介護施設に入所して「こんなはずじゃなかった」と感じるケースがあります。
その原因として、施設側(事業所側)の事前の説明不足と、利用者側の知識不足があります。
利用する側に施設を選択する自由はあるといいますが、実際のところ一度入所してしまった施設を退所して、新しい施設を探すことは大変なことです。
施設利用を失敗しないために、今回は介護施設に多いトラブルをご紹介します。少しでも不安に思うようなことがあれば、契約する前に施設に説明を求めるようにしましょう。
転倒・転落することが多い
介護施設に入所したからといって、100%の安全を保障するものではありません。
施設の事故で全国的に最も多いのは転倒・転落であり、いくらスタッフが見守りを行っているからといっても、それを完璧に防ぐことは難しいのです。
例えば、独歩で歩く認知症の高齢者が自室で過ごしていたとします。すると、テレビのコードに足を引っかけて転倒することがあります。
また、身体拘束が禁止されている介護保険施設においては、ベッドのサイドレールのないところから体が落ちてしまうという転落事故もあります。
レクリエーションの風船バレーに集中している場合などには、車椅子からバランスを崩して転倒することも考えられます。
利用者ひとり一人の心身状態や疾患によって、起こりうる可能性が高いものがあり、その説明は契約時にされると思います。そして、事故防止(転倒・転落)に対する取り組みの説明もあるでしょう。
その際には、どのような体制で事故防止に取り組んでいるかよく聴いておく必要があります。
万が一、転倒・転落してしまい、手術や入院をする事態となったとしても、100%施設側に過失が認められるケースは難しいのが実状です。
例えば、
■スタッフが故意に歩行中の利用者にぶつかって転倒させた。
■危険である行為をそのままスタッフが放置してしまい、転倒・転落させてしまった。
■危険リスクが高い情報があり、理解しているにも関わらず対応を取らず転倒した。
などのケースは施設の過失が認められることもあります。
※上記のケースは例であり、必ずしも過失が認められるという意味合いではありません。
転倒・転落を回避方法
原則的なことですが、転倒・転落の再発防止は施設側は常に行っています。
それでも、発生することがあります。
家族のできることとしては、情報の提供です。
例えば、
■自宅で過ごしていた時にポータブルトイレを利用するとき、よく転倒していた。
■右手に力が入りにくく、手すりを掴みにくい。
■すり足歩行が気になっている。
など、どのような情報でもいいので、本人の情報を伝えるようにするといいでしょう。
モノを紛失や破損してしまうことがある
認知症の利用者はよくものを失くします、なかでも一番多いのが義歯です。
さっきまで、口の中に入っていたと思ったら、次の瞬間には口から出してチリ紙に包み車椅子の横に置いていた・・・
このようようなケースは、とても多く「無い!」と気が付いた瞬間、スタッフが一生懸命探すことが多いです。
破損で多いモノとして、やっぱり義歯が多いです。
義歯は濡れた状態や、洗浄剤が付いた状態で触ることが多く、手元から滑り床に落ちて一部が欠けたり、真っ二つに割れたりというケースもあります。これは、利用者自ら落ちしてしまう場合もあれば、スタッフが誤って落としてしまうこともあります。
施設側の問題になってくるのが洗濯物の紛失です。
例えば、特養の場合、洗濯物は施設内で洗うことが多いのですが、大量の洗濯物を洗うので紛失が起こるのです。
名前を書いているのでは?と思う人もいるかもしれません。
しかし、その名前が消えかけていたり、同じ苗字の人が複数いるにも関わらず、苗字のみしか書かれていないこともあります。
また、紺色の靴下に黒のマジックで名前を書いていることもあり、はっきり分からないことがあります。
紛失・損傷を回避方法
家族としてできることは、分かりやすく、フルネームで大きな字で書くようにします。それでも紛失がある場合は、施設側の問題ですので、それなりの対応をしてもらっても構わないでしょう。
施設に入所している場合、職員が私物を破損してしまうのは回避することは難しいでしょう。契約時などでも連絡があるかもしれませんが、壊れたり、無くなったりして困るようなものは持参しないことが一番です。
洗濯物のトラブルが多い
先ほど、洗濯物が紛失してしまうことを述べましたが、洗濯物のトラブルはそれだけではありません。
ウール100%のセーターを通常通り洗濯してしまい、縮んでしまうことがあります。また、誤って色物の洗濯物にを漂白剤を使ってしまい、まだら模様になったりするのです。
さらに、衣類の損傷があります。
衣類は当然のことながら、日常生活で着用するだけすが、介護が必要になると、どうしても衣類を引っ張ったりすることがあります。
例えば、ベッド上で横になってもらったけど、下すぎたから上に身体を動かす場合や、移乗といってベッドから車椅子に移動する際、身体を抱える場合に衣類に負荷がかかり痛みやすくなるのです。
洗濯物トラブル回避方法
モノと同じように、大切な衣類は持参しないことが第一です。
自宅で生活していても、洗濯物に関しては思わぬトラブルが生じることがありますよね?
ポケットにテッシュが入っていた・・・
ボタンが外れてしまい、紛失した・・・
ボールペンを選択してしまい衣類が汚れた・・・
などです。
スタッフが最大限気を付けていても、洗濯ミスをする可能性があるので、大切な衣類や思い出の衣類は持って行かなようにしましょう。
同室者との人間関係に悩むことが多い
個室ならいいのですが、多床室なら同室者と気が合う、合わないということも多くあります。
トラブルになる原因として
■ラジオやテレビの音量が大きい
■話が長い
■スタッフと利用者との関係を嫉妬する
■そもそも性格が合わない
■臭いが気になる
などがあります。
単純に、部屋を変更してもらったらいいのでは?と考える人もいるかもしれませんが、介護施設は実に複雑が状況が関連し、スタッフが頭を悩まし決定されているのです。
人間関係の回避方法
スタッフに言って解決できるなら、勿論それでも構いませんが、断られるケースもあることもよく理解しておきましょう。
利用料金のトラブルが多い
利用料金が高くて払えない・・・
思っていた金額より高い・・・
料金一覧表で確認したものより請求額が高い・・・
このようなケースがあります。
介護保険施設(老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護医療院)は初期費用が不要ですが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでは、初期費用が必要になり、それもトラブルになる原因の一つになっています。
利用料金トラブルの回避方法
利用料金の一覧表だけで、月々の支払額を検討するのは絶対に辞めましょう。
なぜなら、その一覧表に含まれていない料金があることがあるからです。
例えば、老健なら医療費は含まれた金額ですが、特養では別途必要になります。
また『加算』といって、入所後数か月は余分に費用がかかることもあるからです。
入所する施設に依頼して、具体的に月々いくらの支払い額になるのかを計算してもらい、それを踏まえて判断することが大切です。
個人情報に関するトラブルも・・・
■契約の際に、個人情報を守ると言ったのに、親が施設に入所したことを近所の人が知っていた・・・
■広報誌に親の写真が掲示されて、施設に入所していることが周囲に分かった・・・
■入所しているスタッフがたまたま近所の住民で、個人情報を言いまわっている・・・
このように、知られたくない個人の情報が近所や周囲の人に漏洩することもあります。
業務上知り得た個人情報を、故意に漏らすことは論外ですが、スタッフの危機意識が低く、悪気なく漏らしてしまうこともあります。
これらは、当然のことながら、苦情として施設側に改善を求めても構いません。
しかし、例外的なものもあります。
■家族が親の面会に行ったら、近所の人が入居しており、その家族が近所の人に言っていた・・・
■利用者同士が近所の人で、家族の面会の際、その情報を家族に伝えていた・・・
このようなことは、施設側は関与できるわけでなく、防ぐことができないのです。
それを踏まえた上で入所を検討していきましょう。
個人情報トラブル回避方法
法的に守られる個人情報があれば、そうでない個人情報もあります。
施設入所の有無に限らず、近所付き合いでも個人情報が漏洩してしまうことがありますよね?
施設側が個人情報保護法を守らず、漏洩したときは苦情として訴えるようにし、二度と同じことがないようにしてもらいましょう。