高齢者は細胞内の水分保有量が減少し、腎臓の機能低下のために、体内に蓄えている水分の量が減ってしまいます。
特に、30℃を超えるような高い気温の日は、脱水にならないように注意が必要です。
脱水とはどのような状態?具体的に解説
冒頭で少し触れましたが、脱水症は、体内に蓄えている水分の量が減ることです。血液やリンパ液、消化液などから出来ている体液は、栄養を運んだり、体温調整をするなどの生命を維持するためにとても重要なのです。
高齢になると筋肉量が減少するため、水分を蓄える器自体が減ってしまいます。
尿や汗などによって出される水分量や塩分量と、身体の中に入る水分量と塩分量が同じくらいの時はバランスが維持されていますが、上手に体温調整などを行わないとバランスが崩れて、外に出る水分が多くなると脱水症が起こるのです。
脱水で死に至ることも
脱水によって体内の水分が減少すると、栄養素や酸素を身体のなかに送り出すことができなくなってしまいます。
これを放置しておくと、思わぬ病気や、場合によっては死に至ることもあるのです。
血液濃度が上がり、ドロドロとした状態になると、血栓などができるリスクが高まり、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしてしまうのです。
高齢者が脱水になりやすい理由
トイレに頻繁に行くのを嫌がるため
旅行、ドライブ、ショッピングなどの外出、集団行動、施設などでの集団生活を円滑に行うにあたり、頻尿でトイレばかりいくことに抵抗を示す高齢者が非常に多いのが現状です。
本来、どんどん水分を摂取して汗や尿などで体外に放出するなどするのが理想ですが、それを自ら行わず、脱水になるケースもあるのです。
脱水は夏場に多いイメージですが、高齢者の場合には、冬場の寒い時水分摂取を控える傾向にあるので、配慮が必要になってきます。
体内の水分が減少する
食事には水分が含まれていますが、その食事量が減少することによって水分摂取量も減少します。
水分は筋肉に蓄えられますが、高齢になり痩せ傾向になると、脱水になりやすいのです。
腎機能が低下する
高齢になると腎臓の機能低下によって脱水になることがあります。
腎臓は身体の水分量を調整してくれる大事な役割を果たしていますが、その役割が損なわれると体内に必要な電解質や水分を蓄える力が低下してしまうのです。
そして、体液のバランスが悪くなり脱水を引き起こすのです。
口渇感がなくなりやすい
高齢になると様々な機能が低下しますが、そのひとつとして、口の渇きを感じにくくなることもあります。
普通なら水分不足になると身体が水分を欲するのですが、口の渇きがなくなると水分を飲みたいと思わなくなってしまうのです。
そして、結果的に脱水状態に陥るのです。
認知症が影響する
いくら家族や支援者が水分を摂取するように促しても、認知症により、そもそもなぜ水分を摂取しないといけないかが理解できなくなってしまいます。
仮に、一時的に水分を摂取できたとしても、物忘れなどによって継続して水分補給に取り組めないのです。
薬が影響することも
飲んでいる薬が影響して脱水になる可能性もあります。
特に、血圧を下げる薬には利尿作用がある種類もあります。それによって、本来必要な水分や塩分が不足して脱水になってしまうのです。
脱水の症状について
軽度の脱水
■皮膚が乾燥する
■唇が乾燥する
■口の中が乾燥する
■普段より汗の量が減る
■手の甲の皮膚をつまんでもすぐに戻らない
■爪を押しても色がすぐ戻らない
■ボーっとしてしまう(傾眠傾向)
■めまいやふらつきがある
■手足が冷たくなる
中度の脱水
■頭痛や吐き気がある
■排尿の量が減る
■嘔吐がある
■下痢になる
重度の脱水
■話しかけても無反応
■意識がもうろうとしている
■痙攣が起きる
脱水の対応策(応急処置)について
軽度の脱水の場合
軽度の場合には水分補給と電解質を摂取します。
脱水といえば、水分補給だけで構わないと考える方もいるかもしれませんが、身体の機能調整を行う電解質も摂らなければなりません。
この両方を摂取するには、経口補水液が有効的です。
高齢者の場合、液状ですと誤飲する場合もありますので、ゼリー状の経口補水液がお勧めです。
飲むタイミングは「脱水かも」と感じてからなるべく早い方が良く、軽度の場合には4時間以内に飲むようにします。
仮に体重が50㎏だとしたら、1.5ℓから2ℓの経口補水液を摂取するようにしましょう。
中度の脱水の場合
軽度の場合と同じで、経口補水液を摂取することは重要です。
但し、軽度の場合とは違い、摂取する経口補水液の量はなるべく多く(目安として体重が50㎏だとしたら4~5ℓ)摂取するようにしましょう。
重度の脱水の場合
重度のなると意識障害が現れるので、経口補水液を摂取すること自体が困難になります。
点滴などの医療的ケアを受けるために、救急車を要請して、直射日光が当たらない涼しいところに避難しましょう。
「これぐらいで救急車を呼ぶのは・・・」と考えるケースもあるかもしれませんが、熱中症によって命を落とすこともありますので、躊躇せず救急搬送を判断します。
【一番伝えたいこと】まずは脱水にならないようにする
これまで色々な解説をしてきましたが、一番大切なことは『脱水にならないこと』なのです。
近年では、夏場には気温が40℃近くにもなる地方があり、屋外だけでなく屋内で過ごしていても熱中症や脱水になることがあります。
特に高齢者の場合、病院受診など特別な場合以外は自宅で冷房を付けて涼しく過ごすように心掛けます。
そして、水分補給は少しずつ時間をかけて、沢山飲むようにします。
麦茶や緑茶でも構いませんが、夏場は経口補水液を摂取するようにすると尚良いでしょう。