高齢になると便秘傾向になり、なかなか自力では排便をコントロールできないのが現状です。
介護者としては、食べているのに排便が無ければ不安になり、なんとかして排便があるようにしていきたいものです。
今回は、高齢者の便秘の種類について解説し、食事を含めた便秘に対する対応策をお伝えします。
高齢者の便秘の種類
弛緩性便秘
便秘のうち大腸の機能低下による便秘には、加齢や下剤の長期連用によって大腸の蠕動運動が低下したために起こります。
痙攣性便秘
ストレスなどのために大腸の一部が細くなって便が通過しないために起こります。
直腸性便秘
排便反射が弱いために起こります。
便秘がもたらす悪影響
特に高齢者は自分が便秘であると認識がない場合があるので、周囲の介護者がどの程度の便秘状態なのかを把握して、身体に悪い影響が出ないようにしておく必要があります。
便秘状態なのに、そのまま放置しておくと、食欲不振になったりする他、発熱、吐き気、腹痛などを引き起こします。
さらに、状況が酷くなると嘔吐があったり、腸閉塞になることもあるのです。
高齢者に便秘が多い理由
食事摂取自体が少なくなる
20代、30代の若いころに比べるとどうしても食欲が低下し、摂取自体が減少します。
すると、便の量が少なくなり、排便が出にくくなるのです。
腸の動きが弱くなる
腸の動きと身体の動きは関係性があります。
高齢になり、身体を動かす機会が減少すると、腸の動きにも影響が出て、便がなかなか排出されなくなってしまうのです。
便を出す力が低下する
便意あっても、それを出す力がなく、便秘になってしまうのです。
排便をするときは、腹筋は勿論、肛門括約筋も使いますが、体力低下と伴に筋力が低下するのです。
特に、体力のない寝たきり高齢者に多いです。
便意が鈍感になる
便が直腸まで行くと、脳に排便をするように指令を出します。
その指令が十分に働かず排便のタイミングを逃してしまうのです。
便秘の診断について
排便時、強くいきまないとなかなか出ない、出たとしても硬い便しか出ないなどがあります。
また、出ている量が全体的に少なく、排便が終わった後も、残便感や腸に詰まった感じがある場合もあります。
しっかり食事を摂取しているのに、週に3回未満しか排便が無い場合も便秘だといえるでしょう。
便秘改善の対応策
便秘状態になる前に、配慮しておきたいことをお伝えします。
排便習慣を身に着ける
足腰が弱い高齢者が便器に座ったり、立ったりすることは大変ですが、一日最低1回は排便をする習慣を身に着けるようにします。
結果的に、排便がなくても構いません。例えば、朝起きて朝食後に便器に座ってみるということを習慣にすることで、身体が排便しやすい状態に改善されることが多いのです。
人間の身体は、座る姿勢になることによって、腹圧のかかる方向と肛門菅の軸が同一方向を向き、排泄しやすくなるのです。
適切な運動を行う
要支援状態ならば、外を歩くことができるレベルだと思いますので、散歩やウォーキングがいいでしょう。走ることができるからといって、無理することはありません。肝心なことは、軽い運動を継続して行うことです。
要介護状態ならば、なかなか自分一人で歩くことは難しいでしょう。そんなときは、介護保険サービスを利用して、デイサービスやデイケアで軽体操をすることをお勧めします。
デイサービスやデイケアなら、リハビリや運動の専門家(理学療法士や作業療法士)が近くで指導してくれます。
万が一、身体に異常があったとしても、看護師がフォローしてくれるので安心です。
食生活を見直す
出された食事をしっかり食べる
食べないことには排便そのものがありません。家族が作った食事や施設で出された食事は残さず食べて、十分な排便があるように準備することが大切です。
食事量が少ないと、低栄養状態にも陥りやすくなり、良いことはありません。
十分に水分を摂取する
脱水症対策の役割もありますが、便秘予防にも水分補給は大切です。
十分に水分がないと、腸内で便が固い状態になり、肛門から排泄されにくい状態になるからです。
腸内で適切な水分を含んだ便を作り出すには、食事と一緒に適量のお茶や牛乳などの飲み物を摂取するように心掛けましょう。
食物繊維をとる
何を口から摂取していくかも大切です。
食物繊維は排便を促すものとして知られていますが、便の量を増やして、排便のリズムを一定に保つ働きがあります。
食物繊維を多く含む食べ物として、野菜(特に緑黄色野菜)、ふき、ひじき、大豆、たけのこ、ごぼう、かんぴょう、さつまいもなどがあります。
食物繊維を多く含む食事が出せるように工夫してみましょう。
腸内環境を整える
腸内環境を整えるというと、何か難しい気がするかもしれませんが、少し食べるものに配慮するだけで構いません。
食物繊維と同様に、乳酸菌やビフィズス菌を含む食べ物を食べましょう。
例えば、キムチ、ヨーグルト、味噌、チーズなどの発酵食品と呼ばれるものに入っています。
医師に相談することも大切
軽い運動が出来ない要介護4や5の高齢者や、好き嫌いが激しく口からも食物繊維や発酵食品を摂取できない高齢者も実際はいらっしゃると思います。
そういう時は主治医に相談して、本人に合った薬を処方してもらうことも大切です。
医師から処方される薬の概要
大腸刺激性下剤
大腸の粘膜を刺激することによって便意を与え、排便をすることができます。
主な薬の名称
アローゼン、ラキソベロン、ヨーデルS、プルゼニドなど
小腸刺激性下剤
小腸を刺激して、腸全体の運動を活動的にすることで便意を与え、排便をすることができます。
主な薬の名称
ヒマシ油
浸透圧性下剤
腸内に水分を集めて緩下作用を促します。多くの水分と一緒に服用するように指導があるでしょう。
主な薬の名称
酸化マグネシウム
モニラック
マグコロール
硫酸マグネシウム