親が一定の年齢になってくると心配なのは認知症です。
一緒に暮らしていなくても『電話の対応がおかしい』など、気になること・心配なことが増えてくるのではないでしょうか?
『認知症なんじゃないか』とストレートに聞いても、ご本人の気持ちを逆なでしてしまうことが多いため、対応をためらってしまう人は少なくありません。
そこでこの記事では、認知症かもしれないという症状が親に現れたときの対処法をご紹介します。
認知症に関する基礎的な情報もわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
認知症とは
そもそも認知症とはどのような疾患なのか、基本的な情報をご紹介します。
認知症の定義
認知症については、厚生労働省が以下のように定義しています。
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)をいいます。 |
認知症の症状としては『中核症状』と『行動・心理症状』があり、『行動・心理症状』には本人なりの背景や理由があるといわれています。
中核症状 | 行動・心理症状 |
記憶障害 | 妄想・幻覚 |
理解・判断力の障害 | 行方不明 |
見当識障害 | 不潔行為 |
実行機能障害 | 暴力行為 |
抑うつ・人格変化 など |
認知症にはアルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症などがあり、それぞれ出現する症状や原因、対応が異なるため、専門機関の診断が必要になります。
認知症と物忘れの違い
認知症と物忘れには違いがあります。
一定の年齢になると『どちらかわからない』ということもありますので、目安となる事例をご紹介します。
物忘れ | 認知症 | |
物忘れの範囲 | 一部 【例】ご飯のメニューを忘れる | 全部 【例】ご飯を食べたことを忘れる |
人の名前 | すぐにはわからなくても思い出せる | わからない |
物忘れの自覚 | ある | ない |
日常生活への支障 | ないまたは少ない | あるまたは多い |
妄想 | ない | ある |
人格の変化 | ない | ある |
加齢による物忘れは誰にでもあるもの…人格の変化や妄想、体験自体を忘れてしまうなど、認知症と物忘れの違いを知っておくことで、診断のタイミングを逃さずに済みます。
MIC(軽度認知障害)とは
MIC(軽度認知障害)とは、正常とも認知症ともいえない範囲のことを指し、厚生労働省は以下のように定義しています。
認知症のように普段の生活に支障をきたすほどではありませんが、記憶などの能力が低下し、正常とも認知症ともいえない状態のことを「軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)」と言います。MCIの方の約半数は5年以内に認知症に移行するといわれています。MCIの方のうち、すべてが認知症になるわけではありませんが、この段階から運動などの予防的活動を開始することで、認知症の進行を遅らせることが期待されています。 認知症のサインまではいかなくても、少しだけ加齢によるもの忘れが強いと感じたら、MCIの可能性も考えられます。MCIの特徴としては、下記の3つが挙げられます。 ●以前と比べてもの忘れなどの認知機能の低下がある、本人が自覚している、または家族等によって気づかれる ●もの忘れが多いという自覚がある ●日常生活にはそれほど大きな支障はきたしていない |
厚生労働省は、MICの人は2012年時点で約400万人と推計されると報告していますが、高齢化社会の現在の日本で、MICの人がさらに増加していることは想像に難くありません。
家族・自分でもできる!認知症のチェックポイント
認知症かもしれないと気付くことができる事例は多々あります。
こんな症状が出たら要注意!ですので、チェックポイントとしてご活用ください。
物忘れがひどくなる
- 数分前、数時間前のことをすぐに忘れてしまう
- 同じものを何個も買ってくる
- 同じことを何度も言ったり聞いたりする
- いつも探し物をしている
- 約束を忘れる
- 知っているはずの物や人の名前が出てこない
性格が変化する
- イライラして怒りっぽくなる
- 頑固になる
- 失敗を他人のせいにする
- 元気がなくふさぎ込んでいる
- 笑わない
好きだったものに興味を示さなくなる
- 趣味だったものに興味を示さない
- テレビをつけているのに全く見ていない
- 身だしなみや洋服に気を配らない
- 他人との交流をしなくなる
- 何をするのも億劫だという
理解力や判断力が低下する
- 書類の手続きや金銭の管理ができない
- 運転のミスが増える
- 料理の方法を忘れてしまう
- 話していることの内容がよくわからない
場所や時間がわからなくなる
- 日付・曜日・季節がわからなくなる
- 近所の道で迷うことがある(家に帰れないなど)
- 約束を忘れたり間違えた場所へ行ったりする
身の回りのことができなくなる
- 掃除や洗濯などの家事ができなくなる
- 食べこぼしが増える
- 入浴の仕方がわからなくなる
- 電話の対応が不自然になる
- 失禁が目立つようになる
親に心配な症状が出たときの対処法
年齢を重ねるにつれて、親が認知症になるのではないかと心配する子ども世代は多いものです。
生活に支障を来している・物忘れとは異なる言動が見られるという場合の対処法をご紹介します。
本人の了解が取れれば医療機関を受診する
心配な症状があれば早期に医療機関を受診しなければいけません。
しかしいきなり専門外来への受診を承諾しないというケースもあるのが現実。
年齢を重ねても自尊心を持っているのが人間です。
可能な限り本人と穏やかに話し合いを行い、了承を得た上で医療機関を受診しましょう。
どうしても提案を受け入れてもらえない場合は、地域包括支援センターへ相談をしてみてください。
問い詰めるようなやり取りや、無理やりに受診させることは絶対にNGです。
地域包括支援センターへ連絡する
親の介護で困ったことが起きたときは、地域包括支援センターへ連絡をしてください。
地域包括支援センターは、高齢者の保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とした施設です。
市町村単位で設置することができ、高齢者の総合的な相談窓口とされています。
介護保険の認定を受けていなくても相談することが可能なので、『認知症かもしれない』『専門外来を受診できない』などに関するアドバイスを受けることができるのです。
ケアマネージャーが決まっていれば、相談相手としてはケアマネージャーが適任ですが、まだ要介護認定を受けていないという方が対象の場合は、地域包括支援センターへ相談をしてみましょう。
もっとも重要なのは親に寄り添うこと
認知症かも?と感じたときに、もっとも重要なことは不安な気持ちに寄り添ってあげることです。
自分が認知症かもしれないと感じることは、本人にとって大きな苦痛・負担・不安を抱えることだといえます。
家族も心配や不安を抱えているため、ついキツい口調で問い詰めてしまうこともありますが、責められると余計意固地になって、対応が遅れてしまうことも…。
本人の不安な気持ちを理解し、心配している気持ちを穏やかに伝えることがポイントです。
まとめ
親が一定の年齢になると、『認知症かな?』と不安に感じることがあります。
そんなときは前述したチェックポイントを活用し、現在どんな状態にあるのか、何をするべきなのかを明確にしましょう。
一番してはいけないことは、本人の意見を聞かず勝手に話を進めることです。
できる限り本人の意思を優先し、よりそう気持ちで対応するようにしましょう。