2022年は異例の早さで梅雨が明け、日本列島は毎日体温並みの暑さに見舞われています。
不要な外出は控えるようにテレビでは情報発信を行っていますが、熱中症の恐ろしさは家の中にいても発症する可能性があることです。
「真夏ではないから」「家の中にいるから」というのは安心材料にはなりません。
特に高齢者は汗をかきにくくなっているため、熱中症の危険性が高いといわれています。
そこでこの記事では、高齢者の熱中症に関する情報をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
高齢者の熱中症は重症化しやすい
毎年夏になると、熱中症に関するニュースが報道されます。
中でも痛ましいのは、高齢者が熱中症で亡くなったというニュースです。
熱中症は子供でも若い世代でも起こり得るものですが、高齢者は重症化しやすい傾向があると言われています。
熱中症の主な症状
熱中症にかかると、次のような症状が現れます。
軽度 | めまい 立ちくらみ 筋肉のこむらがえり 手足のしびれ 気分不快 |
中等度 | 頭痛 吐き気 嘔吐 倦怠感 身体に力が入らなくなる |
重症 | 高体温 意識の消失 全身の痙攣 まっすぐに歩いたり走ったりできない 呼びかけに応答しない |
軽度の状態から改善すれば受診は必要ないといわれていますが、中等度以上の症状や軽度の症状がまったく改善しない場合は、すぐに受診が必要です。
約3割が室内で発症
総務省消防庁の調べでは、熱中症で搬送された患者は3割が室内で発症していることがわかっています。
外で作業・仕事・運動をしていたからなるのではなく、室内で過ごしていたにもかかわらず、救急搬送される中等度以上の熱中症を発症しているのです。
「電気代がもったいない」「自分一人だからエアコンはつけなくても良い」などと、高齢者の中には過度な節約志向を持つ方が多いことも要因とされています。
熱中症患者の半数が高齢者
総務省消防庁のデータでは、2018年~2021年の統計で、熱中症で搬送された高齢者の割合は48~58%と報告されており、その数は半数にも上ります。
2008年~2009年では40%前後、2010年~2017年では40~50%だったのに対し、ここ数年で増加傾向にあることがわかります。
総計では男性よりも女性の方が患者数が多く、高齢者の熱中症による死亡者数は、2020年に全体の87%です。
高齢者が熱中症にかかると重症化し、命の危険があることがわかる結果だといえるでしょう。
高齢者が熱中症になりやすい理由
高齢者は熱中症のリスクが高くなりますが、それには理由があります。
どんなことが考えられるのか、3つのポイントをご紹介しましょう。
暑さを感じにくい
人間は年を重ねることによって体温の調節機能が低下します。
暑さを感じにくいことから、暑さをしのごうとする行動を起こすことも少ないため、熱帯夜でもクーラーをつけないなど、自ら体温を下げる行動を起こしません。
通常は暑ければ汗をかくことによって体温を下げることができますが、高齢者の場合は体温の上昇に対応できず、体温を下げることができないために熱中症になりやすいのです。
体内の水分量が少ない
高齢者は、若い世代の人たちよりも体内の水分量が少ない傾向があります。
さらに体の老廃物を排出する際にたくさんの尿を必要とするため、結果的に体内の水分量が減ってしまうのです。
水分は体内の温度を調節するのに不可欠なため、もともと保持している水分が少ないとちょっとした発汗などでも熱中症のリスクは高まってしまいます。
のどの渇きを自覚できない
高齢者は、のどの渇きを自覚するのに時間がかかり、知らないうちに脱水症状になっていたということがあります。
発汗などで体内の水分量が少なくなれば、のどの渇きを覚えて水分補給をしますが、高齢者はのどの渇きを感じる機能が低下しているため、熱中症のリスクが非常に高くなるのです。
家の中で過ごしていても、発汗・尿・涙などで体内の水分は排出されます。
意識的に水分補給をしないと、脱水症状が長く続き、熱中症になりやすい条件が揃ってしまいます。
3分でできる!高齢者の熱中症対策5選
高齢者が熱中症になりやすいリスクは、加齢に伴うものだけではなく、意識的に我慢をしたり無理をしてしまったりすることも含まれます。
熱中症は命にもかかわる重大な病気です。
今からすぐにできる熱中症対策を紹介しますので、ぜひ取り組んでみてください。
水分補給を意識的に行う
高齢者は意識的に水分補給を行いましょう。
ポイントは『のどが渇いた』と自覚する前に水分を摂ることです。
熱中症対策に有効とされている飲み物には
- 経口補水液
- 麦茶
- スポーツドリンク
などです。
冷たい飲み物が苦手という方は、温かい飲み物でも問題ありません。
飲み込みに不安のある方は、ゼリー状のタイプがおすすめです。
塩分を摂取する
熱中症対策で水分を多く摂っていると、血液中の塩分が減少し、熱中症の症状を引き起こすことがあります。
水分だけではなく、塩分を意識的に摂取するようにしましょう。
近年では塩分補給用の飴やゼリーなどが市販され、手軽に熱中症対策ができるようになっています。
食事でも漬物やみそ汁などで塩分を摂ることは可能ですので、水分と同時に塩分の補給も意識してください。
室内の温度を28℃以上にしない
近年の夏の暑さは異常です。
一昔前は日中は暑くても、夜になれば気温が下がって過ごしやすくなりましたが、最近は室温がずっと28℃を下回らない…ということも珍しくありません。
「電気代がかかるから」とエアコンを利用しない高齢者がいらっしゃいますが、室温が28℃を超えないように心がけると、熱中症のリスクを低くすることができます。
人間の体温に近い暑さですから、「電気代がもったいない」と我慢ができるレベルではないことを理解しましょう。
もったいないと我慢をして、命の危険のある熱中症にかかってしまっては本末転倒です。
外出は控えめにする
高齢者の中には運動を日課として、散歩などをされている方も多いはずです。
しかし夏の暑い時期には、できるだけ外出は控えめにしましょう。
買い物や通院など、必要な外出の際には帽子・水分などを携帯し、休憩を取りながら動くようにしてください。
散歩などは朝夕の比較的気温が上がりきっていない時間帯に行うのがベストです。
室内ではマスクを外す
コロナ禍において、マスクは私たちの生活に欠かせないものになってしまいました。
しかしマスクを常時着用していると、体温拡散機能が正常に働かなくなり、熱中症のリスクが高まることが報告されています。
外出時のマスク着用は仕方ないですが、室内(特に自宅)にいる場合は、マスクを外しましょう。
屋外でも他人との距離が2m以上離れていれば、マスクは不要です。
夏の暑い時期は、マスク着用にも気を配る必要があります。
まとめ
夏の暑さは年々激しさを増し、対策をきちんと取らないままでいると、熱中症のリスクが高くなってしまいます。
特に高齢者は熱中症になりやすく、重症化もしやすい傾向にあるため、自分自身でできる対策はどんどん生活に取り入れましょう。
高齢者と一緒に生活している家族の方は、水分・塩分補給や室温の管理などについて、声かけをしてあげることも重要です。
長年の意識を変えることは難しいかもしれませんが、熱中症の恐ろしさを知り、意識的に改革をしていく必要があるといえるでしょう。