通常、病院を受診する際、『西洋医学』か『東洋医学』か考えることはないでしょう。
また、病院のホームページなどをみても、あまりそれについて書かれていることはないと思います。
しかし、医学には西洋医学と東洋医学があり、それぞれ特性があるのです。
今回は、これらの違いについて解説し、高齢者の場合、どのような心得と対応をすればよいかをお伝えします。
西洋医学と東洋医学の違い
現代医学とは?
西洋医学はいわゆる一般の病院で行われる治療で、『現代医学』ともいわれています。
患者さんの心身状態を科学的、局所的な視点で診て、理論的に分析し症状の要因となる病巣や病因を除去していく医療です。
例えば、血液検査や尿検査、身体検査や問診などを行って診断を行います。
東洋医学は経験的な医学です。
患者さんの四診といわれる 望診、聞診、問診、切診などの『東洋医学的診察法』を基に主観的に判断します。そして、今持っている状態を診断するのです。
治療についての違いは?
西洋医学における治療とは、症状や検査の数値、画像、所見などを参考にして総合的に診断します。
その結果、風邪なのか?花粉症なのか?アレルギーなのか?など原因を探りながら、治療薬を投与することで治療を行います。
つまり、西洋医学は科学的根拠を持って、原因となるものを除去するという治療なのです。
それに対して、東洋医学は、健康な状態からどのようにバランスを崩しているかを独自の診察法を用いて判断します。
その崩れたバランスを正しく整えるために漢方薬や鍼灸治療を行い治療を目指します。
からだの健康状態に戻すための『自己治癒力』を高めることが、治療ということになるのです。
よって、原因がはっきり分からないというケースに対しても有効に働くことがあるのです。
治し方に違いがある
例えば、腕時計があるとします。
針が動かなくなり専門店に持ち込むと、原因があり故障していたことが分かりました。
そこで、行った修理がネジの調整でした。
そうです、ネジを調整することによって、時計は再び動きだし直ったのです。
これを西洋医学でいう治療ということになります。
一方、東洋医学の場合は、なぜネジの調整が必要になったのかを考えます。
腕時計はとても精密であり、落とした際の振動が大きく、その影響でゆるんだりした可能性があります。
よって、落としても振動を抑えられることを考えます。
東洋医学では、腕時計を衝撃から守り安定化させて、振動を抑えることによって、ネジがゆるまなくなることで直ったと考えるのです。
要するに、即座に対処する即効性か、ゆっくり時間をかけてでも原因追及していくか、考え方に違いがあるのです。
治療のスタンス
西洋医学では、はっきりした症状が出たり、要因が分かっている疾患に対して、その症状や疾患に効果のある薬を使った治療を実施します。
東洋医学では、なんとなく気分が悪い、体が重い、元気がないなど、症状がはっきりしない状況に対して、自然治癒力を高める漢方薬を使った治療を実施します。
また、西洋医学では病気の原因となる部分を薬や手術で除去することを『治療』と表現するのに対して、東洋医学では、自然治癒力を高める事や病気の予防が『治療』と表現するのです。
西洋医学と東洋医学の具体例
ここでは、どのようなものが西洋医学なのか?あるいは東洋医学なのか?を具体的に解説していきます。
西洋医学の具体例
●画像検査(レントゲン、CT、MRIなど)
●内視鏡検査
●注射
●点滴
●薬の投薬(胃薬、解熱剤、胃腸薬などの市販薬も含む)
●バイタルサインの測定(体温や血圧等)
●体温調整
東洋医学の具体例
●お灸(やいと)
●針治療
●養命酒
●手技治療(ツボ押し)
●漢方の投薬
●吸い玉
一般的な病院は西洋医学?東洋医学?
〇〇〇クリニック、△△△診療所など一般的な医療機関の多くは西洋医学として治療を行っています。
しかし、皆さんも経験から感じられる通り、通常の薬も出るし漢方も出ると思います。
東洋医学と表現すると、難しいと感じる人もいるため、看板などには『東洋医学専門医』とか『西洋医学専門医』などと掲げている病院は少ないです。
要するに、医師がそれぞれ学んで、両方の治療を組み合わせて治療を行うケースがあるというとことになります。
高齢者の場合にはどうか?
例えば肩こりの高齢者がいたとします。
どのように対応しますか?
●自宅で入浴して温めて治す
●自分でツボを押してみる
●鎮痛剤を飲んでみる
●ドラッグストアで市販薬を購入し飲んでみる
●整形外科を受診する
●鍼灸院に行ってみる
色々な方法で肩こりを解消しようとするでしょう。
それは、特別なことではなく、ごくごく普通のことなのです。
ただ、ここで注意しなければならないのは、高齢者だということです。
高齢者は多様な薬を服用しており、内臓や皮膚が弱いです。
本人や家族だけの判断で、強く肩を揉んだり、ツボを押したり、薬剤師と相談をせずに市販薬を飲むなどするのは辞めましょう。
まとめ
西洋医学と東洋医学は、それぞれに特徴があることがお分かり頂けたと思います。
通常、患者さんはどちらかを意識して治療を受けることは少ないかもしれません。
皮膚が弱かったり、持病のある高齢者の場合、ツボ押しやマッサージ等は素人が行うのは危険で、身体にマイナス作用を起こすケースもあります。
市販薬も同じです。
素人だけの判断で服用するのではなく、医師や薬剤師と相談しながら、適切に服用する必要があるのです。
西洋医学も東洋医学も「こっちの方が効果的!」という性質のものではありません。
病気や心身状況に応じて、医師と相談しながら両方を組み合わせて治療を行うようにすれば、効率よく心身状況を改善できることでしょう。