自分や家族が介護が必要となった場合、医療従事者以外にお付き合いをするようになるのが介護関係者です。
介護関係者はさまざまな仕事を分担して行うため、ヘルパー・ケアマネージャー・施設職員など複数の職種の人が連携しています。
介護が必要になったとき、介護関係者と良好な関係を築くためには、どんなことに気をつければ良いのでしょうか?
この記事では介護関係者との関係の重要性やお付き合いのポイントなどを、介護業界に勤務していた筆者の経験も含めてご紹介します。
介護関係者との信頼関係の重要性
介護が必要な状態になったとき、お付き合いの始まる介護関係者とは信頼関係を築くことが重要です。
なぜ信頼関係の構築が重要なのか、3つの理由をご紹介しましょう。
最適な介護を受けることができる
介護関係者と信頼関係を構築することで、最適な介護を受けることができます。
自分はどんな人なのか、何を望んでいるのか、家族の意見はどうなのか…初めて介護を受ける人は、まず自分自身のことをわかってもらう必要があります。
自分のことを理解すると同時に担当者のことも理解できれば、良好なコミュニケーションが図れるので、ストレスの少ない介護を受けることができるでしょう。
変化があったとき迅速な対応が可能になる
介護には変化がつきものです。
『今まではできたことができなくなった』というADLの変化だけではなく、病状の進行や新しく発症する症状などもあります。
そんなときに普段から良好なコミュニケーションを図れていれば、変化を見逃すことが少なくなるのです。
特に在宅介護の場合は、訪問する回数や時間が厳密に決められています。
少ない時間の中で変化をキャッチするためには、介護関係者のスキルにプラスして、要介護者の方からの発信も必要です。
虐待などの問題が起こりにくい
介護関係者との信頼関係は、介護虐待などの問題を起こりにくくするためにも必須といえます。
ニュースでは介護を原因とした虐待・ネグレクトによる被害が頻繁に報道されていますが、対岸の火事と考えることはできません。
信頼関係がなければ、本当の意味で相談ができませんし、仮に家族や他の介護関係者から虐待を受けてしまったときにSOSを出すことも難しくなります。
しっかりとした信頼関係を築いていくことで、ちょっとした変化を見逃さないチャンスが生まれるのです。
【関係者別】介護関係者との付き合い方のポイント
介護関係者には複数の職種があり、それぞれ担当する業務内容が異なります。
介護が必要になったときにお付き合いの始まる職種をピックアップして、それぞれの付き合い方のポイントをご紹介しましょう。
ケアマネージャー
ケアマネージャーは、介護が必要になったとき一番初めにお付き合いの始まる職種です。
介護に関するコーディネーターと考えて下さい。
ケアマネージャーとの付き合い方は、とにかく自分のことをわかってもらうこと。
考え方・価値観・希望の介護などを包み隠さず話し、理解してもらう必要があります。
ケアマネージャーは交代することも可能なので、どうしても自分と合わない場合は、変更しても構いません。
ケアマネージャーは介護の中心となる存在です。
自分の思いや状況などをきちんと理解してもらうことで、最適な介護をマネジメントしてくれます。
訪問介護
訪問介護は介護福祉士やヘルパーが担当します。
実際に身体の介護や生活の援助をしてくれる人たちです。
介護関係者の中でも一番接する時間の多い職種といえるでしょう。
訪問介護の担当者とは、密接なコミュニケーションをとってください。
担当者が落ち込むのは『利用者さん・ご家族に名前を覚えてもらえないとき』です。(※認知症などの病気の場合は別です)
近所の人や友人と雑談をするような感じで、ちょっとしたことでもコミュニケーションをとるようにするのがベストだといえます。
施設職員
施設の利用・入所した場合は、施設の職員さんとのお付き合いが始まります。
本格的な入所だけではなく、デイサービス・ショートステイなどで施設を利用することも。
施設職員はケアマネージャーから情報の共有を受けていますが、良好な関係を築くためにはさまざまな側面から状況を話した方が良いでしょう。
どんな考えの人なのか、どんな家族状況なのか、介護に対する希望はどうなのか…短期間ではわからないことでも、長い時間一緒に過ごすのであれば、理解をしてもらえます。
家族は「報連相」を徹底しましょう。
少しでも情報があった方が、施設職員は対応がしやすくなります。
特に入所前のショートステイやデイサービスの利用時には、家での様子やちょっとした変化などをしっかりと報告してください。
訪問医療・訪問看護
在宅介護でお世話になるのが、訪問医療や訪問看護の医療従事者です。
訪問医療や看護の担当者との付き合い方は、ちょっとした変化も必ず報告することがポイント。
中には『こんなことは言っても迷惑になる』『何とか我慢できているから大丈夫』などと遠慮をして、体調の変化や違和感を伝えない人もいます。
明らかな変化には対応できますが、本人だけが感じる違和感は話してもらわないとわかりません。
自分で判断をせずに、ちょっとした変化でもきちんと伝えることがポイントです。
介護関係者との信頼関係を作るために必要な3つのコト
筆者は訪問介護事業所と特別養護老人ホームでの勤務経験があります。
さまざまな利用者の方・ご家族の方と接することで、信頼関係を築くためにはどう対応すれば良いのかを模索してきました。
筆者の経験を元に、介護関係者と信頼関係を築くポイントについて詳しく解説します。
ありのままの現状を伝える
介護関係者にはありのままの現状を伝えることが大切です。
特に経済的なことについては、しっかりとケアマネージャーに伝えることがポイント。
ケアプランを考えるときや対応を変更するときなどに、根幹となる部分だからです。
また普通では言いにくい家族との関係についても、伝えてもらえることはとても重要でした。
本当はうまくいっていないのに仲の良いふりをしたり、きちんと話し合っていないのに家族の意見だけを通したりすることはNGです。
仲が悪いなら悪いで構いませんし、本人と家族の意見が異なるのも珍しいことではありません。
事実をきちんと伝えてもらえることで、介護関係者はアプローチを考えるのです。
できないことはできないと伝える
介護計画において、できないことはできないと伝えてください。
筆者の担当していた利用者さんで、ご家族に『着替えの補充をお願いします』『散髪代の振込をお願いします』と何度連絡をしても、『わかりました』というだけで何もアクションを起こさないご家族がいました。
理由がわからずケアマネージャーを筆頭に、担当者全員でさまざまな方法を考えたのですが、結果的にはご家族に経済的な余裕がなく、ご本人も年金では生活できない状況だったということがありました。
ケアマネージャーも何も伝えられていなかったため、ケアプランの全面的な見直しと利用者本人の生活保護の申請が必要になったのです。
できないことをできるといっても、最終的に困るのは介護を受けている方になります。
できないことは恥ずかしいことではなく、できるふりをする方が後々大きな問題になってしまうことを覚えておきましょう。
本人(要介護者)の意思を確認する
疾病を発症していない限り、本人=要介護者の意思を必ず確認してください。
- 家族は施設に入れたいけれど本人は在宅を希望している
- 家族に迷惑をかけたくないから施設に入所したいと思っている
- 病気の治療を積極的に行わない意思がある
など、介護を受ける方にはご自身の考えや希望があります。
介護計画はできる限り希望や意思を反映するべきものです。
本人(要介護者)の意思を確認するために、しっかりと話し合いをしましょう。
そこで仮に折り合いがつかなくても、本人(要介護者)の意思がわかるだけで介護関係者は対応を協議できます。
まとめ
介護が必要になったときに、介護関係者と良好な関係を築くポイントは、意思や希望をハッキリと伝えることです。
家族との話し合いも重要ですし、ありのままの状況を伝えることも忘れてはいけません。
介護関係者は多くの情報を得ることで、最適な介護を提供していきます。
介護に関するさまざまな問題を一緒に解決していける…そんな関係性が理想といえるでしょう。