冬の寒い日、トイレに行ったりお風呂に入ろうとしたりして、急激な温度の差にブルッと震えることはありませんか?
冬に多いヒートショックは、生活のあちこちに危険が潜んでいます。
特に高齢者の方は、ヒートショックによる健康被害には気を付けなければいけません。
この記事ではヒートショックに関する基礎知識や、自分でできる予防策についてご紹介します。
ヒートショックとは?どんな症状が出る?
ヒートショックとは、血圧の乱高下によって体に負担をかけてしまうことで、脳梗塞・脳内出血・心筋梗塞・大動脈解離など、命にかかわる健康被害をもたらす可能性があるショック症状です。
令和2年11月に消費者庁が調査した結果では、高齢者のヒートショックに関係する『不慮の溺死及び溺水』は、交通事故の死者数よりも多く、11月~1月にかけて急増していることがわかりました。
高齢者の方は血圧を正常に保つことが難しくなっている場合が多く、特に自宅の浴室・トイレでのヒートショックが非常に多い傾向があります。
ヒートショックという言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどんな症状が出るのかは知らない…という方も少なくないのではないでしょうか?
まずは基礎知識として4つの主な症状についてご紹介しましょう。
1・めまい・立ちくらみ
めまいや立ちくらみは軽いヒートショックの症状です。
急激な血圧の乱高下によって、頭に血が上ったような感覚や、反対に頭から血が下がってしまうような感覚に襲われます。
注意しなければいけないのは、めまいや立ちくらみによる転倒です。
ヒートショックは軽度の症状だったとしても、転倒する場所によっては命に係わる大事故につながります。
2・呼吸困難・意識の消失・胸の痛み
呼吸困難・意識の消失・胸の痛みは、ヒートショックの症状として重い部類に入リます。
血圧の変化に身体が付いていけず、心筋梗塞などを起こしているときに見られる症状です。
呼吸困難や意識の消失を起こしてしまうと、本人が対処することは難しくなります。
- 家の中の温度差がある
- 心臓や血圧の持病がある
- 飲酒の習慣がある
という方は、大事に至らないよう十分対策を行うことが大切です。
3・激しい頭痛・うまく話せない
激しい頭痛やうまく話せないという症状が出たときには、脳出血や脳梗塞を引き起こしている可能性があります。
ヒートショックが原因となる症状の中でも重篤なケースで、一刻を争う事態といえるでしょう。
いつもと違う激しい頭痛、ろれつが回らないなどの症状が出た場合は、できる限り早く対処しなければいけません。
4・嘔吐
急な嘔吐が見られたときは、気道がむくんでいる状態です。
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血を起こしている可能性があります。
また嘔吐物の誤嚥による肺炎や、嘔吐物が喉に詰まることによる窒息に注意しなければいけません。
ゆさぶったり無理に動かすことは避け、横向きの体勢を取らせましょう。
一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。
家の中でヒートショックに注意したい場所とは?
ヒートショックは、家の中で起こることがほとんどです。
ヒートショックの原因は、急激な温度の変化に身体が付いていけず、血圧が乱高下すること。
いったい家の中のどんな場所に危険が潜んでいるのでしょうか?
お風呂
お風呂はもっともヒートショックが起こる場所です。
暖かい居室 ⇒ 寒い脱衣所 ⇒ 寒い浴室 ⇒ 熱いお風呂という工程の中で、血圧が急激に変化し、最悪の場合は浴槽内で溺死してしまう可能性があります。
- 浴室・脱衣所に暖房器具がない
- 居室から離れている
- 熱いお風呂・長風呂を好む
という方は、注意が必要です。
トイレ
トイレもヒートショックを起こしやすい場所です。
- 居室との温度差が激しい
- 便秘気味でいきむことが多い
- 便座に暖房機能が付いていない
日本のトイレには暖房機能が付いていないことが多く、温水洗浄便座を使用していない場合は、便器も非常に冷たいため、ヒートショックを起こしやすくなります。
また無理にいきんで排便することで、血圧が激しく乱高下してしまうため注意しましょう。
寝室
寝室は、あまり認知されていませんがヒートショックの起こりやすい場所の1つです。
居室と寝室を分けている場合は、特に温度の変化が顕著になります。
暖かい居室 ⇒ 寒い廊下や階段 ⇒ 寒い寝室 ⇒ 暖かい布団で血管の収縮が激しくなり、血圧を正常に保てなくなります。
家の構造上、居室と寝室が離れているケースも注意しなくてはいけません。
高齢者が自分でできる具体的な5つの対策
ヒートショックは予防が可能な健康被害です。
ヒートショックが起こる原因をできる限り取り除き、環境整備を行えば多くのヒートショックを防ぐことができます。
特にヒートショックを起こすことが多い高齢者の方が、自分でできる簡単な対策を5つご紹介します。
生活習慣や住環境をチェックし、改善できるところは積極的に対策を行ってください。
1・家の中の温度差を作らない
ヒートショックを防ぐ一番の対策は、家の中の温度差を作らないことです。
特に温度差の激しいトイレや脱衣所には、コンパクトタイプの電気ストーブを置くだけで、気温差はずいぶん少なくなります。
お風呂の場合は、入浴前に浴槽のフタを開けておくだけでも効果的。
家の構造にもよりますが、1つの部屋でストーブを使用し、換気も兼ねてドアを開け放しておくこともおすすめです。
2・食後・飲酒後の入浴は避ける
食後・飲酒後の入浴は避けるようにしましょう。
食後や飲酒後は血圧が下がり、特に飲酒は転倒の原因にもなります。
特に晩酌の習慣がある人は、早めに夕食を済ませ、時間をあけてから入浴するようにしてください。
また定期的に服薬をしている人は、薬の中に眠気を催したり、血圧を下げる成分が含まれていることがあります。
入浴中の事故につながる可能性が高いので、食後・飲酒後・服薬後は十分に時間をあけて入浴をしましょう。
3・トイレでいきみすぎない
トイレでいきみすぎるのも血圧の乱高下を招き、ヒートショックの危険が高まります。
便秘気味の方は特に注意が必要です。
トイレは他の部屋との気温差があることも多く、無理にいきむことで血管が大きく収縮し、ヒートショックを招きます。
便秘がなかなか改善されない場合には、かかりつけの医師に相談し、便秘薬を処方してもらうようにしましょう。
長時間座っていたり、いきみすぎるのは非常に危険な行為ですので、避けるようにしてください。
4・適度な水分補給を心がける
適度な水分補給もヒートショックの対策になります。
脱水症状というと夏のイメージがありますが、実は冬でも脱水症状になることがあるのです。
高齢者の方はトイレに行く回数などを気にして、あまり水分を積極的に摂らない方が多いですが、脱水症状を引き起こすことで血液の流れが悪くなり、ヒートショックを引き起こす要因になります。
水分補給は『喉が渇いた』と感じる前に、少しずつ摂取することがポイント。
利尿作用やカフェインを含む飲料ではなく、白湯やノンカフェインの麦茶がおすすめです。
5・温度の高い入浴を避ける
温度の高い入浴は絶対に避けるようにしましょう。
入浴時にヒートショックを起こすメカニズムは、先にご紹介しましたが、温度の高いお風呂は高齢者にとって非常に危険度が高いものになります。
湯温は41℃以下・湯船につかる時間は10分が目安です。
熱いお風呂に長時間つかることは、思った以上に身体が疲れます。
ふらついてしまうことや転倒につながることもありますので、十分注意してください。
まとめ
ヒートショックは身近に起こる健康被害です。
65歳以上の高齢者の方・持病のある方や家の中の気温差がある方、飲酒の習慣がある方は特に注意しなければいけません。
予防策として有効なのは、とにかく家の中の気温差を作らないこと。
急激な温度の変化が起こらないよう、暖房器具の使用やちょっとした工夫を凝らすことで、ヒートショックは未然に防ぐことができます。
簡単に対策できることばかりですので、冬の寒い間は特に注意をして過ごすようにしましょう。