総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は28.7%(2020年9月時点)と超高齢社会である日本での介護は、老々介護・認々介護・8050問題など、さまざまな課題を抱えています。
そんな中で介護の担い手が子育てと介護を並行しなければいけない『ダブルケア』も問題の1つとなっています。
この記事ではダブルケアとはどのような問題なのか、どんな実態があるのか、負担を軽減する方法などをご紹介します。
現在ダブルケアで大きな負担を抱えている方、これから介護と子育て双方の問題を抱える可能性のある方は、ぜひ参考にしてください。
ダブルケアとは?
ダブルケアとは、子育てと介護を同時期に行わなければいけないことをいいます。
30代~40代の方に多く見られ、仕事・子育て・家事に加えて介護を担わなければいけない過酷な状況です。
子育てと介護という非常に負担の大きい責任を同時に行うことは問題点も多く、社会的にも大きな問題となっています。
ダブルケアの原因
ダブルケアの原因は超高齢社会がベースになっていることはもちろん、女性の社会進出に伴う晩婚化も原因の1つといわれています。
結婚→出産→子育て→介護と順番になっていたフローが、子育てが終わらないうちに介護の負担もやってきてしまうのです。
また核家族化も遠隔介護をしなければいけない原因になっており、さまざまな要素が組み合わさってダブルケアの負担を大きくしているといわれています。
ダブルケアの現状
平成28年に内閣府男女共同参画局が実施した調査によると、推計されるダブルケアを行う者の人口は約25万人で、女性は約17万人、男性は約8万人と報告されています。
ダブルケアを行っている年代が最も多いのは、女性の40代で全体の40.4%、男性の40代が全体の38.2%です。
ダブルケアが原因で仕事に就けない女性の6割が就業を希望していますが、正規で雇用されている人は14.1%にとどまっています。
- 安定した収入の仕事に就くことができない
- 身体的・精神的に大きな負担を抱えている
- 経済的に困窮している
など、厳しい現状にあることがわかります。
ダブルケアの問題点
育児と介護を同時期に行うダブルケアには、大きな問題点があります。
実際にどのようなことが起こり、どんな問題を抱えてしまうことになるのか。
代表的な3つの問題点をご紹介します。
仕事ができなくなる
ダブルケアが抱える大きな問題の1つとして、仕事ができなくなることがあります。
介護だけ・子育てだけでも正規の雇用が難しくなり、非正規雇用にならざるを得ないことが多いですが、介護と子育てのダブルケアは、離職を余儀なくされることも少なくありません。
子どもの具合が急に悪くなり仕事を休まなければいけないことが原因で、正規雇用が難しいケースがあります。
これに介護が加わることで、ますます安定した正規の仕事に就くことができなくなるのです。
精神的・身体的負担が大きい
子育ても介護も、担っている人にとっては精神的・身体的な負担が大きくなります。
子育て鬱・介護鬱という言葉があるように、精神的に追い詰められてしまうこともあります。
昼夜を問わない授乳・徘徊のフォロー・オムツ交換・体位交換など、睡眠時間が減り身体的な負担が大きくなる…その負担の大きさは計り知れません。
ストレスもたまりやすく、体調を崩してしまうこともあるのが現状です。
子育てだけ、介護だけでも負担となるにも関わらず、双方を担うのは限界があるといえます。
経済的困窮が起こる
ダブルケアが原因で経済的困窮が起こることもあります。
原因は仕事に就けないことが大きいですが、介護費用の負担がある場合は深刻です。
親世代の年金や資産で介護費用が賄えない場合、ケアを担当する子ども世代が負担をするケースが見受けられます。
子育て期は教育費・食費など、一番出費の多い時期。
プラスで介護費用を捻出しなければいけなくなると、一気に経済的困窮に陥ってしまいます。
ダブルケアの負担軽減方法は?
ストレスや責任感、生活の維持などさまざまな負担を抱えるダブルケア。
いったいどのような方法で負担軽減を計ればよいのでしょうか?
ここでは負担の軽減につながる、利用しやすいサービスや制度を3つご紹介します。
公的介護サービスを利用する
公的介護サービスとは、介護が必要になったときに受けることができる社会保険制度です。
在宅のサービス・施設を利用するサービス・福祉用具のレンタルなど、介護度や生活環境に合ったサービスを受けることができます。
「他人を家に入れるのは嫌だ」「デイサービスやショートステイには行かない」という方も少なくありませんが、介護者が倒れてしまっては強制的に入所しなければいけない状況に陥る可能性もあります。
- どんなサービスを受けることができるのか
- 費用はどのくらいかかるのか
- 使用できる回数や時間はどのくらいか
などをケアマネジャーと相談し、少しでも負担を減らす方向でケアプランを作成してもらいましょう。
介護認定を受けていない場合は、少しでも早く自治体の窓口へ申請をして下さい。
職場の制度(介護休暇など)を利用する
職場に介護休暇などの制度がある場合は、できる限り利用しましょう。
介護休暇は、労働基準法の有給休暇とは別に取得できる休暇です。
有給か無給かは職場によって異なりますが、介護=離職という選択をする前に活用しましょう。
- 対象家族が1人の場合は年5日取得可能
- 面倒な書類の提出ではなく口頭での申請が可能
- 令和3年1月からは時間単位での取得が可能
参考:介護休業制度|厚生労働省
など、柔軟な制度になっていますので、職場で相談してみることをおすすめします。
保育サービスを利用する
保育サービスとは、一般的に保育園や幼稚園などのことを指しますが、近年では入園しなくても利用できる一時保育などの制度が充実しています。
小学校入学前であれば、介護をしていることが保育園に入園できる事由となります。
また各自治体にはファミリーサポートセンターという制度があり、一時預かりや保育園の送迎などは制度を利用することも可能です。
その他にも病児保育・休日保育・夜間保育などを行っている施設もあるので、自分が利用できるサービスはないか、確認してみましょう。
各自治体の保育課や支援課、保育サービス課などが窓口になっています。
まとめ
ダブルケアは負担が大きく、担い手が健康被害を被ってしまうことも少なくありません。
育児と介護は利用できる制度やサービスがたくさんあります。
手続きや申請には少々手間がかかりますが、自分の心身を守るために、利用できるものは利用することが大切です。
情報収集を行い、少しでも補える部分を探してみましょう。