高齢者がいつまでも元気で活動性の高い生活を送るためには、いつまでも自分の足で歩行ができることはとても重要です。
歩行が出来なくなる原因は様々ですが、足をケアすることによってある程度は改善できるケースもあるのです。
今回は、『健康な足』とは何かを考えて、フットケアについて解説していきたいと思います。
高齢者のフットケアの必要性
我が国の平均年齢は男女とも80歳を超えて、女性に至っては90歳近くにもなっています。
元気でいつまでも長生きすることは、誰もが願っている事でしょう。
しかし、高齢になればなるほど、介護が必要になったり、様々な病気に罹患するのが一般的です。
残念ながら、要介護状態となれば社会の経済的な負担は高くなってしまいます。
そこで、なるべく要介護状態になるのを遅らせるような取り組みが介護保険制度など国をあげて取り組んでいるのです。
特定の病気に罹患しなくても、下肢筋力低下や損傷、事故などによって歩けなくケースはあります。
運動器の疾患になれば、皮膚科の領域とは関係がないように思えますが、実は関係が深いことが分かってきたのです。
例えば、足の歩行が難しくなる状態として・・・
○胼胝 (たこ)
https://mysole.jp/kyokai/column/archives/846/
○鶏眼 (うおの目)
http://www.kamedahihuka.com/newpage6.html
○肥厚爪・陥入爪
https://www.makizume-clip-on.com/blog/2341/
などは下肢機能を低下させ、転倒リスクを増大させてしまいます。
より歩行しやすい『足』にしていくために、フットケアを行うことによって改善できるのです。
高齢者の足の特徴
高齢者の足底の皮膚には多くの特徴やトラブルがありますが、これは高齢者特有の皮膚の状態などに関連しているのです。
足の底の皮膚は普通の皮膚に比べると、硬く厚くなっています。これは、毛包構造がなく、汗腺が発達しているためなのです。
加齢に伴い、ターンオーバの周期が長くなります。
【年代別 ターンオーバー周期の目安】
☆10代 約20日
☆20代 約28日
☆30代 約40日
☆40代 約55日
☆50代 約75日
☆60代 約100日
※ターンオーバーが長くなるということは、古くなった細胞がそれだけ長期に渡り残ることになるのです。
参照:https://om-clinic.com/column/1725
そして、角質は異常に乾燥した状態になります。
更に、他の皮膚とは違い踵部が若い人に比べると大きな違いがあるのです。
それは、肉厚(踵部の脂肪の厚さ)が薄くなり、外圧などから守れなくなり、結果として痛みが出現したり褥瘡の可能性が高まるのです。
また、リンパや静脈のうっ血に加えて動脈が閉塞するなどによる皮膚炎や腫瘍などになるリスクがあるため注意が必要です。
高齢者の足に多い爪の病気・症状
画像付きで先述していますが、主なものを詳しく解説していきます。
胼胝・鶏眼
よく発生する足底に出現する皮膚の症状に、胼胝や鶏眼があります。
これは、部分的に圧が強くかかり、角化した現象です。
足に何の変形もない人だと、発生する場所は一部の決まった場所に出来ることが多いですが、足が変形(外反母趾、偏平足、ハンマートゥなど)すると、足をあまり上げずに歩行するように習慣化され、一部の部位に著しく圧がかかるようになり、胼胝や鶏眼になるのです。
更に、足趾は互いに押されて、踏まれてタコといわれる角化性病変が出来てしまいます。
足底角化症
足底の皮膚はターンオーバーによって、発汗低下、保湿性の低下などが起きてきます。
そして、厚く乾燥しやすい皮膚状態になり、自分の体重がかかると亀裂なども発生することもあるのです。
亀裂した部位は、『抹消循環障害』などのある高齢者の場合、腫瘍化するケースもあるので注意が必要となります。
https://mrs.living.jp/sp/1812kakato/
肥厚爪
「ひこうづめ」と呼びます。爪が分厚くなり、靴下などを履くとき引っかかったりします。
https://knowledge.nurse-senka.jp/233614/
原因として、
○合わない靴を履き続けている
○廊下に伴い爪の水分が失われる
○深爪によって爪が盛り上がってくる
○爪の手入れ不足によって角質が溜まる
などがあります。
巻き爪
画像の様に爪が内側に巻き込んでしまい、身に食い込んでい痛みを感じることも珍しくありません。
原因として、
○自分の足に合わない靴を履き続け、爪が圧迫される
○歩行状態に問題があり、足の先(爪)に力が入らないでいる
○深爪など、不適切な詰めの切り方をしている
などがあります。
高齢者になり急に巻き爪になるというよりも、長年の生活習慣や歩き方やケアの仕方でなってしまうのです。
高齢者のフットケアは誰がする?
ここまで解説した通り、高齢者の足には特徴があり若い人たちとは違います。
若い人は、爪を切る行為ひとつにしても何も考えることなく、伸びた部分だけを爪切りで切る人も多いでしょう。
高齢者の場合、専門的知識を必要とするケースがありますので、皮膚科医や看護師に相談してみましょう。
介護保険では介護福祉士ができるのか
治療を必要としないと医師が判断すれば、それは『医療行為』には該当しません。よって、施設などの介護福祉士が行っても構いません。し
かし、逆に言えばフットケアをしようとする場合には、必ず医師に診せなければなりません。
※医師法17条による
フットケア専門の資格試験がある
フットケア指導士認定について
生活を支援する医療や福祉職者がフットケアの専門知識と技術を身に付け、下肢の障害を予防・ケア・フォローアップを行うことは利用者の生活の質を高める上で重要かつ効果的です。
そこで、フットケア全般の優れた知識と技術を有する医療や福祉職をフットケア指導士として育成していく資格なのです。
巻き爪など医師しか治療できないケースも
医療行為とされて、医師しか治療ができないケースもあります。
それが、巻き爪治療のマチワイヤー法・フェノール法・アクリル固定ガター法です。
マチワイヤー法
形状記憶合金のワイヤーを使った矯正方法です。
先端の白い部分の2ヶ所に穴を開けます。そして曲げても直線状に戻る超弾性ワイヤーをそこに通し、ワイヤーが元の形状に戻ろうとする力を使って巻き爪を矯正します。
フェノール法
爪の両側の食い込んでいる部分を切り取る方法です。
巻き爪の症状が進行して痛みがひどい場合など、重症の陥入した爪などに対して治療が行われます。
アクリル固定ガター法
麻酔を使用し治療をします。
爪が食い込んでいる部位にチューブを挟み、爪と皮膚が接触しないようにして痛みを和らげる方法です。
まとめ
高齢者の足は足底からの圧がかかるなどして、爪や踵にその症状が出てきて、歩行すると痛みを感じることもあります。
しかし、フットケアを行い、痛みなどの症状を除去することによって歩行状態を改善させることがあります。
また、歩行ができるうちに、予防を兼ねてフットケアを日頃からしておいた方が良いという考えもあります。
足の爪や皮膚状態が悪く、痛みなどを感じる場合には、介護施設の看護師や介護福祉士、または医師などに相談しフットケアを実施してみましょう。