元気だと思っていても、いつの間にか年齢を重ねて体調不良などを起こしている…親の介護は誰にでも起こり得る身近な問題です。
基礎疾患の悪化・認知症の発症・ADLの低下など、年齢に応じた症状が突然現れ、急に介護状態になってしまうことも珍しくありません。
そこでこの記事では、親の介護について備えておきたいことを3つピックアップして解説します。
どんなことを備えておけばいざという時に慌てずに済むのかがわかりますので、ぜひ参考にしてください。
1・慌てないための介護知識
介護を行う上で大切なことは、基礎的な知識を身に付けておくことです。
実際に介護を行う時にどんな知識が必要になるのかをご紹介します。
頻繁に使う専門用語を知る
相談のときなどに必要なのは、頻繁に使われる専門用語をある程度知っておくことです。
ケアマネジャーへの報告や介護ヘルパーとの報連相の中で『この言葉の意味は何だ?』と思うものも多いはず。
全てを知る必要はありません。
ある程度頻繁に使われる介護用語と意味を押さえておきましょう。
用語 | 意味 |
移乗(いじょう) | ベッドから車いすなど、体を支える平面が変わる移動動作のこと。 |
ADL(日常生活動作) | 日常生活を送るために基本となる身体動作のこと。 |
嚥下(えんげ) | 口の中で咀しゃくしたものを飲み込む→食道から胃へ送り込むという一連の流れのこと。 |
機能回復訓練 | リハビリテーションのこと。 |
ケアマネジャー | 要介護者の自立を助けるための専門知識と技術を持ち、必要とする保健・医療・福祉サービスの調整を図る役割を持つ専門職。介護支援専門員という。 |
口腔(こうくう)ケア | 口の中を清潔に保つケアのこと。歯磨き・ふき取りなどが含まれる。 |
在宅介護 | 要介護者を自宅で介護すること。 |
認定調査 | 介護保険の申請後に行われる聞き取り調査。市町村の調査員が直接行う。 |
排泄(はいせつ) | 尿や便を排出すること。 |
生活援助 | 要介護者の生活に関する援助。買い物・掃除・調理・洗濯など、訪問介護として行われる。 |
手続き・相談に必要な窓口を知る
介護が必要となったときに、どのような手続きをどこで行えば良いのかを知っておくと、スムーズに介護サービスを受けられるようになります。
手続きは、基本的に市町村の介護保険窓口で行うことが可能です。
手続きは家族の代理申請でもOK。
入院をしている場合は、入院先の病院に所属するソーシャルワーカーに相談することで、手続きを進めることもできます。
受けられる介護サービスの内容を知る
介護サービスには居宅サービスと施設サービスの2種類があります。
どのようなサービスを受けることができるのか、あらかじめ理解しておくと適切なサービスの選択が可能です。
1・居宅サービス
サービス名 | 概要 |
訪問介護 | 家庭にホームヘルパーを派遣し、介護や日常生活の支援を行うサービス。生活や介護に関する相談支援も可能。 |
訪問看護 | 家庭に看護師・保健師・作業療法士などが訪問し、診療の補助を行うサービス。 |
訪問入浴介護 | 家庭に訪問し、要介護者の入浴を行うサービス。 |
訪問リハビリテーション | 理学療法士・作業療法士が家庭を訪問し、機能の維持回復を行うサービス。 |
居宅療養管理指導 | 通院が困難な要介護者に対して、医師・歯科医師・薬剤師・看護職員・歯科衛生士・管理栄養士が、家庭を訪問して療養上の管理・指導を行うサービス。 |
通所介護(デイサービス) | 各家庭から通所介護施設に通い、必要な介護や機能訓練を受けられるサービス。 |
通所リハビリテーション(デイケア) | 介護老人保健施設や医療機関などの施設に通い、機能回復や生活動作の訓練を受けるサービス。 |
短期入所生活介護(ショートステイ) | 介護施設(特別養護老人ホーム)に短期間入所し、食事・入浴などの介護や機能訓練などの支援をおこなうサービス。 |
短期入所療養介護(ショートステイ) | 医療施設に短期間入所し、機能回復訓練や診察、日常生活の支援を行うサービス。医療型ショートステイともいう。 |
特定施設入所者生活介護 | 特定施設(介護施設)に入居している方に対して、介護サービス計画書に基づいた支援をおこなうサービス。 |
福祉用具貸与 | 車いす・特殊寝台・褥瘡予防用具・体位変換器・手すり・スロープ・歩行器・歩行補助杖・認知症老人徘徊感知機器などを借りることのできる介護保険給付対象のサービス。 |
住宅改修(リフォーム) | 介護のために住宅改修する際にかかった費用を一部負担してくれる制度。介護保険の「居宅介護(介護予防)住宅改修費」という項目に該当する。 |
2・施設サービス
サービス名 | 概要 |
介護老人福祉施設 | 特別養護老人ホームのこと。介護度の高い利用者が多い。 |
介護老人保健施設 | 短期利用の施設。在宅での自立を目指した支援が行われる。 |
介護療養型医療施設 | 介護度の高い利用者に対し、医療処置やリハビリを提供する施設。 |
要介護者の状態や介護を行う家族の状況を考慮して、ケアマネジャーがケアプランを作成します。
在宅で介護を行うのか、施設への入所を検討するのか、費用は誰が賄うのかなど、各家庭の事情に合った選択ができるようにしておくことがBESTといえるでしょう。
2・事前の話し合いも重要なポイント
親が急に介護状態になってしまって、きちんとした意思の疎通が図れなくなったという状況も考えられます。
いざというときに、親の希望に沿った援助ができるよう、元気なうちに話し合っておくことは非常に重要です。
『まだ元気なのに介護の話なんて…』と思われる方も多いですが、万が一のときにどうしてよいのかわからないという状況にならないよう、準備をしておきましょう。
親の望む老後のビジョンを知る
親がどのような老後のビジョンを持っているのか、介護状態になった場合はどうしたいのかという意向を確認してください。
- 住み慣れた自宅で介護をして欲しい
- 子どもたちに迷惑をかけたくないから施設に入所したい
など、親には親の考え方があります。
家族の意見と合わないということも考えられますが、本人が意向を伝えられなくなったときのため、できる限り具体的かつ現実的に話し合いをしておきましょう。
また介護の費用についてもあらかじめ親の経済状況を把握しておく必要があります。
- 親の資産だけで介護費用を賄えるのか
- 親の希望に見合うだけの資産準備はされているか
- (親の経済力が見込めない場合)費用は誰がどのくらい負担できるのか
- メインで介護を行う家族の状況(仕事の有無・経済状況など)
お金の問題は話し合いにくいですが、一番重要なポイントといっても過言ではありません。
親や兄弟姉妹ときちんと話し合って、お互いに納得のできる結果を出すことが大切です。
親の既往症・かかりつけ医を知る
離れて暮らしている場合は、親の現在の健康状態を知っておきましょう。
若い頃は元気だったとしても、年齢を重ねるにつれて新たな疾患が発現したり、認知症を発症することも考えられます。
日頃かかりつけにしている病院があれば、どんな症状でどのような治療を行っているのかを聞いてください。
- 病院名
- 主治医の氏名
- 通院している疾患名
- 通院回数
- 薬の有無
- 治療の内容
アレルギーや継続的に服用している薬もわかればBESTです。
自分の生活を優先できる方法を知る
介護サービスをうまく利用して、自分の生活を優先できる方法を考えておきましょう。
実際に親が介護状態になった場合、自分の生活には確実に変化が加わります。
- 経済面での負担
- 仕事に与える影響
- 子育てにかかわること
親の希望を参考に、どの程度自分の生活に影響があるのか、どこまでなら介護を行うことが可能なのかを見極めてください。
自分の生活を犠牲にする介護は、すぐに限界を迎えてしまいます。
折衷案を見出すためにも、お互いに余裕のあるタイミングで話し合いを行うことが重要なのです。
3・介護のストレスを考えておく
自分の親であったとしても、介護はとても大変なものです。
特に認知症の対応には、身体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
介護を行う上で、どのようなストレスが生まれてしまうのか、3つのストレスについて考えておきましょう。
身体的なストレス
- オムツ交換や体位変換のため睡眠時間が削られてしまう
- 通院介助のため仕事を休まなければいけない
- 着替え・食事・排泄など1日中体を動かしていて疲れ切ってしまう
- 徘徊防止のために常に要介護者の動きをいているため気が休まらない
介護度や在宅サービスの量などによって多少の差異はありますが、身体的なストレスはとても大きなものです。
無理をしてしまうと介護者自身が身体を壊してしまうことも考えられます。
『親だから…』と一人で抱え込むことは避けなければいけません。
しっかりと休息をとること、利用できるサービスは最大限利用すること、周囲の協力を仰ぐことを忘れないようにしてください。
経済的なストレス
親に資産がない場合、家族が介護費用を負担しなければいけないケースがあります。
在宅介護も施設入所も、それなりに費用は発生します。
介護保険を利用したとしても、生活費や通院費など別途かかる費用もあり、介護が原因で離職せざるをえない状況になれば、自身の生活基盤も揺らいでしまいます。
お金の問題は悩んでいても解決するものではありませんし、介護の期間がいつまで続くのかもわかりません。
- 介護のために仕事が続けられず収入が減った
- 親の年金だけでは介護費用が足りない
- 売却できる資産がない
などの場合は、大きなストレスになります。
どうしても介護の費用が足りない場合は、各家庭の状況に合った解決策を探していく必要があります。
SOSをきちんと発すれば、解決策は見つかるはずです。
ケアマネジャーや自治体の相談窓口などに相談する機会を早めに設けてください。
精神的なストレス
介護が精神的に与えるストレスは看過できないほど大きなものです。
特に親の場合は、元気な頃の姿と重ね合わせてショックを受けたり、わがままな行動に振り回されたりと、知らないうちにストレスが溜まっていきます。
追い詰められてしまうと、イライラが募って介護虐待などに発展してしまう可能性もあるので、精神的なストレスを解消できる方法を考えておくことが大切です。
- 相談できる場所(友人・家族・相談窓口)を作っておく
- 自分の休養のためにショートステイなどのサービスを利用する
- 他の家族と現状の共有を行う(協力を仰ぐ)
打ち込める趣味がある方は、自分の時間の確保も大切にしましょう。
気分転換できる場所や時間があるだけでも、精神的なストレスはかなり和らぎます。
まとめ
親の介護は突然始まることが多いのが特徴です。
ある程度の年齢になってきたら、これからの生活について親がどのように考えているのかを聞いておく必要があります。
また介護に関する希望や費用の面についても、話し合いをすることで不安が解消されるでしょう。
少しずつ介護に関する基礎的な知識を習得し、いざというときに最適なサービスを受けることができるように準備しておくことをおすすめします。