病気・症状

高齢者の尿失禁の原因と対策は?排尿のメカニズムも解説!

在宅介護において、介護のストレスを増加させるものの一つに排泄介助があります。
「なかなか排便がない・・・」「いつもおしっこを失敗して濡れている・・・」「尿失禁で夜にオムツ交換をしないといけない・・・」このようなことを思いながらケアしている人も多いでしょう。

今回は、排泄の中でも、尿失禁について徹底解説していきたいと思います。

排尿のメカニズムについて

小沼より流れる渓流の写真

尿は体内の排泄物が血管を通して腎臓に集められてろ過されたものです。
尿は腎臓から尿管を通って膀胱に集められて250~300ml程度溜まると尿意を催して、排泄されます。

排泄時には、尿意を受けてから大脳が膀胱括約筋を緩める指令を出し、それによって尿が尿道を通って体外に出されます。

一日におよそ1,000~2,000mlの量の尿が、自分の意志で数回に分けて排出されるのが正常な状況です。
一般的に、一日の排尿回数が8回以上となったり、夜中に1回以上あると頻尿と考えられています。

尿失禁の原因

一般的に、高齢者は『切迫性尿失禁』という種類の失禁によって尿漏れを起こします。これは、尿意を感じてから排尿までの時間が短くなり、トイレに間に合わなくなるものです。

他には、女性の場合だと、骨盤低筋群の筋力の低下により、くしゃみや咳などで腹部に力が入った際に尿が漏れる、『腹圧性尿失禁』になりやすいです。

男性の場合だと、前立腺の肥大によって尿道が圧迫されて尿が漏れる『溢流性尿失禁』を起こしやすくなります。

尿失禁の種類について解説

シルキーな水の流れの渓流の写真

腹圧性尿失禁

骨盤底筋・尿道付近の括約筋の筋力低下のため、くしゃみなどによって腹圧がかかった場合に起きる失禁をいいます。
中高年の女性に多い失禁で、陰部に力を入れたり緩めたりする骨盤底筋体操が効果的です。

切迫性尿失禁

膀胱の筋肉の収縮異常などのために、尿意を感じてから排尿までの時間が短くなり、トイレに間に合わなくなる失禁をいいます。
男性も女性も高齢者に多い失禁です。

溢流性尿失禁

男性に多く、前立腺肥大が生じたために、尿道が圧迫され、尿が少しずつ漏れる失禁をいいます。

反射性尿失禁

脊髄損傷などで、本人の意思とは無関係に反射的に尿が出る失禁をいいます。

機能性尿失禁

運動機能障害で適切な排尿活動ができない、認知症で尿意をうまく伝えられないなどのために起こる尿失禁をいいます。

尿失禁の対策について

「ここを改善したい」と険しい表情でカンファレンスする医師の写真

まずは泌尿器科を受診する

高齢だから尿失禁は仕方がないと諦めるのではなく、なぜ尿失禁してしまうか、原因が分かれば改善する 場合もあります。よって、「あれ、最近様子が・・・」と感じた時点ですぐに受診をすることをお勧めします。

病院の受診は主治医でも構いませんが、排尿の専門である、『泌尿器科』を受診する方が良いでしょう。

一度主治医を受診し、専門医を紹介してもらうケースもあります。

専門医(泌尿器科)などを受診すると失禁の原因をはっきりと検査してくれます。それに合わせた対応策や生活指導を教えてくれるがメリットです。

環境を整える

傾いたお手洗所の案内の写真

トイレに行きたくても間に合わないような人には、ベッド横にポータブルトイレを設置して、尿意を感じてから排泄できるまでの時間を短くする工夫をすると良いでしょう。

介護保険の福祉用具購入の対象になりますので、ケアマネジャーに相談してみましょう。

認知症があり、トイレの場所が分かりにくなることもあります。

そんなときは、トイレの扉に『ここはトイレ』と書いた紙を貼り付けておくことで、迷わずトイレに直行できることもあります。

リハビリパンツや尿取りパットを使用してみる

通常のパンツを使用していて、少し失禁が気になり始めると『失禁パンツ』を使い始める人が増えてきます。

それでも、失禁の量が増えるようになれば、リハビリパンツ(紙パンツ)や尿取りパットを使用してみてはいかがでしょうか。

一日を通して、失禁がやや少なければリハビリパンツで十分です。最近のリハビリパンツはモコモコしないで、スマートな履き心地で蒸れも少ないのが特徴です。

リハビリパンツだけでは不安だという段階になれば、尿取りパットを挟むようにします。
パットは種類が豊富で、失禁の多い人にはかなりの量の尿を吸水できるものがあり、買い物やドライブ、趣味の外出など、生活の質(QOL)を向上させることができます。

医師と相談して専門的な方法も試してみる

行動療法

実際に身体を動かして改善へと導く方法です。

膀胱訓練

まず、排尿する時間を決めておきます。「トイレに行きたいなぁ・・・」と感じても、すぐに行かず、決めておいた時間に行けるように訓練して、その間隔を少しずつ長くしていくというものです。

専門的な知識のもと行われますので、必ず医師と相談して実施してみましょう。

骨盤底筋体操

尿失禁の種類のところで少し触れましたが、『骨盤底筋体操』というものがあります。

様々な大勢で陰部に力を入れたり、緩めたりすることを繰り返すことによって、尿道括約筋がしまっていきます。

訓練の負荷はその方の体力や持病によって違いますので、必ず医師と相談して実施してみましょう。

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