高齢者の中には入れ歯(義歯)をしている人が多いと思います。
入れ歯は、食べ物をかみ砕く役割だけだと思っていませんか?
実はそれ以外にも入れ歯の持っている役割はあります。
今回は、実はあまり知られていない入れ歯の意義や役割について解説し、お手入れ方法もお伝えします。
入れを着用する意義について
脳へ刺激を送ることができる
入れ歯がない状態だと、硬いものが食べられなくて軟らかいものばかり食べることになります。
こうなると、口から受ける刺激が少なくなり、脳の働きが十分なものになりません。
自分の口腔状態に合った入れ歯を入れることによって、ある程度硬い食べ物も嚙み砕けるようになり、それが脳への良い刺激になっていくのです。
残っている歯を補助する
歯はお互いに支えって生えています。
特にそしゃくをする際には、歯に大きな圧力が掛かるため、単独で一本だけ生えているの歯は、不安定になりやすくダメージを受けることもあります。
しかし、入れ歯を入れることによって、残っている歯を支える役割を果たすため、全体的にダメージを受けにくくなるのです。
それだけではなく、残っている歯をそのまま放置しておくと、時間をかけて本来の場所から移動してしまい、斜めに傾いたりもするのです。
はっきりした発語になる
高齢者になると活舌が悪くなっていく傾向にあります。
しっかりと口が開かず、抜けた歯のところから空気が漏れたりするからです。
入れ歯を入れることによって、空気の漏れがなくなりはっきりとした発語になり、他者とコミュニケーションを取りやすくなるのです。
表情が整う
普段は入れ歯をしているけど、寝る前などに外していると口元がシワシワになっており、いつもより老けて見えたとはことはありませんか?
部分入れ歯なら、表情の変化も少ないかもしれませんが、総入れ歯の場合だと入れ歯を外した時は表情が悪く不健康に見えてしまいます。
入れ歯を入れることによって、しまった顔になり健康的な印象を相手に持ってもらえるのです。
姿勢が安定する
しっかり歯が生えていても、嚙み合わせが悪いと姿勢に影響を与えるという話を聞いたことはありませんか?
人間の姿勢はかみ合わせに大きく関係しており、歯並びが悪いと姿勢が悪くなるといわれています。
そう考えると、自分に合った入れ歯をしっかりと入れることによって、嚙み合わせが安定します。
そして姿勢も安定することがご理解頂けると思います。
唾液の分泌が促される
歯がない状態では『そしゃく』という行為をしなくなると思います。(硬くなった歯茎で無理やりそしゃくする人もいますが…)
そしゃくをしなければ、唾液は分泌されにくくなり、口の中の自浄作用が十分出来なくなってしまうのです。
自分の口腔状態に合った入れ歯を入れて、しっかりそしゃくすることが大切です。
入れ歯の管理について
一度入れ歯を歯科医で作ったらそれで終わりではありません。継続的に管理をしていく必要性があります。
管理が必要な理由として…
①加齢と伴に顎の形が変形し、自分に合っていない義歯を使用することになる
②口腔内の管理が行き届かないと、バネを掛けている歯が歯周病や虫歯になり、義歯の装着が難しくなる
③入れ歯そのものが劣化し、自分の顎や口腔状況に合っていないものを使用することになる
このような理由がありますので、調子が良くても年に1~2回は定期検査を受けるようにしましょう。
入れ歯の手洗い方法
日常的にどのように手入れをすれば良いかを解説します。
入れ歯を洗うタイミング
朝昼夕の三食後と、間食後にも洗うのが理想的です。もし、洗うのを忘れたら、その次はより丁寧に洗うようにしましょう。
入れ歯の洗い方
市販の歯磨き粉を使うのはNGです。
研磨剤が入っており、ダメージを与えることになっています。
入れ歯専用のブラシと、中性洗剤な泡状のハンドソープで洗うようにしましょう。
洗うのは歯の部分だけではなく、歯茎に接するピンクの部分も専用ブラシで洗うようにします。
また、バネがある場合はその部分も丁寧に洗っていきます。
寝る前は水につける
一日中入れ歯を付けていると、歯茎に負担がかかります。よって、寝る前は入れ歯を外して歯茎を休めるようにします。
但し、入れ歯を外すと落ち着かない、認知症があり外すのを嫌がるなどがありましたら、介護者は無理に外すのは止めましょう。口腔内を傷つけてしまう可能性があります。
一度歯科医師に相談するのも一つの方法です。
入れ歯洗浄剤について
水に入れ歯をつけるとき、入れ歯洗浄剤の必要性を感じるかもしれません。
しかし、毎日つけると入れ歯がダメージを受けるので、3~4日に一回のペースで使用するので構いません。
入れ歯以外の自分の歯も忘れずに!
入れ歯だけを丁寧に洗うのではなく、残っている自分の歯も丁寧に洗いましょう。
細かい部分など、洗いにく部分があると思いますが、そのような時は歯科医師に相談し、それに合ったブラシを紹介してもらうようにしましょう。
認知症になると困ったできごとが起こる!?
認知症になると、正しい入れ歯の扱いができなくなる可能性があります。
例えば…
〇食事中にも関わらず、外して食べようとする。そして、外した入れ歯をテッシュに巻いたり、ポケットに入れてしまい紛失してしまうこともある
〇食事の後、入れ歯について残渣物を口にすることがある
〇入れ歯の手入れをさせてくれない
〇歯科医に口の中を見せるのを拒む
などがあります。
このような出来事があり、困る方も多いかと思いますが、そのようなケースでは歯科医だけでなく、認知症の専門医に相談することも大切です。
特に注意が必要なものとして、入れ歯を吞み込んでしまうことがあります。
入れ歯が紛失してしまい、どこを探しても見つからない場合は、呑み込んでしまっている可能性があります。(実際そのような事例も報告されています)
そのような時は、耳鼻咽喉科の受診を迅速に行い、身体の中にないことを確認しましょう。
おわりに
入れ歯は一度作ったらそれで終わりではありません。
メンテナンスをして、常に本人に合った入れ歯にしておく必要があります。
また、適切なお手入れをしなければ、入れ歯の寿命を短くしてしまうこともあるので注意が必要です。
今回解説したのは、一般的なメンテナンス・お手入れであり、個々の状況により変わってくるでしょう。そんな時は歯科医に相談しましょう。