在宅介護をしていると腰痛に悩まされることもあるでしょう。一時的な腰痛ならばまだいいのですが、慢性化してしまうと身体的負担になり、十分に介護ができなくなってしまいます。
今回は、介護福祉士が施設介護をする場合に実践している腰痛対策をご紹介します。
環境を整える
環境を整えることで腰痛を予防することができます。介護のプロがまず最初に実施していることであり、その効果はすぐに現れるでしょう。
介護用ベッドにする
腰痛を引き起こしやすい介助には、オムツ交換や移乗があります。特に、寝たきり高齢者の場合、生活の多くをベッド上 で行っているため、この対策は重要になります。
一般的なベッドは高さの調整ができず、ベッド上の対象者に何かしようとし場合、腰を曲げる必要があります。しかし、介護用ベッドなら高さの調整ができますので、自分の身長に合わせた高さにすることできます。そして腰を曲げることを最小限にし腰痛予防をすることができます。
そうはいってもどのような介護ベッドがあるか分からない人も多いかと思います。しかし、安心して下さい。
介護用ベッドは介護保険制度を利用して、専門家と相談してレンタルできます。
また発売して間もない最新のものがレンタルすることができるのも嬉しいです。
椅子を使う
様々な介護場面で、ついつい立ったまま介護をしていませんか?
ただでさえ介護は腰に負担がかかります。できる時は腰を休ませる意味でもなるべく椅子に座り介護をしてみましょう。
例えば、食事介助があります。他の家事の兼ね合いもあったりして、立ったまま介助を行うケースも多いと思います。立ったままだと、他に用事があった場合すぐに動けるという利点もありますが、腰を休ませることができません。
ベッドや車いすの横に椅子を置き、そこに座りゆっくりと食事介助をしてみて下さい。少しは楽になると思います。
福祉用具を使う
在宅介護をする人の間ではあまり知られていないのですが、身体に負担をかけないための福祉用具が多数あります。
スライディングボード
腰痛だけでなく、肩や首の負担軽減になるのがスライディングボードです。この福祉用具は、リクライニング車椅子やストレッチャーなどからベッドに移乗する際に利用します。
ストレッチャーからベッドに移乗をする際、福祉用具がなければ身体を抱きかかえるなどして、力任せに行わなければなりません。
スライディングシートをストレッチャーとベッドの間の隙間がなくなるように設置し、身体の左右を介助者2名で滑らせることによって軽い力で移乗させることができるのです。
スライディングシート
ベッド上で、身体を頭の方向に引き上げたり、左右に動かす際に便利なのがスライディングシートです。
スライディングシートはスライディングボードと違い、中にボードが入っておらずサラッとした布で出来ています。
介護を必要とする人の身体の下に敷き込み、移動させたい方向に押したり引っ張ったりすると摩擦が軽減して、軽い力で移動させることができるのです。
折りたたむとコンパクトになるので場所も取りません。介護施設などではよく使われていますが、在宅介護ではあまり知られていないようです。
移動用リフト
リフト器具を使って、介護を必要とするのをそのまま持ち上げる福祉用具です。
介護者の力は全く必要とされないので、腰への負担はゼロに近いといえます。但し、場所を取るので、使用制限があるのが弱点です。
操作は簡単で、『上げる』『降ろす』のボタンしかありません。
介護サービスを利用する
在宅介護を家族だけで継続するのは大変なことです。腰痛を含めて、心身状態をベストコンディションに保てなくなるでしょう。
家族だけで介護を行うのではなく、是非介護保険のサービスを利用してみましょう。
自身のケアを行う
マッサージやストレッチなどを行って自身をケアしていきます。
特に「自分は身体が硬い・・・」と思っている人は腰痛になりやすいです。太ももの前面、ふくらはぎ、腰部、肩などのを伸ばすストレッチをするようにしましょう。
大切なことは一時的なものにしないようにすることです。10分間でもいいので、朝起きた時や、介助を実施する前に継続してストレッチをするようにします。
身体の使い方を見直す
最後に、ご自身の身体の使い方を無理なく適切に動かすことのご紹介をします。
重心を低くして介護をする
重い荷物を持つ場合、無意識に身体の重心はなるべく低くして、腰に負担がかからないようにしていると思います。
重心が高い位置で重い荷物を持ちあげれば、腰を痛めるばかりか、背中、首、肩にも負担がかかってきます。
これは介護でも同じで、自力でベッドから車椅子など移乗介助をするときは、重心を低くし、身体全体の負担を減らすようにします。
一人で抱えない
体重80㎏の人を、体重40㎏の女性が抱えて移乗などをするのは、どう考えても体力的に難しいのが分かります。
環境が整っていない施設でもそうなのですが、在宅介護においても、やむを得ず、無理して一人だけで抱えるケースがあります。
自分より体重が重い人を抱える場合、ある程度技術でカバーできることもありますが、後々腰に負担がかかってくることは確かです。
しかも、どうしても無理をするので、対象者にも負担がかかってしまうのです。
一人で抱える介護を辞めて、誰かに手伝ってもらう環境を整えることも大切です。
足幅は広く
重いものを持つときどのような姿勢で持つでしょうか?
段ボールに入った荷物をイメージしてみて下さい。
そうです。
段ボールの下に手を入れて、持ち上げるようにします。そして、足元は肩幅くらいまで広げて支える面積を大きくします。
このように、私たちは無意識になるべく身体に負担がかからない姿勢で持つようになっているのです。
介護も同じで、対象者を移動・移乗する際は足は肩幅くらいまで広げて、面積を大きくすることで腰痛を含めた身体的負担を軽減させることができるのです。
押すより引く
ベッド上で体位変換をする際には、向く方向とは逆の側に一旦身体を寄せる必要があります。
移動の距離はわずかですが、スライディングシートを使わなければ結構な力を入れて介助することになるでしょう。
ここで大切なことは、対象者の身体は介護者から遠ざけるように身体を押すのではなく、近づけるように引く方が、楽に行えて腰への負担も少なくなるのです。
大きい筋肉を使う
一般的に、上肢(腕)より下肢(脚)の方が筋肉の面積が大きいとされています。
そのため、介護をする時は、上肢に力を入れるのではなくて、下肢に力を入れる方が力が入りやすいのです。
先ほど解説した、「引く」という介護でもそうです。
上肢に力を入れて対象者の身体を引くのではなく、下肢に重点を置いて引く方が楽に行えるのです。
まとめ
介護を継続的に行うことによって、慢性的に腰痛に悩まされる人は少なくはありません。
プロの介護福祉士の中にも定期的に整体院やカイロプラクティック、整形外科に通っている人もいます。
介護施設で働く介護福祉士の場合、腰部を固定するためコルセットを巻いて介護をしている人も多いのですが、部位が蒸れたり、窮屈になったりするため嫌う人もいます。
在宅介護でもコルセット装着して介護することもお勧めですが、安易に使うと腹筋や背筋が逆に弱ってしまいます。
コルセットを希望する場合には、整形外科を受診して医師に相談すると良いでしょう。
今回ご説明した腰痛防止方法を実践して、腰痛負担が軽減できることを願っています。