ここ数年、異常気象による自然災害や頻発する地震などが多く見られるようになりました。
メディアでは避難者の人たちの様子が報道されることもありますが、決して対岸の火事ではありません。
高齢者の方の避難は早めに…といわれますが、在宅介護を行っている場合などは避難をためらってしまうことも考えられます。
そこでこの記事では高齢者や介護が必要な方が安心して避難できる福祉避難所についてご紹介します。
万が一のときのために、情報収集の一環として参考にしてください。
福祉避難所とは
福祉避難所とはどのような避難所なのか、概要や対象者についてご紹介します。
福祉避難所の概要
福祉避難所とは、一般の避難所で生活をすることが困難な人が避難できる避難所のことで、配慮が必要な人たちが安心して避難し、生活ができる環境を整えた避難所を指します。
2011年の東日本大震災において、犠牲となった方の多くが高齢者や障がいを持つ方だったことを踏まえ、内閣府は2013年に災害対策基本法の改正を行いました。
その中で各市町村長は、被災者を一時的に滞在させるために一定の基準に適合する施設を指定避難所として指定することが義務づけられ、避難所における良好な生活環境の確保等の努力も義務として課されています。
福祉避難所を利用できる人
福祉避難所を利用できる対象者について、内閣府は以下のように定義しています。
福祉避難所の対象者として想定されているのは、法律上「要配慮者」ということになる。 要配慮者は、「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)と定義されている。よって、福祉避難所の事前指定やその準備は、これらの人々を対象として備えておく必要がある。 「その他特に配慮を要する者」として、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者等が想定される。これらの人々は、一般的な避難所では生活に支障が想定されるため、福祉避難所を設置し、受け入れ、何らかの特別な配慮をする必要がある。 |
高齢者・障がいのある人・妊産婦・乳幼児・傷病者など、特別な配慮が必要な人を要配慮者と定義づけ、公共施設以外にも協定を結んだ特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・障害者支援施設などを福祉避難所として利用することが可能です。
介護認定や障害者手帳の有無にかかわらないこと、災害発生時にすぐ利用できることを周知徹底するよう内閣府は各市区町村へ指導・支援を行っています。
どんなところが福祉避難所になる?
福祉避難所は、基本的にバリアフリーであること・支援者をより確保しやすいことが大前提とされています。
その上で内閣府はガイドラインの中で福祉避難所になり得る施設を次のように定めています。
・一般の避難所となっている施設(小・中学校、公民館等) ・老人福祉施設(デイサービスセンター、小規模多機能施設、老人福祉センター等) ・障害者支援施設等の施設(公共・民間) ・児童福祉施設(保育所等)、保健センター、特別支援学校 ・宿泊施設(公共・民間) |
問題として掲げられているのは、福祉避難所の存在が周知されておらず、要配慮者の方が『自分たちは避難することが難しい』と考えてしまっていることです。
自分の住んでいる自治体で福祉避難所の設置はどのようになっているのか、必ず確認をしておくことが求められます。
一般の避難所と福祉避難所の違い
一般の避難所と福祉避難所はどのような違いがあるのでしょうか?
対象者や設備・環境面で違いを見ていきましょう。
対象者
一般の避難所は、地域に住んでいる人であれば誰でも利用することができます。
避難所は災害直後に避難する『指定緊急避難所』と避難生活を送る『指定避難所』があります。
福祉避難所は一般の避難所で生活するには配慮が必要な人たちが利用する避難所です。
自治体の中には指定の施設に『受け入れ対象者』として登録されていれば、災害直後に指定の施設へ避難することができるケースもあります。
設備・環境
一般の避難所は、学校の体育館や公民館などの公共施設を利用するケースがほとんどです。
貯水槽・仮設トイレ・マット・簡易ベッド・非常用電源・衛星携帯電話等の通信機器等・空調などが一般的な設備・環境となります。
対して福祉避難所は、障害者用トイレ・スロープ・手すり・文字放送対応テレビ・筆談用具・車いす・歩行器・杖・補聴器・ストーマ装具・酸素ボンベなどの設備・環境が整っています。
福祉避難所を利用するときの注意点
福祉避難所を利用するときには、一般の避難所とは異なる注意点があります。
どのようなことに注意すれば良いのか、4つのポイントをご紹介しましょう。
①各自治体の情報確認
各自治体によって福祉避難所の設置には差異があります。
多くの自治体では公式のホームページで福祉避難所となる施設の一覧などを公表しているため、自分の住む自治体ではどんな対応になっているのか、必ず確認しましょう。
事前に要配慮者として登録が必要なケースや、一緒に避難できる家族の人数などが定められているケースがあります。
各自治体の制度を理解し、いざという時に「こんなはずじゃなかった!」という事態に陥らないように準備をしておくことが重要です。
②持ち物
福祉避難所へ避難する場合には、持ち物にも注意が必要です。
避難所で準備ができないものや、周囲に要配慮者であることがわかるものを持っていかなくてはいけません。
- 処方されている薬
- 介護保険被保険者証や障害者手帳など
- 障がいのある方(知的・発達・精神障がいなど)は症状や特性を書いたもの
などは準備しておきましょう。
また食事の際に利用するとろみ剤などは、避難時にあると便利です。
日頃とろみをつけた食事を必要とされている方は、避難時に忘れないようにしてください。
③早めの対応がカギ
災害が想定される場合は、気象庁が防災気象情報と警戒レベルを発表します。
住んでいる地域のハザードマップを確認し、『高齢者等の避難』が発表された場合は、早めに避難をしましょう。
実際に災害が起きてからでは、間に合わないことがあります。
福祉避難所を利用する可能性のある方は、早めの対応がカギです。
一般の避難所を一旦利用する場合でも、早めに対応することで福祉避難所を速やかに利用できることもあります。
④福祉避難所に入れないことも想定する
残念ながら、全国の自治体において十分な福祉避難所が用意されているとはいえないのが現状です。
要配慮者の数と福祉避難所の数が見合わない場合、福祉避難所に入れないことも想定しておかなければいけません。
内閣府のガイドラインでは、一般の避難所でも要配慮者に対するスペースの確保などが定められていますが、避難直後の混乱期には難しいものがあります。
福祉避難所が利用できなかった場合にどのような対応をするのか、あらかじめ考えておくことも必要といえるでしょう。
まとめ
福祉避難所は一般の人は利用することができません。
指定避難所では生活することが難しい要配慮者のための避難所であることを知っておきましょう。
また福祉避難所の設置は、各自治体によって差異があります。
自分たちの住む自治体ではどのような取り組みをしているのか、福祉避難所を利用するための条件はあるのかなど、事前に情報を収集しておくことが重要です。
自然災害はいつやってくるのかもわかりません。
転ばぬ先の杖…日頃から災害に対する準備を行い、要配慮者の方が家族にいる場合はさまざまなシチュエーションを想定して、災害に備えるようにしましょう。