皆さんは『総合事業』という言葉を耳にしたことはありますか?
実際には総合事業に関わっている人でも、この言葉を意識されていない人もいるかもしれません。
総合事業は、介護予防を意識する高齢者の人やその家族が必ず知っておいて、内容を理解しておきたいものです。
今回は、総合事業について詳しく解説していきます。
総合事業の概要
総合事業とは、高齢者を地域全体で支える介護予防に繋げる取り組みで、正式名称は『介護予防・日常生活支援総合事業』といいます。
この総合事業の特徴のひとつに、要介護認定の申請を行わなくても介護予防サービスを利用できることがあります。
さらに、全国で統一された介護保険サービスとは違い、各自治体の実情に合わせた内容が実施されるのです。
ここまでを簡単に説明すると・・・
介護保険サービスは国の制度であり、総合事業は自治体の事業であるということになります。
総合事業の対象者
総合事業の対象となるのは二つに分けることができます。
①介護予防・生活支援サービス事業
②一般介護予防事業
介護予防・生活支援サービス事業
まず「介護予防・生活支援サービス事業」から解説します。
利用できる対象として
(1)要支援者
(2)基本チェックリスト該当者(介護予防・生活支援サービス事業対象者)
要支援者は、介護認定において『要支援』とされた人たちのことです。
基本チェックリストとは、高齢者が自分で生活機能に低下があるかどうかを確認する質問方式のリストのことを指します。
この質問方式ですが、全部で25項目あり、日常生活の様子、身体機能、栄養状態、外出頻度などの内容があります。
25項目の詳細についてはこちら↓↓↓
- バスや電車で、一人で外出していますか
- 日用品の買い物をしていますか
- 預貯金の出し入れをしていますか
- 友人の家を訪ねていますか
- 家族や友人の相談にのっていますか
- 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
- 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
- 15分位続けて歩いていますか
- この1年間に転んだことがありますか
- 転倒に対する不安は大きいですか
- 6ヶ月間で2kgから3kg以上の体重減少がありましたか
- 身長(cm)と体重(kg)およびBMI(注)
- 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか
- お茶や汁物等でむせることがありますか
- 口の渇きが気になりますか
- 週に1回以上は外出していますか
- 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
- 周りの人から「いつも同じ事を聞く」などの物忘れがあると言われますか
- 自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか
- 今日が何月何日かわからない時がありますか
- (ここ2週間)毎日の生活に充実感がない
- (ここ2週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった
- (ここ2週間)以前は楽にできていたことが今はおっくうに感じられる
- (ここ2週間)自分が役に立つ人間だと思えない
- (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
参照:厚生労働省より
この項目をチェックし、結果によって心身機能の衰えによる生活機能の低下があると判断されると『事業の対象者』と判定されるのです。
一般介護予防事業
一般介護予防事業は、65歳以上の高齢者(第一号被保険者)のすべての人が対象となり、利用することができます。
保健所や福祉施設で介護予防の知識などを習得し、通いの場や地域サロンなど、地域の身近な場所で人と人の繋がりを通して介護予防の活動を継続できるように支援をしてくれる事業なのです。
さらに細かく解説すると、以下の5種類の事業があります。
- 介護予防把握事業
- 介護予防普及啓発事業
- 地域介護予防活動支援事業
- 一般介護予防事業評価事業
- 地域リハビリテーション活動支援事業
総合事業のメリット
利用者や家族のニーズに合わせたサービスを選ぶことができることによって、高齢者の生活が安定することが期待できます。
基本チェックリストに先述しましたが、すぐにその結果が出るためサービスまでの利用が早いのが特徴となります。
介護保険の利用に結び付かないか?と考えて高齢者に円滑なサービス導入が可能となります。
住民のボランティアによるサービスが拡大されれば、地域の助け合いや繋がりが生まれるのも大きな存在になるでしょう。
要介護1・2も総合事業へ?
要介護1と要介護2を介護保険から外し、総合事業へ移行する動きがあります。
国の財源の関係で、実現を強く働きかけているのは財務省です。
その狙いは、右肩上がりの介護費の伸びを抑えて、保険料など現役世代の負担をなるべく少なくすることがあります。
介護に関わる費用は、2021年度で約11兆円ともいわれています。そして、2040年度には約25兆円まで上昇すると推測されているのです。
このまま何もしなければ、現役世代の負担も多くなり、介護保険制度を維持できなくなってしまうでしょう・・・。
国民にとっては非常に厳しい情報であり、なかなか受け入れがたいものですが、それだけ介護を必要としている高齢者が増えているという日本なのです。
要介護1・2が総合事業へ移行するデメリット
①利用者が通える施設が減少する
現在、総合事業を受託していないデイサービスもあります。
そのため、利用者が総合事業に移ることによって、今まで利用していたデイサービスを利用できなくなく可能性があります。
某協会の調査によれば、4割を超えるデイサービスが総合事業を受託していないといわれています。
②介護サービスに地域差が発生する
総合事業は各自治体が実施するため、財源や福祉に関する考え方によって、ケアのサービスの質・量が異なってしまい、結果として地域差が発生する可能性があるのです。
③介護報酬の減額により通所事業所が減少する
これは深刻な問題であり、課題になるでしょう。
各事業所に入る介護報酬も減少することが予想されるでしょう。
実際に介護報酬の金額は減少傾向にあるのです。
介護報酬が減少すれば、経営が難しくなる事業所が増え、通所事業所が減少する可能性が高くなります。
どのタイミング要介護1・2も総合事業に移行するか、はっきり決まっていませんが、これまでの流れをみているといつかは決定されそうです。
まとめ
総合事業とは介護保険法で定められた各自治体が行う事業であり、平成27年4月の介護保険制度改正によって、「介護予防事業」に予防給付(要支援者を対象とする介護保険サービス)のうち、「介護予防訪問介護」および「介護予防通所介護」が移行されることになり、名称も「介護予防・日常生活支援総合事業」と改められました。
これから介護について学ぼうとしている人、介護予防を意識している本人や家族は理解しておきたいものです。
総合事業の概要につい理解しておけば、『介護』を受けるまでの段階で必ず役に立つことでしょう。