介護保険外サービスを上手に利用することで、介護保険サービスの足りない部分を補完することができます。
介護保険外サービスは、多くの団体や企業が提供しているサービスで、介護認定を受けていない人でも利用できるため、非常に便利なサービスです。
この記事では実際にどのようなサービスがあるのか、どんなケースの利用者がいらっしゃるのか、実際に利用された方の事例集をご紹介します。
介護保険外サービスの利用を検討されている方も、現在生活に課題がある方も、解決方法の糸口として参考にしてください。
介護保険が受けられない?Aさんの事例
【Aさんの状況】
Aさん:59歳・女性・複数のガンの治療中・ご主人の年金で生活
Aさんのご主人:68歳・重度の肺気腫により障がい者手帳所有・要介護1
Aさんのご家族:30代の娘さん2人・同じ市内に居住・共に子どもあり(幼児)
年齢も疾患もNG
筆者がAさんと知り合ったきっかけは、ご主人の訪問介護の打ち合わせのときでした。
ご主人は重度の肺気腫により、介護認定を受けていたため、訪問入浴と通院介助のサービスを希望されていました。
Aさんは一見とてもお元気そうだったのですが、甲状腺がん・乳がん・子宮頸がんの治療を継続されていること、ひどい腰痛の症状に悩まされていることで、身体を動かすのがとても難儀だと相談をされました。
しかし、Aさん自身は年齢も疾患も介護保険サービスを受ける条件に該当せず、娘さんたちに支援を受けながら生活をしていたのです。
家族が相談窓口で情報を収集
後日、Aさんの娘さんが事務所へ相談に来所されました。
Aさんの状態があまり良くなく、ご主人の介護もあって疲弊されているとのこと。
とても心配され、何か良い方法はないのかという内容でした。
そこで担当のケアマネジャーが、費用のあまりかからない保険外サービスの紹介をしました。
Aさんの家庭の課題となっていたのは3つでした。
- Aさんの通院介助
- 食事の準備
- Aさんの介護用ベッド
Aさんは腰痛がひどく、普通のベッドでは寝起きが大変で、ご主人の使用されているような介護用ベッドを希望されていました。
そこで配食サービス・通院介助・介護用ベッドのレンタルをご紹介し、Aさんご本人と相談されるということになったのです。
負担も少なく安心して生活できる
Aさんは3つのサービスの利用を決めました。
費用に関しては娘さんたちも援助してくれるとのことで、不安は解消。
ご主人の介護サービスとは別に、Aさん自身が契約をする結果となりました。
- 配食サービスには安否確認も含まれていること
- 通院介助に娘さんたちの手を煩わせずにすむこと
- 介護用ベッドの利用で腰痛が劇的に改善していること
Aさんは非常に安心した様子で、「もっと高額で手が出ないサービスだと思っていた。娘たちの支援がなくても何とか自分たちでもやっていけるのが嬉しい。」とおっしゃっていました。
介護保険外サービスに関する知識や相談するタイミングがわからずに、困っていた時期がもったいなかったというAさんの言葉に、情報弱者になってしまいがちな高齢者世帯の課題を感じました。
家族が介護できない・Bさんの事例
【Bさんの状況】
Bさん:78歳・女性・ご主人は4年前に他界・関東地方で一人暮らし
Bさんの家族①:娘さん・40代・障がいのあるお子さんの子育て中・ご主人の仕事の関係で東北地方在住
Bさんの家族②:息子さん・40代・海外に在住
遠方に住む家族が抱える事情
Bさんは非常に気丈で、明るい女性でした。
ご主人が他界された後も、子どもたちの手を借りずに、介護サービスを利用しながら生活をしていましたが、ある日骨折をしてしまったことから、生活に変化が起き始めました。
2ヶ月近い入院で、認知症を発症してしまったのです。
ケアマネジャーが娘さんと話をすると、ご家族にはそれぞれ事情があり、Bさんの介護が難しい状況が分かってきたのです。
娘さんは障がいをもつ子どもさんを育てていて、子どもさんは地元の特別支援学校に通っていました。
持病があるため、かかりつけ医との連携が欠かせず、Bさんとの同居は難しい状況だったのです。
息子さんは仕事で海外に在住していて、経済的な支援はできても、日本に帰国することできないということでした。
そこで一人暮らしで軽度の認知症を抱えるBさんの介護計画が開始されました。
高齢者の一人暮らしを支えるサービス
Bさんは在宅介護への希望が強く、施設入所は「最後の手段」とおっしゃっていました。
そのため施設探しを併行しながら、Bさんが安心して暮らせるサービスの構築を行ったのです。
介護保険のサービスで足りない部分を、保険外サービスで補う形を提案しました。
- 見守りサービス
- 配食サービス
- 通院介助サービス
- 外出支援サービス
ご家族が何より安心されたのは、見守りサービスでした。
ホームセキュリティの会社と契約をし、離れていても様子がわかるサービスで、Bさんに何かあったときの機能が充実しているプランを選択されました。
他にも介護保険で足りない部分の配食サービスや、外出好きなBさんのための外出支援サービスなど、Bさんの生活ができるだけ充実するようなプランを相談していきました。
認知症が発症しても在宅で
Bさんは以前から「住み慣れたこの家で最期を迎えたい」という強い意志がありました。
ご家族には同居できない事情があり、全員が無理をすることでそれぞれの生活が破綻してしまいます。
そのため、安易に施設入所を選択するのではなく、無理のない範囲で在宅介護を支援していく方向になったのです。
Bさんは亡くなるまでの5年間、さまざまな支援を受けながらご自身で生活をされていました。
適切なサービスを選択できれば、認知症が発症したとしても在宅で生活ができるという、素晴らしい経験をさせてもらったと思っています。
在宅介護にプラス・Cさんの事例
【Cさんの状況】
Cさん:80代・女性・子どもなし・関節の痛み等はあるが基礎疾患や認知症などの症状はなし
Cさんのご主人:90代・軽度の認知症により要介護認定・物静かだが頑固な性格
老々介護で共倒れ?CさんのSOS
Cさんは80代という高齢でありながら、90代のご主人の介護をされていた方です。
ご主人の訪問介護で伺うと、痛い関節をかばいながら、必死に動かれていました。
それでも「私は介護保険を受けるような病気はない」と気丈に対応されていて、訪問するヘルパーにもあまり弱音を吐かない性格の方でした。
しかし、ご主人の訪問介護を開始してから3ヶ月ほどが経ったとき、突然CさんからSOSが発信されたのです。
「ヘルパーさんのやってくれる内容だけでは足りない。このままでは共倒れになってしまう。」という切羽詰まった内容でした。
Cさんの課題を解決できる保険外サービス
ケアマネジャーがCさんと話し合ったところ、ご主人とのコミュニケーションがうまくいかず、身体的にも精神的にも参っているという訴えがありました。
- 自分自身の時間がない
- 外出ができない
というのが最大の課題で、お子さんもいらっしゃらないCさんご夫婦には、頼れる身内もいませんでした。
ケアマネジャーがCさんの介護認定を試みてみたものの、やはり認定を受けることはできなかったため、比較的経済的に余裕のあるCさんには、保険外サービスを提案して利用をおすすめすることにしたのです。
混合介護で実現したQOLの向上
Cさんはとにかく自分の時間=ご主人のことを心配しなくても良い時間が欲しいということだったので、Cさん自身のサービスではなく、ご主人のサービスを混合介護にすることにしました。
介護保険サービスでは足りない部分=ご主人の見守りをメインで、週に2回ほど、Cさんが自由になる時間を作ったのです。
Cさんは「久しぶりにゆっくり眠れた」「夫のことを気にせずに買い物を楽しめた」と、とても明るい顔をされるようになりました。
見守りサービスのスタッフは、高齢者の介護に関する知識もあり、安心して任せられるというのです。
CさんのQOLが向上したことで、ご主人の頑なな態度も軟化し、施設入所まで考えていたCさんも在宅で介護を続けることを選択されました。
まとめ
訪問介護事業所で多くの高齢者の方とお話をする機会がありましたが、情報を得る手段がなく、保険外サービスを検討することも考えていなかった方がとても多かったです。
保険外サービスは決して高額なものばかりではなく、適切な価格のサービスもたくさんあります。
介護保険の足りない部分の補完・介護保険サービスを受けられない方の支援など、さまざまな目的で提供されているサービスです。
今回ご紹介した3名の方の事例も、保険外サービスの導入で、QOLが向上し、不安や課題を取り除くことができる結果となっています。
保険外サービスの種類や相場を知り、適切なサービスが受けられる…
情報弱者を作らないことが介護業界最大の課題といえるでしょう。