筆者が訪問介護に携わっていたとき『介護保険のサービスを受けているけど足りない部分がある』という方は少なくありませんでした。
また年齢や疾患などにより、要介護認定を受けられず、困っているのにサービスが受けられないという方もいらっしゃいました。
そんなときに利用を検討していただきたいのが、保険外サービスです。
保険外サービスは介護保険と併せて利用することもできるため、現在国の主導で双方のサービスを併用する『混合介護』が推進されています。
そこでこの記事では、混合介護とはどんなことなのか、保険外サービスにはどんなメリット・デメリットがあるのかなどを詳しく解説します。
混合介護とは
混合介護とは、要介護認定を受けた上で利用できる介護保険サービスと、介護認定を受けていなくても利用できる介護保険外のサービスを同時に利用することです。
なぜ混合介護が推進されているのか、その原因をご紹介しましょう。
制約の多い介護保険サービス
介護保険サービスは、厳密なルールの下で運営されているサービスのため、利用者にとっては制約が多いと感じることがあります。
特に要介護認定を受けていないとサービスが提供できないというルールは、サービスを必要としているのにサービスが受けられない人が存在するという現状の課題を浮き彫りにしています。
年齢・疾患が介護保険の認定基準に達していない場合は、介護保険サービスを受けることができません。
また介護保険サービスには、要介護度に応じて決められた単位(時間)があるため、生活全般を支えることは難しいといえるでしょう。
利用者目線の介護サービスの実現
介護保険サービスの課題を解決するべく、利用者目線で介護サービスを提供しようという目的で作られたのが、介護保険外サービスです。介護保険の認定は必要ないので、誰でも利用することができるメリットがあります。
また介護保険では認められていないサービスも提供できるため、本当に必要な人が必要なときに利用できるサービスです。
費用は自己負担になってしまいますが、QOLを高めるためにも、今後需要が大きく伸びるサービスだと言われています。
保険外サービスのメリット
保険外サービスには、介護保険サービスにはないメリットがあります。保険外サービスの主なメリットを3つご紹介しましょう。
家族の負担が軽減できる
保険外サービスは、介護をしている家族の負担を軽減できるメリットがあります。
家族に要介護者がいる場合、誰かが介護を担当しなければならず、場合によっては介護が原因で仕事を辞めたり、学校へ行けなくなったりするケースもあります。
保険外サービスは、見守りや通院介助、家事代行などを請け負ってくれるため、『誰かがいなければいけない』『誰かが付き添わなければいけない』といった家族の負担を、大きく軽減してくれるのです。
ニーズに合ったサービス提供ができる
介護保険のサービスは、自立を目的としたサービスとされていますが、厳密なルールに則って運営されています。
サービスの利用条件や種類に制限があるため、必ずしもニーズに合ったサービスとはいえないことも少なくありません。
保険外サービスは、介護保険では提供できないサービスを提供してくれますので、利用者の方のニーズにあったサービスを受けられるメリットがあります。
特に要介護認定を受けていないけれど、生活の支援が必要という方や、介護保険のサービスでは提供できないと言われたことをして欲しいというような場合は、保険外サービスには大きなメリットを感じることができるでしょう。
QOLの向上が見込める
QOLとは、『Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)』の略語で、『生活の質』や『生命の質』と定義されています。
介護の世界では、QOLの向上が目的の1つとされていますが、現状の介護保険サービスでは、完全だとは言えません。
QOLとは、生きていくうえでの生命の幸福や満足を意味しています。自分らしく充実した生活を送ることを目的とした場合、保険外サービスは高齢者の生活になくてはならないサービスといえます。
保険外サービスのデメリット
メリットの多い保険外サービスですが、反面デメリットも存在します。どんなデメリットが考えられるのか、3つのポイントをご紹介しましょう。
費用負担が大きい
保険外サービスは全額自己負担となるため、費用の負担が大きいことがデメリットです。
希望を叶えるために、あれもこれもとサービスを選択してしまうと、費用が膨大になってしまう危険性があります。
自立支援を妨げる恐れがある
介護保険サービスでは、自立した生活を行うために必要なサービスを提供していますが、保険外サービスは利用者の方から希望のあったサービスを全て提供します。
便利だから、楽だからと依存度が高くなってしまうと、自立支援を妨げる可能性があり、保険外サービスのデメリットともいわれています。
悪質な業者の被害に遭う可能性がある
保険外サービスには、さまざまな事業者が参入しています。
自治体や社会福祉協議会などの公的機関以外にも、民間の業者も多いため、中には悪質な業者が存在することも事実です。法外な金額を請求されたり、十分なサービスの提供がされなかったりする事例が、全国規模で報告されています。
個々で契約を選択するサービスである以上、詐欺の被害に遭う可能性があることは、保険外サービスのデメリットといえるでしょう。
上手な保険外サービスの利用方法とは?
保険外サービスは、単体の利用だけではなく、混合介護として利用もできるため、非常に魅力的なサービスです。
しかし、保険外サービスにはデメリットも存在し、利用前に注意しなければいけないポイントもあります。
保険外サービスを上手に利用するためにはどうすれば良いのか、3つの注意点を解説しましょう。
本当に必要なサービスを見極める
保険外サービスを検討するときには、本当に必要なサービスかどうかを見極めて依頼するようにしてください。
便利だからと言って回数やサービス内容に制限なく依頼してしまえば、自己負担額は相当な金額になってしまいます。加えて、高齢者の方の自立を妨げてしまう可能性も否定できません。
利用前に課題をピックアップし、本当に必要なサービスを見極めてから依頼するようにしましょう。
担当者との相性を重視する
保険外サービスは、家事代行とは異なり、介護の知見があるスタッフが派遣されます。利用者の方との相性は十分にチェックしてください。
筆者が訪問していた利用者さんの中で、保険外サービスを利用されていた方がいらっしゃいました。
よくお話されていたのは『〇〇サービスの△△さんは仕事が丁寧』『◇◇さんは合わないから変えてもらった』というスタッフの評価です。その方は非常にはっきりされている方だったので、合わなければ担当スタッフを変更してもらっていましたが、中には我慢してしまう方もいらっしゃいます。
スタッフとの相性はサービスの質にもつながりますので、相性なんてと思わずに、お互いが気持ちよく過ごすためにも大事にしたいポイントです。
できる限り契約や支払いは家族が行う
保険外サービスを契約するときや、支払いを行うときは、できる限り家族の方が対応する方が良いでしょう。
近年は高齢者を標的にした詐欺事件が多く起きています。
しっかりしているから大丈夫と思わずに、本当に信頼できる業者かどうかは、家族も一緒に判断することをおすすめします。
まとめ
介護保険サービスは、制限が多く、内容的に不足することが考えられます。
QOLを向上させ、自分らしい生活を行うためには、混合介護=保険外サービスの利用も検討すると良いでしょう。
保険外サービスはメリットばかりではありません。デメリットも存在することを理解した上で、必要なサービスや業者を見極めて利用することが、上手な利用方法といえます。
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