病院に入院したり、介護施設に入居すると、それぞれの患者や利用者にあった食事が提供されます。
例えば、嚥下状態が悪ければトロミのついた食事の提供。
栄養が不足していれば、少ない量で多くのカロリーを摂取できる栄養補助食品の提供。
咀嚼に問題があれば食べ物を軟らかくして提供したりもします。
それ以外で、療養食というものがあり、健康状態(疾患)によって食べ物を変更するような取り組みがされています。
療養食とは
現在療養中の疾患に対して、適切な栄養状態にすることによって、より疾患の進行を防いだり、改善するための食事のことをいいます。
よく耳にするもので、糖尿病食があると思いますが、他にも・・・
■腎臓病食
■肝臓病食
■胃潰瘍食
■貧血食
■膵臓病食
■脂質異常症食
■痛風食
などがあります。
腎臓病食
腎臓病はその症状によって、食事の内容が違ってきます。
進行する腎臓病(慢性腎不全)では薬物療法が主体になってきます。
適切な食事療法を実施し、腎機能の進行を抑えて、透析をしなくていよい生活ができるようにしていきます。
腎臓病食は主に、腎機能が30%以下に低下した状態の人に対して実施されます。
低たんぱく食、減塩、高血圧管理が重要で、腎臓病の悪化を抑制することが可能です。
肝臓病食
肝臓病の食事については、これまでは「高たんぱく、高カロリー、低脂肪」が大原則であるとされていました。
ところが、今では肝臓に栄養を沢山与えたとしても、逆に負担が増してしまうことが分かってきたのです。
よって、肝臓病の食事療法の基本は、普通の食事を基本にして、バランスよく摂取することが大切なのです。
例えば、コンビニのお弁当ばかり食べてはいないでしょうか?
あるいは、いわゆる『ドカ食い』などしていないでしょうか?
これらの食べ方は腎臓にとってマイナスですので、もしやっているのなら辞めましょう。
肝臓病食(食事)のポイント
①毎食、主食と主菜をバランスよく摂取しましょう。
②一日に果物1個、牛乳をコップ1杯程度を摂取するようにしましょう。
③新鮮な野菜や海藻を積極的に摂りましょう。
④なるべくアルコールは飲まないようにしましょう。
⑤ジュースやお菓子の食べすぎに注意しましょう。
胃潰瘍食
胃潰瘍とは、ストレスが原因で発症することが多く、胃液の中にある、『ペプシン』や『塩酸』という物質が、胃を保護している粘膜を消化してしまうのです。
そして、胃粘膜がただれたり、崩れ落ちてしまうのです。
胃潰瘍の原因は先ほどストレスが多いと述べましたが、他には・・・
・ピロリ菌の感染
・刺激の強いものを食べすぎた場合
・痛み止めの薬やストロイドなどの薬を長期服用する場合
・コーヒーや飲酒・喫煙
・暴飲暴食や早食い
このようなものがあります。
病院などで出される胃潰瘍の療養食は、タンパク質が十分に摂取できて、胃内滞留時間が短いものを摂取できるようにしています。
他には、繊維の多いもの(ひじきやレンコン等)はなるべく避けて、刺激物が入っていないものが提供されます。
貧血食
貧血について書いた記事がありますので、まずは貧血について理解しましょう。
鉄欠乏貧血の場合には、『鉄』を多く含んだ食品を積極的に摂るようにします。
例えば・・・
・豚レバー
・鶏レバー
・豚ヒレ
・卵
・あさり水煮
・わかさぎ
・納豆
などがあります。
他には、
・エネルギーやタンパク質が多く含まれている食事の提供
・ビタミンCが多く含まれた食事の提供
などが療養食の基本となります。
レストロールや中性脂肪などの脂質代謝に異常が発生している状態を指します。
膵臓病食
まずは、動画で膵臓の病気について学びを深めて下さい。
膵臓病の食事の基本は、脂肪(油脂)を控えることです。
日本人が好む、カレーやグラタン、ハンバーグ、とんかつ、パスタなどは油脂が多く含まれているので、食事として提供される機会は少ないでしょう。
消化に良いものを食べる必要もあります。消化に良いものは何を連想するでしょうか?
・ごぼう
・レンコン
・海藻
・きのこ
・梨
・パイナップル
などがあり、食材として使われることが多いです。
また、刺激物も避けなければなりません。
脂質異常症食
脂質異常症とは、コレステロールや中性脂肪などの脂質代謝に異常が発生している状態を指します。
異常とされる基準は、それぞれのコレステロールや中性脂肪の値によって、以下の3つに分けられます。
■高LDLコレストロール血症・・・LDLコレストロールが140mg/dL以上
■低HDLコレストロール血症・・・HDLコレストロールが40mg/dL未満
■高トリグリセリド血症・・・トリグリセリド(中性脂肪)が150mg/dL以上
それでは、脂質異常症で提供される食事について解説します。
基本となるのは、身体活動量に合わせてエネルギー摂取の適量を決めていきます。
そして、体重の管理を行うことになります。
他には、コレステロールを控えた食事内容の提供があります。
コレステロールは卵類、内臓類などに多く含まれていますので控えるようにします。
脂質についても配慮された食事の提供があります。脂肪分が多く含まれている肉類や脂肪分の多い乳製品は控え、マーガリンなども避けなければなりません。
脂質異常の抑える、植物繊維を多く含む食事(大豆、ホウレンソウ、きのこ、海藻など)を摂取するような献立が組まれます。
痛風食
痛風で一番気を付けたいのはプリン体を多く含む食事を控えることです。
ではプリン体とはなんでしょうか?
穀物、肉、魚、野菜など食物全般に含まれる成分で、主に旨みの成分です。
人間の体内でも生成、分解されています。
普通は、プリン体は分解されて尿酸に変化し体外に放出され、尿酸量が排出能力を超え、体内に蓄積されると痛風の原因となるといわれています。
ビールや発泡酒に含まれているプリン体は麦芽由来です。
また、酒は、蒸溜酒よりも醸造酒の方が多く含まれています。
ビール・発泡酒のプリン体量は、100mlあたりではそれほど多くはありませんが、お酒を毎日飲む人は痛風になるリスクが高いです。
プリン体を多く含む食品
・あん肝
・レバー
・モツ
・牛ヒレ
・ロース
・えびやカニ味噌
など主に動物性食品に多く含まれています。
他には、療養食として、野菜を十分に摂ったり、塩分を控える食事が必要になってきます。
療養食加算(料金)とは
療養食加算とは、介護施設において入所者の病状に応じて、医師より発行された食事箋に基づき、療養食を提供することを評価する加算(料金)のことをいいます。
介護施設などにおいては、通常の食事でなく、療養食を提供することによって、プラスして料金(加算)が発生することになります。
例えば、介護老人保健施設では、1食6単位がプラスされます。
1単位10円ですので、60円がプラスされることになります。
これに対して、介護保険1割の場合、自己負担は6円/1食が加算されることになります。