在宅介護において、親や兄弟姉妹の介護を行なっていると、大きなストレスの原因になることがあります。
その結果、精神的に不安定にあり、時によっては心療内科を受診するケースもあります。
今回は、介護鬱になる原因を解説し、どのような症状があるのかを説明します。また、介護鬱に対しての対応策もご紹介します。
なぜ介護鬱になるのか?
介護鬱とは正式な疾患名ではありませんが、介護を行う人が、普段の介護を通してストレスや不安、孤独感、喪失感などが原因となり発症してしまう鬱病のことを、介護鬱と呼ばれています。
ここでは、介護鬱になる原因を解説していきます。
常に介護のことが頭から離れない
介護が日常の出来事になると、そのことで頭がいっぱいになります。
主婦が、『晩御飯は何にしようか?』と毎日考えるように、介護のことが頭から離れずにいて、精神的にかなりのストレスになるのです。
趣味などがあり、それと同時進行で毎日の生活を送れるのならいいのですが、介護しかせず、他のことに気を向けないでいるとそれは大きな精神的負担になるでしょう。
肉体的な疲労が慢性化している
娘一人が両親を介護するというケースもあり、肉体的に介護から離れることが出来ない日々を過ごすこともあります。
朝のデイサービスの支度、夜の食事の準備、夜のオムツ交換や痰の吸入など、常に緊張した状態が続き、同時に体力的にも辛い生活を続けている人も多いのです。
経済的に余裕がない
『いつまで続くか分からない介護・・・』
『介護に掛かる費用はいくら必要なんだろう・・・』
このように考えながら介護をしている人もいます。
例えば、若年性アルツハイマー病に罹患したりすると、最期を迎えるまで何年もあり、それにかかる費用は想像も出来ないほどにもなるでしょう。
40代、50代で罹患すると、本来働きながら得る所得(給料など)がないわけですから、やりくりが大変です。
社会保障制度などによって、必要とされる費用をすべて負担する必要することはないと思いますが、残された家族は自分達の生活もあるので、いつもお金のことばかり考えて何かに追われているような切迫感があるのです。
相談できる相手がいない
通常の鬱病でもいえることですが、ストレスが溜まったとき、それを発散できる場所がないのです。
最も簡単な方法として、人としゃべるという方法がありますが、その相手がいないで様々なことを一人で抱えこんでいることが多いです。
介護鬱の症状について
毎日続く介護・・・気が付いたら介護鬱かも??と思う人もいるかもしれません。
以下、介護鬱の症状について解説してましたので、確認をしてみてください。
夜間眠れない
いつも介護のことばかり考えて頭から離れず睡眠不足になってしまうのです。
例えば、夜間はゆっくり休みたいと思い、ショートステイなどを利用したとしても、中途覚醒してしまうケースもあります。
頭では、今は少し介護から離れて休養を取ればいいと思っていても、脳が休もうとしないで、いつも緊張感がある状態になっているのです。
食欲がなくなる
他の鬱病でも同じことが言えるのですが、精神的・肉体的にまいってしまい、食欲減退になってしまうのです。
介護するべき本人が、健康で栄養あるものを食べないといけないことは分かっていても、食べ物が喉を通らないほどストレスが溜まっている状態です。
体重減少が現れたら要注意です。
疲れがなかなか取れない
慢性的な肩こり、首の痛み、腰痛、眼精疲労などに加えて、全身がだるい、朝眠くてなかなか起きられないなどの症状があります。
勿論、疲れが取れないということは休養時間の確保不足にも関係するのですが、それをクリアしたとしても、身体が重くてスッキリしないという症状があります。
不安や焦りが常にある
周囲からのプレッシャーや『介護とはこうするべきである!』と考えている人に多く現れる症状です。
具体的に、どんなことに対して不安や焦りがあるかは本人にも分からないことが多いのです。
なんとなく、何かに追い込まれていて、自分の力でそれをどうにかしないといけないという焦りがあり、気持ちがソワソワして落ち着きがなくなってしまうのです。
あらゆることがマイナス思考になる
オムツ交換が上手く出来ない・・・
下痢が続いている・・・
スムーズに入浴してくれない・・・
認知症が悪化している気がする・・・
食事を出しても途中で食べなくなる・・・
普段、介護をしていて、上手くいかないことがきっかけとなって、介護以外の日常のことまでマイナス思考になってしまいます。
そして、自分を責めてしまい、身の回りで起こる様々なことに対して客観的に見ることができなくなってしまうのです。
介護鬱の対応策
これまでの、介護鬱の症状を読んで、「もしかして自分も介護鬱かも・・・」と感じた方は以下の対応策を取ってみてください。
病院を受診する
病院を受診したら沢山の量の薬が処方されて、どうにかなってしまうのでは?と考える人も少なくないようです。
心療内科の薬は、飲む量や飲み方を間違えれば危険ですが、医師に自分の症状をしっかり伝えて、それに対して処方された薬なら信じて服用してみましょう。
介護で辛いこと
大変なこと
時には泣いてしまいそうになること
身の上話をするだけでもスーっと、心が落ち着く場合もあります。
薬が処方されなければ、どのようにして、介護に向き合って普段の生活を送ればいいかのアドバイスを貰えることもあります。
カウンセリングを受ける
医師である程度の話は聞いてくれますが、本格的なカウンセリングを別の機関で受けるのも一つの方法です。
カウンセリングは、一方的に話すのではなく、対話によって自分の持っている悩みや辛さ、不安などを解消へと導いてくれることなのです。
カウンセリングは医師ではなく、臨床心理士や認定心理士などの資格を持った方たちが対応してくれるケースが多いです。
但し、医療保険が適用しない場合が多く、全額自己負担になる場合があります。
休養を取ってみる
休養を取る方法の一つとして、介護保険サービスの利用があります。
例えば、日帰りでお預けできるデイサービスや、3泊4日や9泊10日などの宿泊でお預けできるショートステイなどがあります。
特に、夜間も介護者がゆっくり休養できるショートステイは人気で、多くの施設では事前予約をしないとなかなか空きがない状態です。
普段は介護のことばかり考えて生活していても、本人と離れて休養を取ることによって、精神的に落ち着く場合があります。
疲れたら、介護保険サービスを利用するというのではなく、月に数回、定期的・計画的に利用することをお勧めします。
ストレスが溜まっている・・・と感じる前に利用することがポイントです。
話し相手を見つける
近所の人や親戚など、身近な人に話しにくければ、担当のケアマネジャーや民生委員の方達でも構いません。
また、認知症を患っている家族の自助グループなどもありますので、集会などに参加するのも一つの方法でしょう。
自助グループの場合、同じような環境に置かれている家族が集う場なので、「自分だけが大変ではない」「そのような介護方法もあるのか・・・」という気持ちになれることもあります。
介護の分散を検討する
一人だけが介護をするのではなく、兄弟姉妹などにも相談して介護を手伝ってもらう方法があります。
主介護者(キーパーソン)は居てもいいでしょう。その介護者をフォローできるぐらいの役割でもいいので、何かできないか相談することが大切です。
兄弟姉妹が協力して介護をしてくれることよって、きっと介護を受けるご両親なども嬉しい気持ちになれることでしょう。