水頭症という病気、耳にしたことはありますか?
簡単にいうと、脳の『脳室』と呼ばれるところに、髄液が溜まって脳を圧迫し、様々な症状を引き起こしてしまう疾患です。
高齢者にとって症状が悪化すると、日常生活動作や認知機能に影響するので、早期発見で適切な治療をすることが大切になってきます。
今回は、この水頭症について詳しく解説し、高齢者への配慮や治療についてもお伝えします。
水頭症とはどんな病気?
水頭症のなかには、脳出血やくも膜下出血になったことがある人が、少しずつ症状が現れて気が付くこともあります。
しかし、一方で原因不明の特発性正常圧水頭症というものも存在するのです。
特発性正常圧水頭症について
この病気の多くは高齢者が発症します。
そして、歩行障害・認知症・尿失禁の症状があるのです。
これらの症状が現れると、生活の質が低くなることが安易に予想されますが、その通りだといえるでしょう。
そして、他者の支援を受けて生活を営むことができなくなり、デイサービス、ショートステイ、訪問介護・看護などの介護保険制度を利用するようになるのです。
『歩行障害』とは
多発性正常圧水頭症の初期症状であることが多く、歩幅の減少に加えて、足の挙上低下、歩幅の拡大が特徴なのです。
ゆっくりとした歩行で、特に起立時や方向転換をするときに不安定になります。
症状が進行してしまうと立位や座位の保持が難しくなってしまいます。
転倒転落に注意を要します。
『認知症』とは
脳が関係してきますので、認知症の症状がでることがあります。
最初の段階では、物忘れ、そして自発性の低下や無関心(活気がなくなる)、日常動作の緩慢化が出現します。
さらに、進行すると、無言・無動になったりもします。
このタイプの認知症の場合、手術をすると改善する可能性が高いとされています。
よって、早期発見のために早めに病院を受診するようにしましょう。
『尿失禁』とは
最期に出現する症状として、尿失禁があります。
何度も排尿がしたくなる『頻尿』、トイレに間に合わない『切迫性尿失禁』があります。
尿失禁の症状が出現すると、家族の介護の必要性も一気に高くなりますので、ご苦労をされる家庭も多いと思います。
高齢者の治療とは
治療は、髄液の流れを良好にするものです。これを髄液シャント手術といいます。
髄液シャント手術において重要なものが、水頭症治療用シャントシステムです。
これは、 過剰に溜まった脳脊髄液を流すカテーテル(管)をシャントシステムなのです。
基本的には一本の管ですが、患者(高齢者)の状態によって、脳脊髄液の流れを調整する弁がついていて、身体の外から器具で調整することができます。
髄液シャント手術には、主に2種類あり、『脳室-腹腔シャント』と『脊柱-腹腔シャント』に分けています。
『脳室-腹腔シャント』とは
シリコン製のチューブを頭部から腹部までの皮下を通して、これによって脳の中に溜まっている脳脊髄液を腹部に流して排出する方法です。
日本だけでなく、世界的にみても多く行われている方法となっています。
『脊柱-腹腔シャント』とは
腰椎の内側から脳脊髄液を腹腔に流す療法です。シリコン製のチューブは背中から腹部までの皮下を通ります。
メリットとして、頭を手術しないでいいのですが、腰が悪い患者(高齢者)には不適切なケースもあります。
手術・治療のリスクについて
脳神経外科が担当することになる、手術自体は小規模だといわれています。
しかし、先述した通り、人工のチューブを体内に植え込むことや、患者の多くが高齢者であることなどから、合併症に対する注意が必要となってきます。
シャント術の合併症は軽度なものから重度なものまでありますが、場合によっては再手術が必要となることもあるのです。
一過性で容易に改善される合併症
①少量の頭蓋内出血
②立ち上がり動作の頭痛
再手術が必要な合併症
①チューブの断裂や目的外の位置への迷入
②感染
③腸管損傷
④頭蓋内出血
高齢者の手術後の留意点
手術をすることによって改善されますが、同時に日中の活動が増えることでしょう。
すると、髄液がよく流れるようになって、歩行や座位をしようとすると、頭の痛みを訴えることがあります。
この症状は、バルブ圧を適切に設定することによって改善が次第にみられるでしょう。
また、頭の中に水腫や血腫がみられることがあります。
よって、手術をして数か月は画像検査での定期的な対応が必要です。医師に相談してみましょう。
バルブ圧の設定変更だけで消失することはありますが、意識障害や手足の麻痺などの症状が出てくれば手術が必要となります。
手術をしても改善がみられない場合は、髄液の流れが減少している可能性があるので、管の詰まりがないかの確認を行ったりもします。