フレイル、サルコペニア・・・難しい言葉と感じる人もいれば、何となく耳にしたことがあるという人もいるかもしれません。
この二つの言葉は高齢者が寝たきりになる過程と関係性が深く、理解しているかどうかで寝たきり予防をすることが出来る可能性が高くなります。
今回はこの二つの言葉について解説していきます。
フレイルとは簡単に
加齢に伴い、筋肉・筋力や活動性が低下している状態です。
このように解説すると、身体面だけの問題のように感じるかもしれませんが、閉じこもりがちになる社会的フレイルと、意欲や認知機能が低下する精神的フレイルがあります。
サルコペニアとは簡単に
加齢に伴い、筋肉量や筋肉、身体機能が低下することです。
サルコペニアの原因は老化だけとは限りません。タンパク質やエネルギーの摂取、身体活動量の減少や骨折や疾患などもあります。
フレイルを詳しく解説
フレイルという言葉は、英語が語源となっており、『虚弱』『老衰』などと表現されます。
厚生労働省によれば、フレイルとは、『加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像』とされています。
そして、健康な状態と日常生活での支援が必要な介護状態の中間状態を意味することになります。
よって、多くの要介護状態の人々は、フレイルを経て進んでいくと考えられています。
フレイルとなる基準について
以下、5つの項目がありますが、3項目以上が当てはまるとフレイルとされて、1~2項目が当てはまれば、フレイルになる前段階であるとされます。
①体重が減少する
例えば、ダイエットなどを意識しないにも関わらず、年間4.5㎏または5%の体重減少がある場合です。
②疲れやすい
何かを前に面倒だと感じたり、身体的疲労が感じやすくなった思う場合が週に3~4日以上感じることなどがあります。
③歩行の速度が低下
正確に時間を図って判断する必要はありませんが、なんとなく歩くスピードが遅くなったと感じたら要注意です。
④握力の低下
自分の年齢の平均値を下回ったら注意が必要です。
⑤身体活動量の低下
フレイルになるとどうなるのか?
フレイルになってしまうと、死亡率が上がったり、身体機能や能力の低下が起きてしまいます。
さらに、あらゆる病気に罹患しやすくなり、入院を要するなどストレスに弱い状態になってしまうのです。
例えば、普段から元気な人が風邪を引いても、身体のだるさや発熱がありますが、2~3日もすればピークは過ぎるでしょう。
しかし、フレイルになれば、単なる風邪でも悪化してしまい、肺炎などになることもあるのです。
サルコペニアを詳しく解説
2016年10月、国際疾病分類に『サルコペニア』が登録されました。そして、今では疾患のひとつとして扱われています。
サルコペニアになると、歩く、立つ、座る、移動するなどの日常的な動作に影響が出て、介護が要するようになったり、歩行中に転倒しやすくなったりします。
サルコぺニアの原因について
サルコペニアは加齢に伴って、様々な変化によって引き起ります。
例えば、慢性的な炎症、酸化ストレス、神経の問題、ホルモンの減少などがあります。
加齢によるものですので、仕方ない部分もありますが、日常的な生活習慣によって改善できるとされています。その肝になるのが『運動』と『栄養』なのです。
通常、筋肉は合成されて作られたり、分解して壊されたりを繰り返しています。
高齢者でない若い世代では、この筋肉の作られる量と壊される量が均一に保たれることになり、普通に生活を送っていれば、著しく増加したり減少したりすることはありません。
しかし高齢になると、作られる量が減少し、壊される量が増加するため、普段通りに生活を送っているだけでは筋肉が減少しやすい状態になるのです。
ここで一番伝えたいことは『高齢になれば普段通りの生活を送っていれば筋肉が減少する』ということなのです。
サルコペニアを予防する方法
高齢になり、動くのがしんどい、だるい、膝が痛い、外出が億劫に感じる、食欲があまりない・・・と感じている人も多いと思います。
このように感じるのは個人差がありますが、年をとればとるほどサルコペニアが進行するのです。では、どのように予防すればいいでしょうか?
それは『運動』『栄養』『生活習慣』の3つに配慮して生活することです。
まずは運動を
運動とはいっても様々な運動がありますが、サルコペニアを予防するためには、筋肉トレーニング(筋トレ)が推奨されています。
筋トレと聞くと、なんとなく大事な気がするかもしれませんが、要は筋肉に負荷を加えることを意識したトレーニングをすればいいでしょう。
勿論、できるのであれば、スポーツジムなどに通いマシンを使用しても構わないです。
しかし、ここで大切なことは『継続』です。張り切ってトレーニングしてもそれが継続しなければあまり意味がありません。
最初は軽い負荷でも構いませんので、ゆっくり、じっくり行うことが大切です。
介護保険制度を使用しているのであれば、パワーリハビリというものを取り入れたデイサービスなどもあるので、試してみてもいいかもしれません。
高齢者に合わせた負荷でトレーニングすることができます。
栄養状態を見直す
運動に加えて大切なものは栄養です。
特にタンパク質は筋肉を生成するために必要になってきます。では、タンパク質が含まれる食材ですがどのようなものが思い浮かぶでしょうか?
豊富に含まれるものとして、魚、肉、大豆、卵、乳製品などがあります。
これらを多く含んだおかずを摂取する必要があるのです。
おかずだけでタンパク質が摂取できにくい場合には補助的にゼリーなどを食べても構いません。
例えば、ネット検索で『タンパク質 ゼリー』などで探してみて下さい。高齢者でも食べやすい商品がヒットするでしょう。
生活習慣も大切
身体を動かすのがしんどい、億劫、などという理由で家に閉じこもりがちにならないようにしなければなりません。
筋肉をつけるリハビリも大切ですが、ジョギングやウォーキングなど軽く汗を流す運動を継続的に行ったりすることも重要です。
食事に関しては、自分が摂取しやすいタンパク質を摂取できるように心掛けて下さい。
例えば、ソフトクリームやプリン、どらやきなどは牛乳、大豆などの食材が使われているのでタンパク質が摂取しやすいです。
まとめ
フレイルとサルコペニアについて解説しましたが、いずれも加齢による機能低下を意味します。
フレイルは身体的、社会的、精神的側面があります。一方でサルコペニアは身体機能を重要視した言葉になっています。
言葉とその意味は少々難しいかもしれませんが、ある程度の努力によって寝たきり状態になるのを遅くすることができます。
結果として、健康寿命を延ばすことができ、イキイキとして明るく元気な生活を維持させることができるのです。
特に、運動と栄養、生活習慣に配慮して生活を送るようにしましょう。