バイスティックの7原則をご存じでしょうか?
施設介護は勿論、在宅介護でも応用できる原則であり、高齢者の介護や支援、コミュケーションを有効的に取ることができます。
言葉だけを聞くと難しそうに思えるかもしれませんが、一つひとつはとても分かりやすい原則です。
介護などの専門家がよく使用する言葉ですが、在宅介護においても応用できるので、是非参考にしてみて下さい。
個別化の原則
例えば、
「認知症のある人は怒りっぽい症状がある」
「高齢者は頑固である」
「男性は強く、女性は弱い」
など、一般的にはそうかもしれないけれど、高齢者の支援やコミュケーションを取るうえでは、先入観にとらわれず、個人はそれぞれ違うものであると考えます。
よって、
どうせ高齢者なんだから・・・
この病気は、高齢者はよく罹患するけどみんな症状は同じ・・・
解決策は今までと同じでいいだろう・・・
と考えてはいけないのです。
その『ひと』はこの世にたった一人しかい『ひと』であり、全く同じような性格や特性の人は存在しないということを念頭においてケアをするようにします。
意図的な感情表現の原則
自宅での介護に疲れていても、介護を受ける側に気を使わせるようなことがないよう気をつけましょう。
介護を受ける側に、
「介護をさせてしまって、気の毒だ・・・」
「いつも申し訳ない・・・」
という気持ちがあれば、自然に感情を押し殺して、悲しみや怒りを表現しないでいるのが当たり前になることがあります。
そのような状態が続くと、本心が分からず結果的に本人主体の介護にはならない可能性が高くなってしまいます。
どのようなことに不満や悩みを持っているか、どんどん感情を表現してもらい、それらにそった支援をしていきます。
そして、最終的には担当のケアマネジャーの耳に届きケアプランへと反映されるのが理想でしょう。
感情を積極的に出してもらうことは、決して悪いことでなくプラスなことなのです。
統制された情緒関与の原則
介護する側が、介護を受ける側の感情に流されないで支援をするという考え方です。
例えば、「リハビリが辛いからこれ以上したくない」と悲しそうに言ったとします。
それに対して、介護をする側が「それなら辞めようか」とすぐに判断してしまえば、本当の意味で本人のためにはならないのです。
なぜ、そんなにリハビリを嫌がるのだろうか?
きっかけが何かあったのだろうか?
時間や場所が嫌なのかも?
など、問題解決を解決していく必要があるのです。
勿論、介護やリハビリの専門家ではない家族が全てを背負う必要はありません。
担当のケアマネジャーやリハビリを担当するスタッフに相談することが重要になってきます。
受容の原則
高齢になって頑固になったり、認知症でなかなか意思疎通が難しくなることもあります。
そんなときは、ついつい、そっけない態度を取ったり、相手の言動を否定するようなこともあるかもしれません。
しかし、そのようの態度を取っていては、介護を受ける側は自己肯定感が下がり、心の中は不満でいっぱいになります。
相手の言っていることが事実と違っていたり、ありえないことを言っていたりしても、決して否定せず、ありのままを受け入れてあげましょう。
例えば、認知症がある高齢者が食事をしたにも関わらず、「まだ食べていない」と何度も訴えることがあれば、その訴えを受け入れるようにするのです。
「分かった、食べていないのね・・・」
「これから食事を作りますね・・・」
などの言葉で相手の言っていることを受け入れてあげましょう。
間違っても、
「さっき食べたばかりでしょう!」
「いつも同じことばかり言って!」
など、否定をする声掛けはしないようにしましょう。
訴えてきたことに対して、なぜそのような考え方になるのかを考えていきましょう。
勿論、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談しても大丈夫です。
隠れたいたことが発見できるかもしれません。
非審判的態度の原則
介護をする支援者は、介護を受ける側の人対して、『善』または『悪』、『正しい』または『誤っている』などの判断は避けるべきだということです。
在宅介護で、身内が介護する状態でも同じであり、
「あの食べ方はおかしい・・・」
「このトイレの使い方ではダメだ・・・」
「入浴ではもっと湯船に浸からないといけない・・・」
などと、介護を受ける側の行動をジャッジするような態度をしてはいけません。
これは、介護を必要としていない人でも同じであると思います。
自分の行動に、その都度ジャッジをするような言動があれば、人格を否定されているような気持になり、あまりいい気分にはならないでしょう。
介護する側の考え方が100%正しいわけでもありませんし、その価値観を他人に押し付けるようなことをしては、上手にコミュケーションを取ることができなくなってしまいます。
自己決定の原則
認知症や障害があっても、最終的にはその人本人に意思決定をしてもらうという考え方です。
身近なことで言うと、
・食事を食べる順番
・入浴をする時間
・着用する服の選択
・散髪の髪の長さ
などがあります。
支援者はついつい、介護を受ける側の意見を聞かずに、一方的に物事を決定してしまうことがあるでしょう。
そうではなくて、必ず本人に何をどうしたいか確認しながら物事を決定してもらうようにします。
最終的に、決定するのが難しければ、「AとBがあるけど、どちらがいい?」などと選択肢の中から選んでもらうのも一つの方法です。
上記のような身近なことだけではなく、
・最期はどのような対応をするのか
・将来胃婁などは考えているのか
・後見人はどうするのか
など、本人の意思によって決定できることは、支援を受けてでも本人が選択するようにしてあげます。
秘密保持の原則
施設介護などで、職員が利用者の個人情報を守らなければならないことはご存じだと思います。
在宅介護においても、身内同士だからといって、個人情報を積極的に外部に漏らすことはいいことではありません。
身内での介護になると、
「このようなことを言えばプライドが傷つく」
「人権を大切にしなくてもならない」
などという考えが希薄になってくる傾向にあります。
個人情報が身内から漏れて、取り返しのつかない状況に陥ることもあります。
介護を受ける側の秘密事などが外部に漏れないようにするのも、家族が配慮しなくてはならないことなのです。
まとめ
「原則」と聞けば少し窮屈で難しい気がした人もいたかもしれません。
しかし、実際の解説を読んでみると、そんなに難しいものではないことを理解して頂いたと思います。
今回お伝えした『バイスティックの7原則』はあくまでも理想です。
実際の在宅介護では、行動に移すことは難しいケースもありますが、なんとなく頭の片隅に置いておくと、介護をする際にスムーズに行くこともあるかもしれません。
在宅介護の悩んだら、ひとりでは抱え込まず、第三者に相談することは忘れないで下さい。