血圧や体温、脈拍数や呼吸数などはバイタルサインといって、高齢者の身体的異常を把握するため、容易に測定できます。
しかし、医療機関を受診しなければ実施できない検査なども多数あり、異常値を知ることで更に詳しく異常に気付き、具体的に何が悪いのかまで知り得ることができます。
病院の規模によって、全ての検査設備が整っているわけではありませんが、医療機関で検査を受けることは、とても大切なことなのです。
今回は、高齢者の身体を評価する検査の種類について解説していきます。
画像検査について
画像検査といっても様々な種類があります。
レントゲン撮影
健康診断などで経験した人も多いのではないでしょうか?
放射線のひとつであるX線を使用した画像検査の中で、最も一般的な検査方法です。
そのため、骨折や骨の異常、胸部の疾患、歯科診療で多く使われています。
レントゲン撮影は体をX線照射装置とフィルムの間に置き、フィルムに対してX線を照射して画像化する仕組みです。X線が透過して焼き付けらた画像は白黒で表されます。
皮膚や内臓などX線が透過しやすい部分は黒く、骨など透過しにくい部分は白く写ります。
普通は可視化されにくい消化管や血管なども、造影剤を入れることによって撮影ができるようになるため、これを造影X線写真と呼び、通常のレントゲン撮影を単純X線写真と呼び分けることもあります。
乳がん検査の際に使用するマンモグラフィは乳房専用のX線撮影装置です。
CT(コンピュータ断層撮影)
X線を使用したレントゲン検査の一種で、線源と検出器が回転することで体の全方向からX線が照射され、コンピュータ処理によって断面画像が得られます。
肺や消化器、骨などの検査に向いています。
近年では、3Dにも加工ができるようになりました。
MRI(核磁気共鳴画像法)
X線ではなく、強力な磁石と電波によって画像を得ます。
CTと同様に断面画像で診断しますが、目的に応じて特定の構造を目立たせることができるのが特徴です。
レントゲンと違い、被爆はありませんが、ペースメーカーなど磁力の影響を受ける金属が体内にある人は受けることができません。
超音波検査
人には聞こえない高い周波数の音波である『超音波』を体に当て、その反射を映像化する映像化する画像検査法のひとつです。
エコー検査とも呼ばれ、エコーと略されます。
超音波を発生させるプローブを体に当て、体内に発信された超音波の反射波(エコー)を受信してコンピューターで画像化して臓器などを観察します。
超音波は液体や固体に伝わりやすく、気体には伝わりにくい特徴があるため、内部に空気やガスを含む消化管、あるいは表面の反射が強い骨内部の検査には向きません。
逆に、固い骨に囲まれた頭蓋のような部分以外、体のほとんどがエコー検査の対象になります。
内視鏡検査
内視鏡とは、先端に小型カメラやレンズが装着された管を体内に入れ、臓器の内側を見ることができる医療機器です。
日本で開発された胃カメラとして広く知られるようになったことから、現在も胃カメラという言葉は内視鏡検査の俗称となっています。
胃カメラは、その名の通り、直接カメラを胃の中に入れ、レントゲンのようにフィルム撮影するものでしたが、今では内視鏡によって体内をリアルタイムに観察できるのが特徴で、写真やビデオ画像を残すこともできます。
心電図について
心臓の働きをグラフ化するのが心電図です。
血液循環の要であり、生命活動の原動力ともいえる心臓の検査の基本です。
心電図は、体の表面に電極をとりつけ、心臓の働きをグラフの形にあらわすもので、電極をつける場所によって心電図の種類(記録法)が細かく分類されます。
最も標準的なものが、健康診断でもみられる12誘導心電図です。
血液検査について
人の体重の約1/13を占めるといわれている血液は、半分以上が血漿で、血漿成分の約90%が水分です。
残りの45%が細胞成分で、赤血球・白血球・血小板が含まれています。
血液検査はこれらを分離してから行われるのです。
血小板
赤血球と同じく骨髄で作られる血小板には、傷口などかで血液を凝固させて止血する働きがあります。
検査においては、血小板数から止血傾向を調べることができます。
採血した血液の凝固時間や傷口からの出血時間から、測定する方法もあります。
白血球
リンパの組織で作られるのが白血球です。
赤血球や血小板と異なり、核をもつ細胞であることが特徴です。
白血球は、顆粒球、単球、リンパ球から構成されており、顆粒球と単球は骨髄で、リンパ球は主としてリンパ組織で産生されます。
白血球の働きは、体内に侵入した最近や有害物質への殺菌作用で、好中球に貪欲・殺菌する作用があります。
また、免疫機能も担っており、その中心となるのがリンパ球です。
白血球の数は年齢の影響を受けませんが、個人差が大きく、短時間で変動します。
疾患によっても大きく増減するため、その数値から疑わしい疾患が予想できます。
血液検査で分かる病気について下記で解説しています。
尿や便の検査について
身近な検査である、尿と便で検査をすることもできます。
尿の検査について
健康診断の最も一般的なものであり、簡単に検査ができる尿検査は、内科の診断においても主要ともいえるものです。
泌尿器科に行くと毎回のように行うことも珍しくありません。
尿は体内の老廃物を排出する役割があり、その成分や量は病気などによって変化するのです。
そのため、尿の中の成分の物理的性質、科学的性質、形態学性質などを調べることで腎臓や尿路系の疾患のほか、心臓・肝臓・内分泌系の疾患を知ることができます。
具体的には以下の通りです。
尿検査で分かること
◎尿糖
血液中の糖濃度が160~180mg/dLを超えると陽性となり、糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎性糖尿病などが疑われる。
◎尿蛋白
腎機能が低下すると、本来は通過しないタンパク成分が腎臓の糸球体を通過してしまう。2+以上だと異常と判定される。
◎尿潜血
試験紙に反応がある場合は、尿が通ってくる間のどこかで出血があると考えられる。2+以上だと以上だと判定され、尿路結石、膀胱炎、糸球体腎炎などが疑われる。
◎尿比重
尿比重が重い場合は糖尿病、脱水症などが疑われる。低い場合には腎不全、尿崩症などが疑われる。
便の検査について
摂取した食べ物が体内で消化・吸収されないで、残渣が主となって排出される大便を用いて調べるのが便検査です。
胃や腸をはじめ、外部泌臓器などの消化器疾患が疑われる場合に行われます。
食中毒やピロリ菌などの細菌の有無、回虫・ぎょう虫などの寄生虫の有無の他、潜血の状態などまで調べることができます。
タンパク質の消化管への流出、脂肪による脂質の消化不良などを調べることも出来ます。
特に潜血は、消化器官からの目に見えない出血もわかるため、大腸がんをはじめとする様々な疾患を知ることができるのです。
また、色や硬さ、色調など見た目からの観察だけでも多くの情報を得ることができます。
目視の場合、粘液や膿、潜血などがポイントです。上部消化管からの出血の場合、便は黒色となります。