褥瘡(じょくそう)という用語をご存知でしょうか?
褥瘡とは、一般的にいう『床ずれ』のことです。
褥瘡=寝たきりの人に起こると思われがちですが、糖尿病や閉塞性肺疾患などの持病を持つ高齢者の方にも、多く起こる疾病といわれています。
この記事では褥瘡が起こるメカニズムや予防法、褥瘡を発生させない介護のコツなどをご紹介します。
1・褥瘡が起こるメカニズムとは?
褥瘡は高齢者の方に多い疾病ですが、どのようなことが原因で、どんな症状が現れるのでしょうか?
褥瘡が起こるメカニズムを知っておきましょう。
原因は持続的な圧迫
褥瘡の原因は、長い時間体重で圧迫され、皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなることです。
私たちは通常、寝ている間にも無意識に体を動かし(体位変換)、長時間の圧迫を避けています。
しかし寝たきりの方や、栄養状態が悪く皮膚が弱くなっている方などが同じように長時間圧迫をされると、表面の皮膚だけではなく深部の組織まで病状が進行してしまうことがあるのです。
自分で体位変換ができない方に多いため、介護をされている方は定期的な体位変換が重要になります。
圧迫→虚血→障害→褥瘡
褥瘡のメカニズムは以下の通りです。
- 同じ部位の長時間の圧迫
- 血液が行き渡らなくなる
- 酸素や栄養が欠乏する
- 褥瘡が発生する
1の時点で体圧を分散することができれば、褥瘡に至ることは少なくなります。
褥瘡のリスクが高い疾病としては
- 糖尿病
- 浮腫
- うっ血性心不全
- 脳血管疾患
- 慢性閉塞性肺疾患
などが挙げらます。
好発部位は仙骨部(せんこつぶ)・踵部(しょうぶ)
褥瘡が好発する部位は仙骨部(せんこつぶ)・踵部(しょうぶ)です。
仙骨部とは尾てい骨の部分、踵部とはかかとの部分です。
脂肪の薄い部分や筋肉の少ない部分に発症しやすい傾向があります。
- 皮膚が赤くなる
- 水ぶくれができる
- 水ぶくれが破れてただれる
- 皮膚が壊死し膿が溜まる(高熱がでることもある)
さらに症状が進行すると、皮膚にぽっかりと穴が開いたような状態になり、骨が見えてしまうこともあります。
仰臥位(あおむけ)で寝ている方・車いすを長時間使用されている方は特に注意が必要です。
2・褥瘡を防ぐ3つの予防法
重症化することも多い褥瘡…どのようなことに注意すれば防ぐことができるのでしょうか?
褥瘡を起こさない3つの予防法をご紹介します。
1・体位の変換
褥瘡を防ぐ一番の方法は、体位を変換することです。
筆者の勤務していた施設では、2時間ごとに体位変換を行っていました。
- 仰臥位(あおむけ)
- 右側臥位(右向き)
- 仰臥位
- 左側臥位(左向き)
疾患をお持ちの方の場合、医師に確認して可能な限り同じ体位を続けないようにしていました。
在宅介護の場合も、同じ体位を長く続けないようにすることが、褥瘡を防ぐ大切なポイントです。
2・体圧の分散
体圧を分散することも褥瘡を防ぐ方法の1つです。
体重が集中的に圧迫してしまうことを防ぎましょう。
体圧分散型のマットレスの利用がとても効果があります。
骨の出ている部分にクッションやスポンジを置くこともOK。
車いすを長時間利用される方は、15分~30分ごとにお尻を持ち上げるようにしてください。
3・低栄養の回避
低栄養の状態を回避することも、褥瘡を防ぐポイントです。
体重が落ち、痩せてしまうことで皮下脂肪が減少すると褥瘡は起こりやすくなります。
- 少量しか食べられなくても経口摂取で1日3回の食事ができるように努める
- 1回の食事でタンパク質と炭水化物を必ず摂取する
- 食事形態を食べやすいものにする
などの工夫が必要です。
エネルギーの不足は免疫力の低下にもつながります。
食欲がないときなどは、ゼリーやドリンクタイプの栄養補給飲料などを利用しても良いでしょう。
3・在宅介護でもできる!褥瘡を発症させない介護のコツ
在宅介護で褥瘡を予防するのは大変そう…と思われる方も多いことでしょう。
しかし褥瘡は毎日のちょっとしたケアで悪化を防ぐことができます。
どんなことに注意してケアを行えば良いのか、在宅介護の3つのコツをご紹介します。
皮膚の清潔を保つ
皮膚の清潔を保つことは、褥瘡の予防につながります。
オムツの蒸れや汗は褥瘡の大敵です。
特に排泄物は皮膚への刺激となるため、排泄が確認出来たらすぐに交換をしてください。
また皮膚の洗浄は強くこすらず、泡で丁寧に洗うことがポイント。
乾燥しやすい部位には保湿剤を塗るなどの保護を行うことも大切です。
毎日全身の観察を行う
入浴・清拭・オムツ交換などの際に、全身の観察を行いましょう。
- 発赤(赤くなっている部分)はないか
- むくみは出ていないか
- 皮膚が乾燥してカサカサしていないか
- オムツかぶれはないか
など、身体の変化に注意を払う必要があります。
食事に工夫を凝らす
経口摂取ができる場合は、低栄養にならないよう食事に工夫を凝らしましょう。
家族と一緒に楽しく食事をすることは、ストレス解消にもつながりますので、できる限り一人で食べるということは避けてください。
体調のすぐれない時は無理に食べさせず、嚥下(えんげ)状態を見極めて食事形態に工夫をしてあげることが大切です。
栄養の偏りが気になる場合は、医師に相談しサプリメントなどで栄養補給を行うこともおすすめ。
麻痺などがある場合は、食器や食材の大きさに工夫を凝らし、食べやすい状態にしてあげましょう。
まとめ
褥瘡は丁寧なケアを行うことで、発生や進行を防ぐことが可能です。
骨が突出している部分や皮下脂肪・筋肉の少ない部分の圧迫に注意し、毎日の観察を欠かさないことが大切。
体圧分散マットレスやクッション、スポンジなどの用具をうまく活用することもポイントです。
担当医師やケアマネジャーとの連絡を緊密にし、専門家のアドバイスを受けることで、安心感を得ることができるでしょう。