在宅介護は、限られた資源とスペースで行わなくてはいけません。
施設のように機械や道具が揃っているわけではないので、自ら工夫をして、介護負担を減らすことが大切です。
介護グッズは、介護をする側の負担を軽減するだけではなく、介護をされる方にとっても、快適性や安心を得ることができます。
そこでこの記事では、筆者の介護体験に基づいて、在宅介護で便利だった本当に使える介護グッズをご紹介します。
在宅介護における介護グッズの重要性
介護グッズは、在宅介護においてなくてはならないものです。
なぜ在宅介護で介護グッズが必要になるのか、その重要性を解説します。
①介護負担を軽減する
介護グッズを上手に使うことで、介護の負担を軽減することができます。
- 汚れを落とす
- そもそも汚れないようにする
- 手間を省く
在宅介護は、とても重労働ですし、気も使います。
例えばお薬カレンダーは、1週間・1ヶ月など、飲み忘れがないように朝・昼・夕の薬管理が一目瞭然でできますし、ウェットティッシュは、トイレ・居室・ベッド周りなどに複数用意しておくと、汚れてしまったときにすぐきれいにできます。
その都度手間がかかると、やらなければいけないことが増える一方で、負担ばかりが大きくなってしまいがち。
便利な介護グッズは、介護者の負担を軽減するために、非常に有効です。
②要介護者の不快・不安を軽減する
在宅介護は、要介護者の方が不安を抱えたり、不快を感じてしまうことも少なくありません。
筆者は父親と母親の介護経験がありますが、二人とも口をそろえて言っていたのが
「病院(施設)は安心。いつでも誰かがいてくれるから」
食事・排泄・清掃・着脱…どれ一つをとっても誰かの力を借りなければいけない状態というのは、要介護者の方にとっても不安や不快が付きまとうのです。
コールボタンなどがあれば、何かあったときにすぐ家族に知らせることができますし、介護用の洋服や靴などは、要介護者の方向けに作られているので、着脱が非常に楽にできます。
施設や病院のように設備は整っていなくても、介護グッズを上手に使うことで、不安や不快を軽減することが可能です。
③安全・安心を担保する
介護グッズは、安心や安全を担保するという目的もあります。
- シャワーチェアー:入浴中の事故や身体の負担を軽減する
- 介護用ベッド:要介護者の状態に合わせた利用が可能・身体介護の負担を軽減し、要介護者の安楽な体勢を保持できる
- ドリンクタイプのゼリー:誤嚥を減らし、服薬の負担を減らせる
在宅介護は、限られた時間の中でさまざまなことを行わなければいけません。
介護者が一人の場合は、本当に大変です。
要介護者・介護者双方が、安全で安心な生活が送れるように、介護グッズは役立てることができます。
体験談・在宅介護で本当に便利だった介護グッズ7選
介護グッズにはさまざまな種類があります。
中でも、筆者が実際に介護で使用した際に、とても便利だった介護グッズの体験談をご紹介しましょう。
シャワーチェア
筆者の父親は肺気腫、母親は脊椎側弯症と複数のガンで要介護認定を受けていました。
母親は入浴が好きでしたが、父親は体勢の変化で息が苦しくなり、入浴をとても嫌がっていました。
そんな状態を少しでも良くしようとケアマネジャーさんが提案してくれたのが、シャワーチェアーです。
シャワーチェアーはレンタルはできないので、購入する必要がありますが、非常に便利なグッズでした。
- 肘置きが付いていて体制を維持できる
- U字溝があり座位のまま局部が洗える
椅子の高さも少し高めの物を購入したので、腹部を圧迫したり、膝を大きく曲げ伸ばしする必要がなく、介護者にとっても安心して介助することができました。
少々場所を取るというデメリットはありますが、狭い浴室だからこそ、シャワーチェアーは事故防止に必要です。
介護用ベッド
介護用ベッドは、レンタルで使用が可能な介護用品です。
脊椎側弯症で臥位(上向き)の姿勢が取れなかった母にとって、介護用ベッドで角度をつけることと、エアーマットで衝撃を和らげることができたのは、痛みによる睡眠不足を解消することに役立ちました。
父親はベッドで食事を摂っていたので、介護用ベッドとサイドテーブルの利用により、食事前に体を動かして息苦しくなってしまうという問題点を解決できました。
頭部と脚部が別々でリクライニングするので、介護者の状態に合わせて使用することができ、手すりなどもあるので、落下の心配もありません。
購入するとかなり高価なので、サイドテーブルやマットなどとセットでレンタルするのがおすすめです。
お薬カレンダー
お薬カレンダーは、近年薬局などでも販売している服薬管理のグッズです。
筆者が使用していたのは、1週間・1日3回のタイプでした。
処方箋の多さに驚いた薬局の薬剤師さんが進めてくれたもので、飲み忘れの管理にとても役立ちました。
壁にかけて使用すれば場所も取らず、紛失や誤飲の危険性もありません。
薬局によっては無料で提供してくれるところもありますし、100円ショップなどでも販売されています。
服薬の管理が必要な場合には、ぜひおすすめしたい介護グッズです。
ドリンクタイプのゼリー
ドリンクタイプのゼリーは、服薬時に活用できます。
服薬専用のゼリーもありますが、筆者の両親は「味に飽きた」と言って、市販のドリンクタイプのゼリーを好んでいました。
たくさん飲むわけではないので、カロリーは気にしなくてもOK。
錠剤・粉末など、複数の薬を一度に飲むことができます。
筆者の父親は、10種類・12錠もの薬を飲まなくてはならず、水分で服薬するとお腹が膨れてしまうことが悩みの種でした。
そこで訪問看護師さんが進めてくれたのが、ドリンクタイプのゼリーを使った服薬方法だったのです。
食欲がないときの補食としても利用できるので、常備しておくととても便利です。
ウェットティッシュ
ウェットティッシュは、さまざまなシーンで活用できる究極の介護グッズといっても過言ではありません。
筆者が施設に勤務しているときは、介護の際には常にタオルを使用していたので、自宅でも最初はタオルを使っていました。
しかし、洗濯の手間が異常にかかることが負担となり、少々コスト的にはかかるものの、ウェットティッシュを使い始めました。
排泄の汚れなど清掃の場合はアルコールの含まれたウェットティッシュ、口の周りや身体の清拭にはノンアルコールのウェットティッシュというふうに、分けて使用していました。
使い捨てであること、厚手で生地がしっかりとしていること、水分を含んでいるため汚れが落ちやすいことなどがメリットです。
ドラッグストアやディスカウントストアなどで安く入手することができるので、一度試してみてください。
水のいらないシャンプー
ちょっと体調が悪いから入浴はできないけれど、気分をさっぱりしたい…そんなときには、水のいらないシャンプーがおすすめです。
泡タイプ・スプレータイプ・シートタイプなどがありますが、筆者のおすすめはスプレータイプ。
洗い流す手間が不要なので、ベッドや居室でも使用することができますし、マッサージを兼ねることも可能です。
水のいらないシャンプーは、非常時用としても使うことができるので、用途は介護だけではありません。
価格も1本1,000円程度とお手頃なので、ストックしておくととても便利です。
コールボタン
コールボタンは呼び出しボタンともいわれ、ナースコールと同じ用途として使います。
コールボタンは複数のタイプがあり、要介護度や介護者の状況、生活環境に応じて使用することができるのがメリットです。
- 相互通話可能な居室用のコールボタン
- トイレ・脱衣所などに設置する防水型のコールボタン
- 携帯できるペンダント型のコールボタン
- ベッドに設置するナースコール型のコールボタン
筆者が使用していたのは、相互通話ができる居室用のコールボタンです。
父親の居室がリビングと離れていたこともあって、何かあるときは呼んでもらうようにしていました。
その後、病状が悪化して寝たきりになったときは、ベッドに設置するタイプに変更して使用しました。
在宅介護でも常に見守りを行うというのは、無理があります。
認知症など判断力に問題のある場合を除いては、非常に便利な介護グッズといえるでしょう。
いらなかったかな?と思える介護グッズとは
便利かと思って準備したは良いものの、使い勝手が悪かったり、要介護者が気に入らなかったりすることも多いのが介護グッズのデメリットです。
実際に用意したのに使わなかった、いらなかったのでは?と思った介護グッズを、2つご紹介します。
歩行器
立位が安定しない父親用に準備したのが歩行器でした。
介護当初はトイレも自力で行けていたので、少しでも安定すれば…と思ったのですが、広くない家の中で使うには、少々不便でした。
また完全なバリアフリーではなかったため、行動範囲が限られてしまったのも事実です。
父は入院時に使用したことがあったので、便利だと思っていたようですが、ほとんど使わなかったので、レンタルを解約しました。
広い廊下や十分な幅のある自宅なら問題はないようですが、我が家では少々持て余し気味でした。
シルバーカー
腰・背中の痛みを抱えていた母の散歩や買い物用にシルバーカーを購入しました。
買い物に行くと、必ず買い物カートを押していた母親を見て、歩行の助けになるのではと考えたのです。
母親はとても前向きな性格だったので、「動けなくなると困るから」と毎日散歩をしていました。
散歩に同行できる日が少なかったので、安心をして欲しいという気持ちもあったのですが…。
平坦な道は良かったものの、筆者の自宅周辺は坂道が多かったのです。
普段は気にならないような傾斜も、車輪のついたシルバーカーは思ったように動かず、母親にはかえって不安に感じたとのこと。
何かあっては危ないと、知人に譲ってしまいました。
まとめ
在宅介護は、介護者にとって負担の大きなものです。
介護グッズをうまく利用することで、安心や安全を得られ、負担を軽減することができます。
レンタルできるものとできないものがありますので、確認が必要ですが、可能な範囲で取り入れるように工夫してみましょう。