高齢者が転倒すると、骨折など大きなケガに繋がることが多く、そのケガが原因で寝たきりとなったり介護が必要になったりするリスクがあります。
高齢者の転倒に関する現状や、転倒に伴うリスクと合わせて、すぐにできる転倒防止の対策についてくわしくご紹介します。
高齢者の転倒は自宅が多い
高齢者の転倒事故が多く起きている場所…それは自宅です。
外へ出かけたときではなく、日常生活を送る自宅での転倒にはさまざまな原因が考えられます。
高齢者が自宅で転倒してしまう原因やタイミングなどについてご紹介しましょう。
転倒の起こりやすい場所
2020年に消費者庁が発表した調査結果では、下記のように報告されています。
- 65歳以上の高齢者が自宅で転倒したという事故情報は5年間で275件寄せられている
- 後期高齢者(75歳以上)では前期高齢者(65歳~74歳)の2.2倍にもなっている
- 転倒した人の8割以上の人が通院や入院の必要なケガを負っている
転倒事故の状況としては、滑る・つまずく・ぐらつく・引っかかるなどがあり、居室・浴室・脱衣所・庭・駐車場・ベッド・布団・玄関・勝手口・階段など、自宅のほとんどが転倒の起こりやすい場所とされています。
転倒の原因
転倒の原因は、外的要因と内的要因に分けることができます。
外的要因 | ・床の段差 ・照明の暗さ(特に足元) ・履いている室内履き(スリッパなど) ・床にある障害物(コード・カーペットなど) |
内的要因 | ・身体機能の低下(視力・筋力・バランスなど) ・病気 ・薬による副作用 ・注意力の低下 |
内的要因はいきなり改善することは難しいことが多いので、外的要因をできる限り解消することが転倒防止に繋がります。
転倒を起こしやすいタイミング
前項でご紹介した自宅での転倒場所を見ると、自宅のどの場所においても転倒事故が起きていることがわかります。
ではどんなタイミングで転倒を起こしやすくなるのでしょうか?
- 夜間のトイレ・起床時
- 体調がすぐれないとき
- 急いだり焦ったりしているとき
- 靴を脱ぐ・着替えなどをしているとき
- 急に動き出したとき
- 薬を飲んだ直後
注意したいのは、靴を脱いだり着替えたりしているときに片足になるタイミングです。
特に玄関は段差があるため、靴がうまく脱げなかったりすると、前につんのめるような形で転んでしまうことがあります。
また血圧降下剤や睡眠導入剤などを服用している場合は、薬を飲んだ直後にふらついて転倒に繋がることもあるので、注意が必要です。
高齢者が転倒した場合に起こるトラブル
高齢者が転倒してしまった場合は、他の世代とは異なるトラブルが起きやすくなります。
注意しなければいけない3つのトラブルをご紹介しましょう。
骨折などの大ケガ
高齢者が転倒・転落をした場合に一番怖いトラブルは、骨折や頭部外傷などの大ケガです。
先に紹介した消費者庁の調査では、転倒をした人の8割が入院・通院が必要なケガを負ったと報告されています。
高齢になるとケガの治りも遅くなり、リハビリなどの効果も出にくくなる傾向があるため、入院期間が長引き、痛みも取れにくくなるのが特徴です。
ちょっと転んだ程度でも、身体に受けるダメージが大きくなるため、ケガの度合いも深刻になってしまうことが多くなります。
歩くことへの恐怖心や不安
一度転倒を経験しケガを負ってしまうと、歩くこと自体に恐怖や不安を感じます。
楽しかった趣味や運動なども意欲が湧かなくなってしまったり、家から出るのが億劫になってしまったり…生活にハリが生まれなくなって無気力になるのです。
活動が低下すると、筋力の衰えなどが生じ、さらなる転倒のリスクを高めることになります。
最悪の場合死亡事故になることも
厚生労働省が発表した2019年国民生活基礎調査によると、高齢者が介護状態になった原因の4番目に『骨折・転倒』が挙げられています。
なんと12.5%もの割合を占めていて、転倒による骨折で寝たきりになることも考えられる危険性が指摘されているのです。
また最悪の場合は死亡事故につながることもあるため、予防の重要性が高まっているといえるでしょう。
高齢者を転倒から守る!すぐにできる6つの対策
高齢者の転倒は、大きなケガや介護が必要になる事態を招く可能性があります。
自宅での転倒はどの場所でも起こり得るため、環境の整備が必要です。
高齢者を転倒事故から守るために、すぐにできる6つの対策をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
部屋を片付ける
部屋を片付ける=床にモノを置かないというのは、転倒の予防策では鉄則です。
- 滑りやすいマットやカーペットは置かない(もしくは滑りにくいような対策をする)
- カバン・洋服などはあるべき場所へ片付ける
- 新聞・雑誌・本などは場所を決めて収納する
- 家具を増やさない(キャスター付きの家具・不要な家具は処分する)
- 電化製品のコードはそのままにしない(ケーブルカバーを取り付けるなど)
その他に動線を確保することも大切!
物を増やさないように心がけ、必要であれば家具の配置替えを行いましょう。
手すりを取り付ける
歩行に不安が出てきているのであれば、自宅に手すりをつけることをおすすめします。
- 玄関
- 階段
- 廊下
- 浴室
- トイレ
など、段差のある所や転倒しやすい所へ手すりをつけるのは、非常に有効な予防策です。
介護保険の認定を受けている場合は、手すりの設置に介護保険の住宅改修補助金が使えます。
大きな事故につながる前に、リフォームで手すりの設置を検討してみましょう。
スリッパではなくルームシューズを履く
高齢者の方は室内でスリッパではなくルームシューズを履く方が安全です。
スリッパは足をつっかけて履くため、かかとが浮いてすり足になります。
スリッパの素材は滑りやすいものが多いので、かかとのあるルームシューズに変更してください。
素足や靴下で歩くことよりも安全ですし、家具やドアなどにぶつけた場合も被害を最小限に抑えることができます。
照明を明るくする
部屋や廊下の照明を明るくするのも転倒防止に繋がります。
足元が暗くてよく見えない…という状況は、転倒を招く危険性が高くなるからです。
特に廊下や玄関などは明るめの照明に変更してみましょう。
廊下などは足元を照らしてくれるセンサーライトが市販されています。
ホームセンターで安く入手できるため、ぜひ活用してください。
段差を作らない
自宅内に段差を作らないことも大切です。
住み慣れた自宅は高齢者の警戒心が薄れる傾向があり、ちょっとした段差を放置してしまうことが考えられます。
バリアフリーになっていない場合は、段差解消のグッズなどを利用してみましょう。
特に注意したいのは部屋と部屋の間の敷居です。
室内用の段差解消グッズはゴムやシリコンなど、柔らかい素材で作られているものも多いので、置くだけでちょっとした段差を安全に解消することができます。
浴室には最大の配慮を
浴室は高齢者が転倒することの多い場所でもあり、危険がたくさんあります。
手すりをつけるだけではなく、浴室の床にクッション性のあるマットなどを置くこともおすすめです。
万が一転倒した場合も転倒のショックを和らげることができます。
まとめ
高齢者の転倒は、大きなケガに繋がることが多く、介護が必要になる原因にもなります。
高齢者の転倒を予防するためには、外的要因をできるだけ整備し、内的要因を理解することが大切です。
転倒をすることで生まれてしまう恐怖や不安は、高齢者の生活を制限してしまうことになります。
すぐにできる対策を行って、高齢者を自宅での転倒事故から守るようにしなければいけません。