクタイプがありますので、その方の好みや嚥下(※)状態で選択すると良いでしょう。

※嚥下(えんげ)・・・
口の中のものを飲み込みやすい大きさにして飲み込むこと。この機能が低下すると上手く飲み込めなくなるので、状態をみて食事を柔らかくしたり、流動食へ切り替えたりします。

施設介護で食べられなくなったら

家族より施設の職員の方が状態を把握できているので、施設職員から「少しずつ口から食べられなくなってきています・・・」と連絡があるでしょう。

そして、このまま自然に任せて食べられるだけの量を摂取してもらうようにするのか、医療的対応で体内に栄養を摂取するのかの選択を迫られることになります。

自然に任せた対応を選択するということ

例えば特別養護老人ホームの場合、医師は常駐しておらず、各職種が相談を行いどのような方針でケアをするかを検討します。家族が自然に任せた対応を選択するのであれば、医療機関には行かず、施設でできることを行うことになり、やがては看取り介護を選択することになります。

在宅介護のところでも述べましたが、食べられるものを食べられるタイミングで食べてもらうように意識を変えていきます。

よって、施設側から、本人の好物の差し入れを持って来て下さいと依頼されることもあります。

施設でも栄養補助食品の提供がある

カルテを持った白衣姿の女性の写真

在宅介護と同様に、施設でも栄養補助食品を提供してもらえます。

例えば、食事の全体量を半分にして、残りは栄養補助食品で補うという方法があります。

施設入所の場合、別途料金がかかる場合がありますが、大体、一日120円程がプラスされる計算になります。

主治医から処方される

栄養補助食品は市販で購入できますが、医師の処方によって更に強力な栄養剤が出される場合もあります。

かなり甘く感じますので好みが分かれますが、施設では食欲不振や著しい体重減少の方によく処方されています。

医療的ケアで対応する

案内をする美人看護師の写真

在宅介護でも施設介護でも共通していることですが、医療的ケアを行って体内に栄養を摂取する方法があります。

中心静脈栄養(IVH)

中心静脈にチューブ(カテーテル)を刺し込み、栄養の輸液をそこに注入する方法です。

中心静脈とは、心臓の近くに位置する上大静脈と下大静脈を指します。この中心静脈は血液の流れが速く、量も多いため輸液が入っていってもすぐに血液で薄くなります。長い期間かつ安定的に点滴ができるということになります。

IVHを行ってもケアをしてくれる施設(特養)などもありますが、感染症のリスクがあるため実際の数は少ないのが現状です。

経管栄養

チューブを利用し、腸や胃に直接栄養を流し込んで、カロリーを摂取する方法です。

よって、チューブを通るのは液体状のものに限られてくるのです。

経鼻栄養

鼻からチューブを挿入して栄養を流し込みます。

鼻からなので、身体に穴を開ける手術が必要ありませんので、初期負担が少ないのです。

再び食欲が出て、口から食べられるようになればチューブをそのまま抜くことも可能です。

一方で、鼻に異物を入れるという不快感から、本人がチューブを抜いてしまうとリスクもあります。

本人がチューブを抜いた時と、定期的な交換の時は再度挿入しないといけませんので、その時の負担が大きくなってしまいます。

経口栄養

口からチューブを挿入して栄養を流し込みます。

鼻から同様、身体に穴を開ける手術が必要ありませんが、強引に栄養を注入されているような印象があるため、最近はあまり行われなくなっています。

胃婁(いろう)栄養

胃ろうのイラスト

胃に直接穴を開ける手術を行い、そこにチューブを通します。そしてそこから栄養を流し込む方法なのです。

手術によって穴を開けるので、事前検査の結果、胃瘻造設手術ができない場合があります。

顔からチューブが露出しないため、見た目に抵抗を感じない人が多いですが、穴を開けた周囲がただれるなどのトラブルが起きやすいです。

経管栄養の中でも、胃婁は特養などの介護施設で多くの受け入れを行っており、医師、看護師、介護スタッフなどの連携によって、管理が施されています。

胃婁で使われる栄養剤は、医師の処方による特別なもので、薬や水分もチューブから流し込むことによって摂取できます。

また、入浴も特別は配慮は必要なく、通常通り入ることができます。

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