事例集

担当ヘルパーがいない?満足な介護を受けることができない在宅介護の事例

在宅介護の現場には、問題が解決できないと思えるような難しい事例がたくさんあります。

中でも頭を抱えてしまうのは、ヘルパーと利用者さんの関係です。

お互いに合う・合わないがあるのは当たり前ですし、相性が悪く担当者が変更になることも珍しくありません。

ただし、どんなヘルパーが担当してもうまくいかず、最終的に担当ヘルパーが誰もいない…という困難な事例もあるのです。

この記事では訪問介護事業所に勤務していた筆者の経験を元に、在宅介護で困った事例や現場のヘルパーさんの声をご紹介します。

担当ヘルパーが全員辞退…実際に困った4つの事例

訪問介護では、基本的に利用者の自宅へ決められた時間にヘルパーが訪問します。

ケアマネージャーが作成したケアプランに則って身体介護・生活援助を行いますが、中には利用者との関係が悪く、介護計画を実施できない…ということも少なくありませんでした。

筆者をはじめ、担当者全員が頭を抱えた4つの事例をご紹介しましょう。

1・注文が多すぎる

決められたケアプランだけではなく、さまざまな注文をヘルパーに言いつける利用者さんがいました。

  • 安いスーパー(家から非常に遠い)へ買い物に行って欲しい
  • 年末なので大掃除をして欲しい
  • ボタン付けやアイロンがけをして欲しい
  • 掃除の仕方が気に入らない ⇒ 自分の言ったとおりにやれ

など、どれも介護保険では認められていない内容であるため、お断りするとさらにヒートアップ。

事務所に何度もクレームの電話を入れ、『次回からは別のヘルパーにしろ』と電話口で怒鳴り散らすこともありました。

ヘルパーさんの間でも噂が広まり、なかなかシフトに入ってもらえないという状況に。

最終的にはご家族が対応して施設へ入所をしましたが、2ヶ所の施設でお断りを受けたそうです。

2・上から目線でものを言う

まるで雇い主がお手伝いさんへ命令するかのような強い口調で、対応する方もいました。

  • バカ・まぬけ・バカヤローなどの罵詈雑言
  • 何してるんだ・早くしろなどの命令口調
  • どうせお前は…などのモラハラに近い暴言

今風の言葉でいえば『上から目線』です。

ヘルパーも仕事であることは十分理解していていますが、高圧的な態度や物言いは気持ちの良いものではありません。

この利用者さんは、特定の人にではなく誰に対しても同じような対応だったので、もともとの気質もあるのかと思われました。

シフトを組んでもヘルパーさんが誰も入ってくれず、ケアマネージャーが奔走しなければいけなかった事例です。

3・できないことを強制する

介護保険ではできないことを『やってくれ』と強制する方にもずいぶん悩まされました。

  • 同居している家族の部屋の掃除
  • 家族全員分の食事の支度
  • 家族全員分の洗濯

在宅介護の対象は、要介護認定を受けている人だけです。

仮に家族に高齢者の方がいても、介護認定を受けていなければサービスの提供はできません。

何度も話し合いをしたのですが、どうしてもわかってもらえず、担当のヘルパーが断るとかなり不機嫌な状態に…。

ご家族に伝えたところ、ご家族にも納得してもらえずに事業所を変更されてしまいました。

4・文句が多い

何事にも文句をつける人も、担当ヘルパーが決まりにくい状況を作ってしまいます。

  • 料理の味付け
  • 入浴時のお湯の温度や身体の洗い方
  • ヘルパーの言葉遣いや態度

改善の必要があれば話は別ですが、ただ単に自分の機嫌だけで対応される方はとても難しいです。

あまりにも文句を言われてしまうと、ヘルパーも自信をなくしてしまいます。

どんなに優秀なヘルパーでも必ず文句を言われるため、シフトがまったく作れない状態になりました。

仕事なんだけど…現場で働くヘルパーさんたちの声

ヘルパーの仕事は決して楽な仕事ではありません。

体力的・精神的にきついと感じることも多く、利用者の方との信頼関係に問題がある場合はなおさらです。

ここでは筆者と共に仕事をした2人のヘルパーさんに、現場で働くヘルパーの本音を聞いてみました。

ベテランヘルパーのKさん

Kさんは両親・義両親の4人を介護し、その後資格を取得してヘルパーになった人です。

筆者の大先輩で、現場のさまざまなことを教えてくれました。

Kさん『仕事だから基本的に文句は言いたくありませんが、どうしても行きたくないと思う利用者さんは正直います。認知症などの病気ならどんなことも認められますが、性格的に合わない人がいるのは事実です。たぶん私だけではなく、相手(利用者)も同じように思っているはずです。人は鏡ですから。やっぱりずっと文句を言われたり、できないことを強制してきたりするのは苦手です。仕事だと理解しているつもりですが、気持ち的に我慢できないことはありますよ。』

看護職から転職したSさん

Sさんは看護師として働いていたものの、家庭の事情で退職しヘルパーとして活躍していた人です。

介護だけではなく看護の経験も活かせる先輩として、常に勉強をさせてもらいました。

Sさん『介護と看護では、利用者(患者)の態度が違うなと感じます。看護師のときはあまり感じなかったけど、ヘルパーになってこんな言われ方をするんだと思うことが多々あって。まるでお手伝いさんかなにかと思ってるんだろうなと。コミュニケーションを取りたくても「黙って仕事してりゃあいい」なんて言われちゃうと、気持ちが萎えちゃいますよね。感謝してほしいわけじゃないけど、ヘルパーって社会的地位が低いと思わされることがあります。』

介護関係者と良好な関係を築くためにできるたった2つのこと

介護が必要になったときから、介護関係者とのお付き合いが始まります。

訪問介護・デイサービスなどの施設に従事する介護関係者とは信頼関係を構築したいもの。

良好な関係を築くためにはどんなことをすれば良いのでしょうか。

人と人とのお付き合いと心得る

ヘルパーをはじめ、介護関係者とは人と人とのお付き合いと心得ましょう。

希望・要望を伝えるのは決して間違ったことではありませんが、伝え方を考えなければいけません。

高圧的な物言いや態度、ハラスメントに近いような言動は控えるべきです。

ただし、中には本当に自分とは合わないという介護関係者もいます。

そんなときは臆せずに担当者変更を申し出てください。

介護関係者の中にも、改善点の多い人は存在しますので、まずは相談をするべきです。

また利用者(要介護者)のご家族は、介護保険に関する基礎的な知識を身に付けて、できること・できないことを知っておく必要があります。

わからないことがあれば、すぐにケアマネージャーやヘルパーに確認し、お互いにギャップのない状態を築けるのが理想といえるでしょう。

密接なコミュニケーションをとる

良好な関係を構築するには、密接なコミュニケーションが重要です。

何も伝えずに不満だけを抱え、最終的にクレームに発展する…というのは避けたいもの。

介護関係者は利用者の情報が多ければ多いほど、適切な介護を提供できます。

ちょっとした雑談でも介護関係者は嬉しいものです。

雑談の中からその人の気質や生育環境などがわかることも多いので、まずはコミュニケーションを取ろうという気持ちを持って接してください。

まとめ

筆者が勤務していた訪問介護事業所には、さまざまな利用者の方がいました。

中には担当ヘルパー全員が辞退してしまったり、他の事業所にお願いしたりしなければいけないような事例があったのも事実です。

介護関係者は、利用者(要介護者)やご家族の方と良好な関係を築きたいと常に思っています。

信頼関係を築くことで生まれるメリットはたくさんありますので、密接なコミュニケーションを取り、人と人とのお付き合いとして考えてみましょう。

あわせて読みたい
  • LINEで送る