認知症の方を自宅で介護することは、とても大変なことだと思います。
認知症には、軽度、中度、重度などに分けられて、人それぞれ症状にも違いがあります。
介護福祉士などのプロでも関わり方が難しいと感じますので、家族や一般の方だとそれ以上に戸惑うことも多いでしょう。
そんな方に是非チャレンジして頂きたい、認知症ケアあがります。それはユマニチュードというものです。
この記事では在宅介護でも気軽にユマニチュードができるように解説していきます。
ユマニチュードの概要
ユマニチュードはイブ・ジネストとマレスコッティのフランスの二人が開発した認知症のケアの技法で、『人間らしさを取り戻そう!』という考え方なのです。
開発した二人は、認知所の方になんでもケアをしたあげるのではなく、個々の能力を引き出すことが大切であると提唱しました。
現在は、介護や医療職を中心にユマニチュードに関する考え方が浸透しつつあります。
ユマニチュードの考え方
認知症になってしまった人に対して、単にケアをすることではありません。一番大切なことは、その人の人間らしさを尊重することです。
もう少し追及するとすれば、『人間とは何か』『介護する人とは何か』を問うものでもあると言えるでしょう。
ユマニチュードの技法は、
①見る
②話す
③触れる
④立つ
のステップがあります。
これら4つを通して、私たち人間の特性に働きかけて、認知症の方々に自身の尊厳を保持してもらうことを大切にしているのです。
そのためには、介護をする人は介護を必要とする人と同じ目線に立って行うことが大切です。
4つの柱を解説
①見る力とは
認知症の人のケアを行う時、皆さんはどこを見ますでしょうか?
「服が汚れているなぁ・・・」→ 服を見ている
「歯磨きのお手伝いをしなきゃ・・・」→ 口元や歯を見ている
「衣類を脱がせよう・・・」→ 衣類を見ている
このように、ケアをするとき、介護を受ける人の特定の場所を見ていることが多いと思います。
ここで大切なことは、特定の場所を見ながら会話をするのではなく、相手のことを大切に想っていることを伝えるために、目線をしっかり合わせて話をすることです。
まず、目線を同じ高さに合わせます。そして、相手と自分は対等な存在であることを伝えます。すると、自然に誠実さも伝わって、お互いが理解し合える関係になるでしょう。
『見る』とは、単に行動を起こす方向に目を向けて見るのではなく、介護を受ける側との信頼関係を築くための第一歩として、心を開いて相手の本質的な部分を見るということなです。
在宅介護はとても身近で、親密度も高くなります。その分、介護がマンネリ化してしまい、作業的なリズムでケアが進んでいくこともあるかもしれません。
しかし、ケアをする前に目の高さを合わせ、これからケアを行うことの確認をするようにしましょう。
②話す力とは
認知症の人と話をするのはとても難しいです。これは、単に意思の疎通ができないという意味だけではなく、介護する側と介護を受ける側が上下関係になり、命令しているようなニュアンスになる恐れがあるからです。
決して強い口調でなくても、
「早くして」
「すぐ行くから」
「もう少し待っていて」
など、このような言葉を安易に使うことによって、相手に間違った印象を植え付けてしまうのです。
話し方は、基本的になるべく低い声を出すようにします。一般的に、低い方が安心感生まれ、落ち着きが出てくるからです。
また、高齢者が対象になると、耳が聞こえにくくなり、耳元で大きな声で話しかけることもあるかもしれません。
どれくらいの声量がその人にとって適切なのか見極める必要もあります。
ケアを行う際に声掛けは必要ですが、決して否定的、ネガティブな言語は避けるようにします。
例えば入浴介護をする際の声掛けとして、「汚れているからきれいにしないと汚いでしょう」と言うのではく「お風呂に入ったらすっきりして気持ちいいよ」など、肯定的、ポジティブに言うようにします。
③触れる力とは
黙々とケアをするだけではなく、適宜、身体に触れることが大切です。
例えば、入浴介助をする際、「さぁ、これからお風呂です。ゆっくり浸かりましょうね」と声掛けをするだけでなく、手の平を触ったり、肩をさすったりすることです。
とても簡単なことですが、『触れる』という行為は、在宅介護の場合照れなどもあり、なかなかできないケースも多いと思います。
触る際には以下の4点に配慮して下さい。
①相手を驚かさないように手や腕などから触れる
②身体を引っ張ったり強く握ったりしない
③触ってみて嫌がったら一旦中止して様子を見る
④時間をかけてゆっくり触れる
⑤背後などから触れずに相手の視界に入り触れる
④立つ力とは
人間はその構造上、立つことによって身体の様々な器官が機能するようになっています。
よって、理想としては、1日に最低30分間程は立つ時間を設けるようにして、身体の機能を維持するようにしましょう。
下肢筋力低下や麻痺などがあり立つことが出来ない場合には、椅子や車椅子に移るだけでも構いません。
ユマニチュードの効果
認知症になってしまった人を『病人』だと考えるのではなく、一人のかけがえのない人間として接することによって、ケアをする人との間に強い信頼関係が生まれるようになります。
すると、大声を出す、徘徊、暴言、粗暴行為などの周辺症状が改善したという報告があります。
また、ユマニチュードをする前には顔つきが緊張して硬い表情をしていたが、緊張が解けたように落ち着いたなどということもあるようです。
中には、「(ケアをしてくれて)ありがとう」という言葉が出たという事例もあります。
まとめ
ユマニチュードについて解説しましたが、そんなに難しい認知症の技法ではないと思います。
在宅介護の場合、日々時間がない中で黙々とケアを行っている人も多いかもしれませんが、少し肩の力を抜いて、挑戦してみませんか?
①見る
②話す
③触れる
④立つ
排泄介助、食事介助、入浴介護などの前に5分だけでもやってみましょう。