親などを介護保険施設に預けようと考えた場合、日中に見学に行くのが一般的であり、夜間の様子まではなかなか知る機会がないと思います。
夜間は日中に比べると、全く違う様子になり、認知症の人が不穏になることも度々あります。
今回は、介護保険施設の夜間の様子をご紹介いたします。
職員の数はどうなるのか?
夜間は睡眠することが一般的ですので、職員の数は一気に減少します。
例えば、特養の場合、利用者70名に対して介護職員3名で介護をするケースもあります。
施設によって若干の差はありますが、この3名で就寝前の更衣介助、夜間のオムツ交換、1時間毎の巡視(適宜巡視することもある)、朝の離床、整容介助などを行うことになります。
このように、夜間帯に利用者の十分な介護をすることはとても大変なことだと言えるでしょう。
昼夜逆転する人も・・・
高齢になると活動性が低くなり、自ら積極的に身体を動かさない人も少なくはありません。
そのため、日中ベッド上でウトウトしてしまい、夜間に覚醒してしまう人も多いの現状です。
そして、経過とともに、完全に昼夜逆転してしまい、「眠れない」と訴える人も出てくるのです。
現場の介護職員は、そのようなことがないように、日中は積極的に身体を動かしてもらうようにレクリエーションや体操を促しています。
一度昼夜逆転になってしまうと、それを元に戻すのは大変です。
どうしても改善できない場合は睡眠導入剤などを医師から処方してもらうこともあります。
認知症の人は不穏になることも多い
日中は優しく明るい利用者でも、夜間になれば認知症の影響を受けて精神的に不安定になる人もいます。
例えば、現実は何もないのに、「あそこに虫がいる」「部屋に男の人が来て物を盗む」「犬が鳴いて眠れない」と訴える幻聴、幻視、幻覚などが出現します。
さらに、夕方ぐらいからは「自宅に帰らないといけない」「帰って子供たちに夕ご飯を作らないといけない」と言い、帰宅願望が現れる人も増え始めます。
このように、日中は穏やかに生活していても、夜間になると状況が変わる利用者もいるのです。
職員の対応ですが、多くの場合は傾聴と時間によって解決します。
しかし、職員や他の利用者に暴力的な行為が出現があると、屯用の精神安定剤や睡眠導入剤を服用してもらうこともあります。
トイレの回数が多くなる人もいる
夜間になると、尿量が増えたり、トイレに行く回数が増える利用者もいます。(夜間頻尿)
ある程度自立している人は、一人でトイレに行くこともできるのですが、身体に麻痺があったり下肢筋力低下がある場合にはナースコールなどで知らせて頂き、職員が介助することになります。
個人によっては、「トイレに行かなければならない・・・」ということで頭がいっぱいになり、トイレに座っても排尿がないのに、1時間に1回の割合でトイレに行きたがる利用者もいます。
明らかに水分補給が多い場合には、水分摂取を控えるように職員が声掛けすることもありますが、基本的に脱水にならないように努めるので、制限はしないのが一般的です。
夜間「トイレに行きたい」と訴えがあれば、その都度対応します。
また、尿量が多い人は、オムツ交換をする時間に関係なくオムツ交換をしたりしています。
転倒・転落のリスクが高まる
夜間には転倒・転落のリスクが一気に高くなります。
例えば・・・
トイレに行くとき、足元が暗くなっていて何かに引っかかって転倒するケース
不穏になって、徘徊してしまいそのうち転倒してしまうケース
昼夜逆転になり、ベッド上で覚醒して転落してしまうケース
睡眠導入剤などが強く効きすぎて、朝方ふらつきがあり転倒・転落してしまうケース
職員の数が減少し、目が届かないところで転倒・転落してしまうケース
このようなことがあります。
職員の対応としては、ある程度リスクを理解している人に対しては、センサーマットなどを置いて、未然に事故を防ぐように取り組んでいます。
※センサーマットととは、ベッドから身体が動いた場合や、ベッドの端に座った場合にセンサーが感知して、ブザーなどで知らせてくれる装置
排便で大変な事態になることもある
高齢者はなかなか自力で排便ができないことが多いのが特徴です。
そのため、薬を服用してもらい、定期的に排便があるようにコントロールすることもあります。
その際の排便が日中にあるのならいいのですが、夜間帯に排泄があるケースもあるのです。
下剤などを飲んだ排便は、泥状便や軟便になることが多く、オムツから漏れてしまうことも珍しくありません。
臭いがしたら職員が交換しますが、その前に不快感から便を手で触ったりする利用者がいることもあります。
職員が早く気付かないと、布団やベッド、衣類全体まで便で汚れてしまうため、それを交換・清掃することになり、利用者にも迷惑を掛けてしまうことになってしまいます。
まとめ
介護保険施設の夜間は何が起きるか予想ができません。日中の活動性が高い人は、夜間でも深い眠りにつくことがあります。
もしかしたら、深夜に施設から家族に「転倒して出血があります!」などという電話連絡が入ることもあるかもしれません・・・。
夜間眠れない利用者に対しては、医師からの処方を受けて睡眠導入剤などを上手く活用しています。
もし、入所予定の家族が不眠症やトイレに行くことが多い場合には、事前に施設に相談しておくとよいでしょう。