高齢者の肌を観てください。手はカサカサになり、膝や肘、それに腰回りも乾燥して搔いている人をよく見かけます。
若いころはあんなにみずみずしくて、サラッとしていたのに、高齢になるとなぜ乾燥するのでしょうか?
今回は高齢者の肌が乾燥する原因をお伝えし、その予防や対策もご紹介します。
高齢者の肌が乾燥する原因
高齢者の皮膚が乾燥した状態を『老人性乾皮症』と呼び、多くの人が悩んでいるのです。
乾燥しているだけならまだいいのですが、とにかく痒みに悩まされるが厄介なのです。
乾燥の原因は、加齢に伴い、皮脂の分泌量が減少するからです。男性なら60歳くらいから、女性なら40歳~50歳くらいから急激に皮脂の分泌量が減り、それに比例して皮膚が乾燥状態になります。
さらに角質細胞が本来なら脱落していくのですが、高齢者になると表皮に残り、角質層が厚くなって乾燥が強くなる傾向にあるのです。
乾燥しやすい場所
基本的に高齢者は全身が乾燥しやすいですが、その中でも乾燥しやすい場所があります。
ズボンのゴムが圧迫する腰周辺、臀部などです。
介護者が保湿剤などを塗りにくい場所なので大変だと思いますが、丁寧にケアをしないと、気が付いた時には掻きむしって出血を引き起こす場合もあります。
肌が乾燥するとこんな悪いことが
冒頭でも述べましたが、乾燥するととにかく痒くなるのです。
その結果、肌をボリボリ掻いて傷つけたりすることもあります。
手が不自由で自分の手で掻けない人は、搔きたいけれど掻けないストレスが加わり、精神的に不安定になるケースも珍しくありません。
掻くことによって、皮膚や肌を傷つけてしまっても、それはそれで問題です。
掻き傷から細菌が侵入し感染症を起こすこともあります。
また、皮膚自体が弱くなり、ちょっとした刺激でも皮膚が剥がれてしまう『皮膚剥離』になることもあります。
皮膚剥離になってしまうと、医療機関を受診するなどし、皮膚と皮膚をつなぎ合わせる処置が必要になってきますし、毎日の消毒も必要になってきます。
高齢者の皮膚の乾燥はこれほど重大に事態を引き起こすことになるのです。
老人性乾皮症の予防・対策
室内の湿度
冬場になり暖房を使うようになると、湿度が低くなり乾燥します。
場合によっては40%前後になることもあり、一気に乾燥が進むでしょう。そのために、加湿器を使い湿度を保つようにします。
湿度を保つと言っても、湿度計を設置するなどし、しっかりと数値で判断することをお勧めします。
ちなみに理想の湿度は55~65%程度です。冬場ならインフルエンザの予防も兼ねることができます。
入浴の方法
高温のお湯に長時間浸かることは避けましょう。皮膚の皮脂が流れ落ちやすくなります。
お湯の温度は38~40℃で、長くても15分ほどを限界に入浴します。
洗身は硬めのビニールタオルでゴシゴシこするのは禁忌です。低刺激性の石鹸と天然素材の絹や綿のタオルを使用し、よく泡立ててから洗いましょう。
保湿剤と塗るタイミング
乾燥した肌に対して、保湿剤の使用は必須でしょう。絶対に塗ってもらいタイミングとして、入浴後があります。
水分が失われた後なので、十分に保湿剤を塗り込んでいくようにします。表面だけ塗るのではなく、優しく浸透するように擦り込んでい行くように塗ってあげましょう。
それに加えて、朝起きた時など、一日合計2回ほど塗ることが理想です。
保湿剤ですが、掻き傷がない段階なら、市販のもので十分です。一つだけ選ぶポイントをお伝えするならば、配合成分として尿素10%ほどの尿素が含まれているものを選びましょう。
尿素は硬くなっている角質を軟らかく溶かしてくれます。
どうしても保湿剤がない場合には、ワセリンやプロペトを塗る方法もあります。
ワセリンやプロぺトってなに?
石油由来の炭化水素類の混合物を脱色して精製したものをワセリン・プロペトと言います。
石油が原料であるといっても、もともと天然のものでありますし、安全性を高めるために純度が高いので、健康被害を心配する必要はほとんどありません。
ワセリンの純度をさらに高めたものをプロぺトと呼んでいます。看護師などはリップクリームとして使用している人もいるほど安心感はあります。
ワセリンやプロペトはどこで入手できるか
ドラッグストアで簡単に購入することができますし、医師から処方してもらったりもできます。
医師に相談するのもひとつの方法
乾燥肌くらいで医師に相談するのはどうなのか?と考える人もいるかもしれません。
しかし、高齢者の皮膚は非常にデリケートで、掻き傷によって感染症などを起こす可能性があることを考えれば、なるべく早い段階で医師に相談するようにします。
相談する医師は、皮膚科がいいでしょう。老人性乾皮症だと思っていても、別の重大な疾患が隠れている可能性もあるからです。
塗布する薬は細かく調合して、状況に合わせたものを出してくれます。状態にあっていない薬を塗り続けて、悪化してしまったという事例は珍しくありません。