2019年から世界を襲った新型コロナウイルスの感染拡大は、介護においてもさまざまな変化をもたらしました。
当たり前にできていた移動・里帰りなどができなくなり、離れて暮らす家族を遠隔介護する方にとっては、非常に不安な毎日を過ごされているはずです。
すぐに行ける距離ではない、基礎疾患があり重症化の高い要介護者に簡単に会えない…介護におけるジレンマを生んだ新型コロナウイルスの感染拡大には、どのように向き合えば良いのでしょうか?
この記事では、遠隔介護をする方がコロナ禍で実際に起きている事例をご紹介し、活用できるサービスやポイントをくわしく解説します。
【事例】遠隔介護が心配!コロナ禍で家族が抱えるジレンマ
新型コロナウイルスの感染拡大は、介護を受ける高齢者・介護を担う家族に大きな影響を与えました。
実際にどのような事例があったのか、3つのケースをご紹介します。
年に2回の里帰りもできない
Aさんは関東地方に住む40代のサラリーマンです。
実家は東北地方にあり、通常は年に2~3回ほど家族そろって里帰りをしていました。
まだまだ元気だとは言っても両親はもう70代…ガンを患って治療中の父親のことは特に気にかけています。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった年の夏休み、Aさんは実家の両親から思いもよらない連絡を受けました。
『今年は帰ってこなくていい。他県ナンバーの車が止まっているだけで、近所に何を言われるかわからないから』
Aさんは気にしないように進言しましたが、両親が首を縦に振ることはなく、ワクチン接種が終わっていることや陰性証明を持参できることを話しても、里帰りは許されませんでした。
親が高齢でリモートに対応できない
新型コロナウイルスの感染拡大で急速に進んだリモート。
会議や商談、学校の授業などに利用される機会が増え、若い世代の人たちは当たり前のように使いこなしていますが、高齢の方にとっては未知の世界であることが多いようです。
Bさんは九州の出身で、現在は北関東に在住しています。
九州の実家には80代になる母親が一人暮らし。
幸い認知症などの症状もなく元気に暮らしていますが、コロナ禍で里帰りもできず、スマホの通話さえもままならない状況に心配を募らせています。
母親のためにタブレットを用意し、ビデオ通話で使い方を説明したのですが、今一つ理解してもらえず顔を見ての通話ができていません。
「高齢になると機器を使いこなすのが難しくなる。私の母はもともと機械に疎いところがあって…。誰か近くにいてくれれば教えてもらえるんだろうけど、周囲には同じような年代の人しかいないので、なかなかリモートができないので心配ですね。」
若い世代の人にはコロナ禍でも周囲の人とつながることができる手段として活用されたリモートも、高齢の方には使いこなすことが難しいのです。
どこへも出かけられず誰にも会えず…うつっぽい親が心配
都内在住のCさんは、一人暮らしの70代の母親のことを心配しています。
隣県に住む母親は元気だったものの、基礎疾患があることから外出することに神経質になり、趣味だった絵手紙教室や卓球にも参加しなくなりました。
「自分がコロナに罹ったらみんなに迷惑をかける」…人一倍健康に気を使って散歩などをしていたのに、家から出ることを極端に避けてしまうようになったのです。
どこへも出かけられず、仲の良い友達や大切な孫たちにも会うことができなくなって、Cさんの母親はみるみる元気がなくなったといいます。
電話での会話はできるものの、都内に勤務するCさんに会うことはリスクが高いと直接会うことを拒否されてしまい、電話での話もネガティブなものになっていったそうです。
一人暮らしで誰にも会えないことが、認知症やうつ病発症のきっかけになってしまうのではないかとCさんは非常に心配しています。
コロナ禍を乗り越える方法はある?遠隔介護のポイント
3つの事例には、高齢者の特徴やコロナ禍における二次被害などが含まれ、対応を急がなければいけないものもあります。
そこでコロナ禍において遠隔介護している方が抱える課題を解決する方法についてご紹介しましょう。
保険外サービスの活用を検討する
遠隔介護で自分たちが関われない場合は、保険外サービスの利用を検討してみましょう。
介護保険のサービスは要介護認定を受けていないと利用できませんが、保険外サービスであれば年齢や介護認定にかかわらず利用することができます。
- 家事支援や代行
- 送迎
- お弁当の宅配
- 訪問利用
- 認知症の見守り
など、内容は多岐にわたります。
介護保険を利用するわけではないので、費用は実費になってしまうというデメリットはありますが、自分が担ってきた遠隔介護の一端を担うことは可能です。
介護の知識を持ったスタッフが派遣される事業所も多いので、ぜひ検討することをおすすめします。