介護施設

特養と老健、選択に迷った場合の判断材料は?

介護保険施設には、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の3つがあります。

なかでも特に、特別養護老人ホームと介護老人保健施設は室内の雰囲気や職員の配置も似ており、高齢者がそこで生活するというイメージを持たれている人も多いでしょう。

しかし実際には違い、どちらの施設に入所するかによって、施設での生活の内容や家族の役割も変わってきます。

今回は、特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設(老健)の違いを解説し、どちらを選択すれば良いか迷った時に、どのような基準で判断すればよいかをお伝えします。

特別養護老人ホームとは(概要)

常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する施設です。

略して「特養」とも呼ばれています。

特別養護老人ホームでは、入浴、排泄、食事、レクリエーション、外出、などの支援、その他の日常生活の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の支援を行います。

また、特別養護老人ホームのうち、利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、定員29名以下の施設を「地域密着型介護老人福祉施設」と呼びます。

参照:健康長寿ネット

介護老人保健施設とは(概要)

介護老人保健施設(老健)は特養と同じでに、公的な介護保険施設の一つです。

病気やけがで入院し、病状が落ち着いたもののすぐに自宅に戻ることが困難な方が、入所の対象となります。

介護老人保健施設は在宅復帰を目指す施設であるため、入所期間は概ね3カ月から6カ月程度と短期間です。(施設による)

もちろん、リハビリの進みが遅く、回復に達していない等の理由から自宅に帰れず、長期入所となる場合もあります。

要介護認定で要介護者と認定された場合、施設のケアマネジャーが作成するサービス計画に基づいてさまざまなサービスが利用できますが、万が一、入院治療が必要になった場合は退所となります。

参照:健康長寿ネット

特養と老健の違い

ここで特養と老健の違いについて解説していきます。

①特養は主に終身施設/老健は主に通過施設

特養の大きな特養のひとつに、一度入所したら、最期まで支援をしてくれるという特徴があります。

勿論、治療が必要となり本人や家族が希望すれば最期は病院で…と考える人もいますが、実際には一度入所するとひとり一人心身状態に合わせて、看取り介護を行うことが可能です。

一方、老健は『中間施設』『通過施設』と呼ばれており、 原則的に最期まで入所することは出来ません。

上記でも解説させて頂いた通り、老健を出た後の場所を探さないといけません。

例えば、リハビリを行って自宅に戻れるようになる人、要介護5の状態になり特養に入所される人、認知症がありグループホームに入所される人などがあります。

②特養はリハビリは少々/老健はリハビリ重視

生活の場である特養は介護職員がメインで日々のケアが行われており、リハビリにおいては必ず国家資格を持った『理学療法士』や『作業療法士』が在籍する必要はありません。

また、リハビリの頻度も老健に比べると少なく、日常生活の中で行う『生活リハビリ』が主となってきます。

一方、老健はリハビリに力をいれる施設であり、スムーズに機能回復が行えれば、在宅復帰できる可能性も視野に入れられる施設なのです。

リハビリの職員は、専門の国家資格を持った人が行い、特に入所して3ヶ月は集中してリハビリを行うこともあります。

③特養は医療に強くない/老健は医療にも対応可

https://www.irasutoya.com/

繰り返しますが、特養は生活の場であることが基本的な考えです。

家庭(生活の場)では、ちょっした風邪薬や包帯、消毒などはあると思います。

特養もそれと同じで、健康管理(血圧測定、体温測定等)、簡単な怪我の処置、投薬などが基本になります。

医師の指示によって点滴を行うこともありますが、看護師の夜間勤務は義務づけられておりませんので、日中のみの対応になってきます。

では、夜間に体調に異変があれば、どのように対応するかが気になると思います。

それは、オンコール体制を整えており、現場で勤務する介護職員が自宅で待機する看護師に連絡し、場合によっては夜中でも出勤してもらうという対応をとっています。

施設長は医師である必要がなく、嘱託委として月に数回、回診や往診に来てもらったりします。

一方、老健では、医療的な要素も含む施設となりますので、健康管理(血圧測定、体温測定等)、簡単な怪我の処置、投薬などは勿論、夜間の点滴、喀痰吸引も可能になってきます。

看護師の勤務は24時間365日必ず勤務することになり、医師も常勤として施設に勤務しています。

特養か老健に迷った時の判断基準

ここからは具体的な事例をあげて考えていきます。

事例① 要介護5 寝たきり状態

グループホームで生活する認知症のあるAさん。

この度、介護の変更申請をしたら、要介護2から一気に要介護5に上がってしまいました。

グループホームからは「当施設よりも他の施設に移る方が本人のためにもなるし、当施設で出来ることの限界が来ている」とコメントがあり、家族は次の施設を考えるようになりました。

病気は、脳血管疾患とアルツハイマー型認知症で状態は安定していますが、寝たきり状態です。

このような場合、特養か老健どちらを選択すればいいでしょうか?

★★★★★★

病気である脳血管疾患と認知症が安定しているということで、強い医療を求める必要はなさそうです。

寝たきり状態である要介護5ということも考えれば、最期まで支援をしてくれる特養を選択する方がいいかもしれません。

事例② 要介護1 自分で歩ける

自宅で骨折し、病院に運ばれて入院・手術をしたBさん。

無事手術は成功し、リハビリもスムーズに行われて歩行器を利用すれば自分で歩けるほどまで回復しました。

入院中、症状が安定したので介護認定を受けると要介護1という結果がでました。

病気は、心疾患があり日頃の観察も必要ですし、薬も服用しています。

※特養への入所は原則要介護3以上

家族はできたらもう少しリハビリをして、それが落ち着いたら自宅での生活をもう少し継続できたらと考えています。

このような場合、特養か老健どちらを選択すればいいでしょうか?

★★★★★★

手術が成功し、リハビリもスムーズにできて歩行できるレベルまで回復したのであれば、本人や家族も自宅に帰りたいという気持ちは大いにあるでしょう。

ただ、退院後すぐに自宅に戻るのは不安があり、一旦、別の施設でリハビリをもう少し継続して自宅での生活に自信がついたら、在宅復帰という考えのようです。

病気では心疾患があり、医療的なケアも必要であるのなら、中間施設である老健を選択する方がいいかもしれません。

勿論、しっかりとリハビリもしてくれるので安心ですね。

事例③ 胃婁 要介護4 65歳

若年性の認知症の影響で寝たきり状態になり、とうとう胃婁になった65歳のCさん。

病院を出ることは決まっていますが、自宅ではケアが難しく施設を探すことにしました。

胃瘻造設ということで、日中の喀痰吸引が必要な状態です。

このような場合、特養か老健どちらを選択すればよいでしょうか?

★★★★★★

胃婁をしているので、医療的領域が強いです。よって老健の方が良さそうな気もします。

しかし、喀痰吸引が日中のみで構わないというのであれば、施設によっては特養でも対応は可能でしょう。

勿論、医療に強い老健でも対応はできることから、この場合、特養・老健どちらを選択しても構わないでしょう。

あとは予算などの関係があるので、各施設をリサーチして条件にあった施設選びをすることが大事になってきます。

また、特養は終身(最期までみてくれる)、老健は中間施設(数か月後には退所の必要がある)ことを十分に理解しておかなくてはなりません。