在宅介護を始める時には、さまざまな手続きが必要になります。
実際に介護が始まると、担当のケアマネジャー・ヘルパーなど、介護に関わる多くの職種の人と話をする機会が増えることは想像できるでしょう。
先方はわかりやすく伝えているつもりでも、知識を持つ専門職の人の話は、分かりにくいことがあります。
理由は専門用語を使うからです。
よく使う専門用語を事前に知っておくことで、コミュニケーションが円滑になり、納得のいく介護を受けることができます。
この記事では、在宅介護でよく使う介護業界の用語をピックアップしてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
介護保険に関する用語
介護保険などの制度に関する用語は、馴染みが薄いためにハードルが高く感じられます。
しかし相談に行くときや、介護の内容について話し合うときには、用語を知っているだけで理解度がグンと上がるのです。
まず初めに、介護保険に関する用語を解説しましょう。
介護支援専門員
介護支援専門員とは、介護保険法に基づいてケアマネジメントを行う専門職のことです。
別名ケアマネジャー(ケアマネージャー)ともいい、他の専門職と連携をとって、最適なケアプランの作成を行います。
ケアマネジャーは、施設にも居宅介護事業所にも在籍し、特に在宅介護の場合は密接にかかわることになる存在です。
介護の申請・サービスの見直し・医療機関や自治体への連携など、介護に関してわからないことや困ったことがあれば相談できる人と覚えておきましょう。
保険外サービス
保険外サービスとは、介護保険が適用されない介護サービスの総称です。
費用は全額自己負担になりますが、介護保険ではまかなえないサービスを提供してくれます。
自治体・介護サービス事業者・社会福祉協議会・民間企業など、提供している団体はさまざまです。
介護保険の認定を受けていない人や、同居している家族もサービスを受けることが可能な上、高齢者に関する知識を習得したスタッフが派遣されます。
近年では、介護保険のサービスと併用した混合介護が注目されています。
居宅介護サービス計画
居宅介護サービス計画とは、ケアプランと呼ばれるもので、担当のケアマネジャーが利用者の課題を解決するために作成するプラン(計画)のことです。
- いつ
- どこで
- どんなサービスを
- どのくらい
受けるのかを、決めます。
居宅介護サービス計画は、介護保険サービスを受けるために欠かせないものです。
在宅介護を受けたいときは、介護保険事業所などに相談し、作成してもらう必要があります。
身体介護
身体介護とは、利用者の身体に直接触れる介護のことを指します。
- 食事解除
- 入浴介助
- 更衣解除
- 排せつ介助
- 体位変換
- 外出介助
- 清拭(せいしき:身体を清潔にするために拭くこと)
などの直接的な介護や、自立支援・重度化防止などの介護サービスが該当します。
その他にも有資格者だけが行うことができる喀痰吸引や経管栄養などのサービスもあります。
在宅介護では、ケアプランの作成時によく耳にする用語です。
生活援助
生活援助とは、高齢者が自分では行うことのできない場合に、日常生活の援助を行うサービスのことです。
- 掃除
- 洗濯
- 料理
- 買い物
- ベッドメイク
- 薬の受け取り
などが該当するサービスです。
基本的には利用者本人に関わることのみを援助するので、同居の家族やペットなどは対象になりません。
掃除・料理・洗濯も利用者本人のみが対象です。
要介護認定
要介護認定とは、介護保険のサービスを受ける際に必要な調査のことです。
介護の必要度やサービスの種類を選定するために、要介護度の認定を受けなければいけません。
65歳以上、もしくは特定疾病に該当する人は介護保険サービスを受けることができますが、誰でも受けられるというわけではないので、要介護認定という判定調査が行われるのです。
要介護認定によって、要介護度1~5・要支援1〜2が判定されます。
介護保険サービスを受けたい場合は、市区町村の役所に要介護認定の申請を行うことが必要です。
疾病に関する用語
介護と医療は密接な関係にあります。
高齢者特有の疾病や、介護サービスを受ける際に必要な用語をご紹介しましょう。
誤嚥(ごえん)
誤嚥とは、食べ物や唾液が食道ではなく気道に入り込んでしまうことをいいます。
健康な人であれば、『むせる』ことで『咳』が出て、異物を気道から排除することができますが、高齢者の場合は飲み込む力が弱まり、気道に入ってしまった異物を排除することができなくなるのです。
口の中の細菌などが一緒に肺に入ってしまうと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こして、命に関わることもあります。
加齢・脳血管障害・認知症などの場合、誤嚥が起こりやすくなるので、食事介助の際には注意が必要です。
食事形態の工夫や、飲み込みの確認などが対策が必要になります。
既往症(きおうしょう)
既往症とは、これまでにかかったことがあり、現在は治癒している病気のことをいいます。
病歴・既往歴などということもあり、医師の診察時や介護認定の調査時などによく使われる用語です。
持病・基礎疾患は、長期的・慢性的でなかなか治らない病気のことなので、混同しないようにしましょう。
廃用症候群(はいようしょうこうぐん)
廃用症候群とは、寝たきりなどによる過度な安静が原因で、身体に生じた変化や状態のことをいいます。
- 筋肉の萎縮:筋肉が衰える
- 関節の拘縮(こうしゅく):動きが悪くなり縮まってしまう
- 骨の萎縮:骨がもろくなる
- 褥瘡(じょくそう):いわゆる床ずれ
などが代表的な症状です。
廃用症候群には決まった検査などはなく、高齢者の場合は元の状態に戻ることが難しくなります。
声かけ・リハビリテーションなどの予防が重要です。
介護全般に関する用語
介護に関する用語はまだたくさんあります。
介護関係者と話をするときに、知っていると便利な専門用語も併せてご紹介しましょう。
ADL
ADLとは、Activities of Daily Livingの略で、日常生活動作のことを指します。
日常生活を送るために、最低限必要な動作のことで、介護では移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容などが含まれます。
ADLは、高齢者の方の日常生活動作のレベルを図るための指標なので、一つひとつの動作についてできるかできないかを判断します。
介護保険サービスの身体介護を受ける際に、よく使われる用語です。
QOL
QOLとは、Quality of Lifeの略で、『生活の質』『人生の質』などといわれます。
個々の価値観に基づいて、身体的・精神的・社会的に満足のいく状態のことを表し、高齢者の方が生き生きと生活できる環境を作ろうという取り組みの中で使われる用語です。
ADLとQOLは密接な関係にあり、どちらかが低下してしまうと、もう一方も低下することが特徴です。
介護をする側の配慮や、介護をされる側の立場に立って考えることの重要性が問われています。
レスパイトケア
レスパイトケアとは、介護をする側が休むことのできるサービスの総称です。
レスパイトとは小休止・息抜き・休息という意味で、介護者の身体的・肉体的な疲労を癒すために利用できるものになります。
介護保険で利用できるサービス | 医療保険で利用できるサービス |
デイサービス(通所介護) ショートステイ(短期入所生活介護) ホームヘルプ(訪問介護) | レスパイト入院(介護家族支援短期入院) |
介護をされている方の負担は、計り知れないものがあります。
介護うつや虐待などの悲しい事態にならないよう、介護者のリフレッシュや休息の大切さが見直されているのです。
まとめ
介護の用語は、介護の専門性に加えて医療的な要素も含むので、わかりにくいものが多いです。
しかし在宅介護を行う上では、介護をする方も介護に関する知識を得ることが大切になります。
用語を知っておくだけでも、ケアマネジャーや医師などと良いコミュニケーションが取れるようになり、ヘルパーとの連絡もスムーズになるでしょう。
制度や担当者の役割などを知ることも重要ですので、少しずつ理解できるように努めてください。