介護保険制度において、サービスを利用しようとする場合、サービス計画書(ケアプラン)の作成を行なう必要があります。
ケアプランは一般的に介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するもので、家族や本人でも作成することはできますが、専門知識が必要です。
超高齢社会の到来に伴い、要介護認定を受けて介護を必要とされる人も増加傾向にあるなか、国の財源を圧迫する一つとなっています。
ケアプランをケアマネジャーが作成する場合、利用者の負担は0円だったのが、一部負担しなければならないという話が出ています。
今回は、その真相に迫っていきたいと思います。
そもそもケアプランとは何か
ケアプランとは、個々人のニーズに合わせた適切な保険・医療・福祉サービスが提供できるように、一般的にケアマネジャーが中心となり作成する介護計画のことです。ケアプランは、
①利用者のニーズの把握
②援助目標の明確化
③具体的なサービスの種類と役割分担の決定
などの段階を経て作成され、公的なサービスだけでなく、インフォーマルな社会資源(例えばボランティアや近隣住民など)も活用し作成されるものです。
なお、ケアプランは一定期間の計画であり、利用者の生活ニーズが等に変化があれば、新たな援助目標を設定し、ケアプランを作成することになります。
ケアプランの一例です。
実際に介護保険サービス(デイサービス等)を受ける場合には、このケアプランに沿ってサービスが提供されるので、必ず作成する必要があります。
サービスの開始には、利用者やその家族のサイン・押印などが必要です。
現在のケアプラン作成は無料
現在(令和4年9月現在)ケアマネジャーが作成するケアプラン作成料金は無料です。
では、ケアマネジャーがボランティアでケアプランを作成しているかというと、そうではありません。
ケアプランの作成料の作成や、各種関係との報告・連絡・調整、家族とのやり取り、地域との連携などは公費から、各事業所(居宅介護支援事業所等)に支払われています。
例えば、介護保険施設などの特別養護老人ホームや、デイサービス、ショートステイなどは利用者の負担が通常1割負担(所得などによって2・3割負担もあり)となり、残りの9割が公費から支払われ合計10割が収入となります。
ケアマネジャーが作成するケアプランは、1割の負担もなく10割全てが公費から支払われ、結果として利用者の負担は『0』(無料)となっているのです。
ケアプランの有料化の情報はどこから?
2022年4月13日、財務省は国の財政を話し合う会議(審議会)が開催されました。そこで、これからの社会保障制度の改革についても話し合いがなされました。
介護の分野においては、居宅介護支援のケアマネジメントについて議論され、要介護の高齢者らが積極的にサービスを使えるように10割給付としている現状を問題視したのです。
「サービスの利用が定着した昨今、他のサービスで利用者負担があることも踏まえれば、利用者負担を導入することは当然では?」と主張があり、次の第9期(2024年度〜2026年度)からの実現を強く求めたのです。
このように、財務省からの声でケアプランの有料化への話が加速しているのです。
インターネット検索でも、様々な立場からの意見を調べることが出来ます。
『ケアプラン 有料化』で検索してみて下さい。多くの情報がヒットします。
有料化になるとどうなる?
介護保険制度が施行されたのは2000年でした。
それまで、20年以上、ケアプランは利用者負担なしの無料で作成が行われていました。これが有料になるとどのようになるのでしょうか?
次は、有料化にすることでどのようなデメリットとメリットがあるのかをまとめてみました。
有料化のデメリット
これまで気軽にケアマネに相談できたいた介護について「お金がかかる」という理由で足が遠のく可能性があります。
そうなると、予想できると思いますが、適切な介護保険利用ができない人が増える可能性があるでしょう。
居宅介護支援事業所としても「無料だからどんどん相談してください」という文言が使えなくなってしまいます。
有料化のメリット
お金を出して、ケアプランの作成をしてもらうわけですから、利用する側の意識も随分変化が起こるでしょう。
例えば、担当ケアマネジャーが計画・立案したプランに対して、慎重に目を通すようになり、分からないことや不満に思うことなど、尋ねやすくなると思います。
居宅介護支援事業所としては、責任を存分に持ったケアプラン作成をしてくれることが期待できるでしょう。
これからの課題
居宅介護支援のケアプランは有料だという話が出ていますが、施設ケアプランについては、無料のままなのでしょうか?
この件に関しての情報はなく、無料のまま継続される可能性があるでしょう。
もし有料になるのであれば、『加算』という形でこれまでの施設の利用料金に上乗せされる可能性があるかもしれません。
料金が有料になれば、一日単位なのか月単位なのかも注目するべきところです。
これまで無料だった時代は、月に1日でも実際の利用があれば(実績)、公費から10割支払われていました。
これが継続するのであれば、利用する側は当然不満の声が出るでしょう。日割り計算なのか、月単位の計算なのかも課題になってくるでしょう。
有料化になると実際の料金はいくら?
多くの人の場合、1割負担ですから、1,300/月ほどになるでしょう。2割、3割負担の人はそれ以上になります。
1,300円・・・この金額を安いと思うか、高いと思うか、利用する人に感覚の違いがあると思います。
しかし、ひとつだけ言えることは、1,300円ほどの金額を負担してもらわなければ、国の財政状況がピンチになっているということなのです。
有料化賛成派は少ないのが現状
こうした議論に対し、日本介護支援専門員協会(日本ケアマネ協会)は、反対の意向を示しています。
特に、複数の事業者からの説明を義務付ける財政審の案について、日本ケアマネ協会は2019年4月の意見書で
「ケアマネジャーの6割近くは利用者から費用の比較を求められていない」
「サービス事業所の選定に際して、費用が影響していないと考えるケアマネジャーは半数程度に及ぶ」
とする緊急に行われた調査を引用し
①「加算を算定しない事業所の方が安くていい」という誤解を与え、利用者による正当な事業者の評価を阻害する可能性があるのではないか?
②利用者の多くは複数の事業所の紹介を求めていないのではないか?
③利用者の事業所選択で費用負担は重視されていないのではないか?
という声をあげているのです。
これから本格的に国の議論が加速していくと思いますが、この記事を読んでいる方は、ケアプラン作成有料化に賛成でしょうか?それとも反対でしょうか?
注目して見守っていく必要があるでしょう。