介護施設には様々な職種のスタッフが在籍しています。
介護スタッフだけが、ひたすら介護をしているのではありません。介護保険施設は、知識や技術を持った専門性の高いスタットの集団であり、科学的根拠に基づいたケアを提供してくれるのです。
今回は、介護保険施設の中でも最も人気が高い特別養護老人ホームのスタッフとその専門性について解説していきます。
介護福祉士(介護スタッフ)
特養で最も多い人数を要してケアを行っています。資格を持っていなくても介護をすることは出来ますが、多くの施設では介護福祉士の国家資格を持ったスタッフを雇用してケアを行っています。
食事、入浴、排泄、移乗などの介助に加えて、余暇活動、生活リハビリ、などにも関わっています。
食事介助では、寝たきりの高齢者に口まで食べ物を運んだりする全介助を行ったりします。
入浴介助では、衣類を脱がしたり着せたりもするのは勿論ですが、濡れてもいい服装になり、利用者と一緒に浴室に入り洗身や洗髪を行います。
排泄介助では、トイレまで誘導してズボンを上げ下げしたり汚れたパットを交換したりします。寝たきりの利用者にはオムツ交換なども行います。
余暇活動では、計画の立案や実施までを行います。車で外出する際は運転をすることもあり、緊張感が常にある職種だといえるでしょう。
後でご説明しますが、介護福祉士が行うケアは『ケアプラン』に基づいて実践され、利用者個々の目標が達成できるように取り組んでいるのです。
看護師
特養の看護師は病院の看護師と違い、利用者の健康管理が最大の目的になっています。
例えば、血圧測定を実施したり、健康相談などがあります。また、病院受診をするほどではない軽度の怪我の処置や投薬なども看護師の役割です。
特養では医師の常駐が義務づけられていませんので、嘱託医師との連携が重要になってきます。
例えば、医師に対して「最近食欲がないのです・・・」「熱が3日間程継続しています・・・」「背中に発疹があります・・・」など現状報告を行って、それに対して医師が指示を出したり検査を勧めたりすることもあります。
日常的には看護師と介護福祉士が連携して、現場で利用者に関わっています。
栄養士(管理栄養士)
利用者の栄養に関することを主に行います。
具体的には、個々の栄養状況を見極めて献立を考えたり、嗜好調査、食事介助、嚥下・咀嚼(そしゃく)状態の確認、食事に異物混入がないかの確認(検食)、そして実際に食事を作るお手伝いをすることもあります。
特養の場合栄養士は少人数で対応しています。例えば、利用者70名の定員なら1名の配置でも構わないことになっています。
各職種が集まって、一人の利用者のケアについて考えるカンファレンスにも参加します。栄養士の立場として意見を出したり、これまでのケアや本人の心身状態について報告をしたります。
介護や看護では思いつかないような、栄養士目線での発言が期待される場になっています。
調理員
委託をして調理作業を行う施設が多いです。
栄養士との連携を強くして、栄養の指示のもと実際に食事を作っています。
例えば、食事制限がある利用者の食事は、食事を一つひとつ計り、お膳に乗せるような作業も行います。また、アレルギーや栄養状態が不足して人に対して配慮も、栄養士の指示の基づいて手配をします。
利用者の食事が終われば、勿論後片付けもします。そして、素早く次の食事の準備に取り掛かるのがルーティーンになっています。
個々によって、カロリーや形態などが違うため、間違わないようにしています。
機能訓練指導員(理学療法士等)
リハビリテーションを行うのが、機能訓練指導員です。機能訓練指導員は、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの資格を持った職員が実施する ことができます。
特養でのリハビリテーションは、病院で行うような一旦失われた機能を回復するようなリハビリテーションではありません。どちからというと、それ以上機能が低下するのを防ぐために行うのです。
例えば、高齢になると、足腰が弱り、歩くことが億劫になったります。また、膝が痛くなったり、手が上がらなくなることもあるでしょう。そのような身体状況の利用者に対して、今以上に悪化しないようにリハビリテーションを行うのです。
機能指導員が個別にリハビリテーションを実施することもありますが、介護スタッフと連携して、生活リハビリを行うこともあります。
生活リハビリとは、生活のなかでリハビリテーションを取りいれることです。
例えば、トイレでの排泄を全部介助するのではなく、ズボンを上げたり下げたりする本人ができる行為は積極的にしてもらうように、声掛けを行って見守ったりします。
リハビリテーションは何となく苦痛なイメージがあるかもしれませんが、楽しみながら行うのも一つの方法だとされています。車に乗って外出し、気分転換を行うのも精神的なリハビリに繋がります。
また、風船バレーやミニゴルフなどのレクリエーション活動を通して、普段使わない筋肉を使ってもらうように努めるのもリハビリテーションなのです。
施設ケアマネジャー(介護支援専門員)
いわゆる居宅のケアマネジャーとは違い、施設ケアマネジャーは施設に入所している利用者のケアプランを立案します。
ケアプランとは、なんとなく一日を過ごすのではく、目標や活気を持って過ごしてもらうために計画を立て、実践するのです。
ケアプランの原案を作成する中心的人物が施設ケアマネジャーということになります。
ケアプランの作成は、利用者本人や家族、ケアマネジャー、各職種の代表がカンファレンスに参加して最終決定が行われます。ここでは、利用者本人や家族の意見を積極的に取り入れて、利用者本位のプランになるように作成します。
生活相談員(社会福祉士)
施設の顔と言ってもいいくらいで、外部に出向いて様々な情報を集めたり、高齢者の介護の悩みに関する相談に乗ったりします。
生活相談員の業務は多岐に渡ります。利用者と家族の連絡・相談、利用者の生活相談や苦情の受付、ボランティア・実習の受け入れ、入所・退所の事務的手続き、行事全般の準備などがあります。
特に入所の際は高い専門性が必要とされ、契約書や重要事項説明書の説明、持ち込み物の説明や、ターミナルケア(看取り介護)や利用料金の説明なども行います。
利用者やその家族からどのような質問があっても、スムーズに回答できなければならないので、全ての職種について把握しておく必要があるのです。
利用者の生活状態になにかあり、家族に連絡するようになれば、生活相談員がするようになるでしょう。
事務員
利用者と直接関係することは少ないですが、利用料金の計算・請求や預かり金の管理などをします。
施設によっては、生活相談員と事務員の業務の線引きに差があるようですが、基本的に事務員は事務的な手続きのみを行うようになっています。
利用者の身体に直接触れる機会は少ないでしょう。
まとめ
特養の場合、介護スタッフを中心にケアが行われていることは間違いありません。
しかし、今回解説した通り、他の利用者を支える専門職が存在します。そして、その関係は、上下関係ではなく横の連携で支えることになってます。(多職種連携)
何か、利用者のことで気になることがあれば、生活相談員に伝える機会が多いと思いますが、そこから他職種へと繋がっていき、最善のケアが行われるような仕組みになっているのです。