高齢者の日常生活において注意しなければいけないことは、食事にまつわるトラブルです。
高齢になると飲み込む力が衰えたり、歯の欠損や義歯が合わないことによって噛むことが難しくなるケースが多くなります。
食事は毎日行うものですので、在宅で介護を行う場合はどんなトラブルがあるのか、どんなことに注意すべきなのかということを理解しておかなくてはいけません。
この記事では、高齢者に起きやすい在宅介護で注意したい食事トラブルの原因や、対処法などについて詳しく解説します。
高齢者が注意したい食事トラブルの種類
年齢を重ねてくると、食事に関するトラブルを抱えることが多くなります。
食事はいくつになっても楽しみたいものですが、さまざまな原因から高齢者ならではのトラブルが起きてしまうことを知っておきましょう。
低栄養 | ●食欲の減退 ●食事量の減少(活動量の低下) ●欠食 |
食事の偏り | ●味覚の変化 ●好きな物しか食べない |
喉に詰まる むせる | ●飲み込む力(嚥下機能)の低下 ●噛む力(咀嚼機能)の低下 |
身体の状態にもよりますが、高齢者が一人で食事をとることがある場合などは、煩雑さから欠食(ご飯を食べないこと)をしてしまうこともあります。
高齢者は自分で意識をしなくても、食に対する意識が変化しやすいため、家族や周囲の人間がその変化を感じ取らなければいけません。
高齢者の食事にまつわるトラブルは家族や介護をする側の対応で防げることも多いため、実際に起こりやすいトラブルの種類や対処法を知っておくことはとても重要です。
高齢者の食事トラブルが起きる原因
高齢者の食事トラブルが起きる原因は複数あります。
原因がいくつも重なっている場合もあるため、注意深く観察することが必要です。
どのような原因が考えられるのか、主な理由を4つピックアップしてご紹介しましょう。
味覚の変化
高齢になると、急に味覚の変化が現れることがあります。
- 今まで好きだったものが苦手になる
- 嫌いだったものを食べたがる
- 偏ったメニューばかり食べたがる
- 味付けの濃さ・薄さの変化
高齢者は一般的に運動量が減少するため、『お腹が減らない』『食欲が湧かない』など、食事に対する関心自体が低下することも少なくありません。
食欲がない家族に対し、『何か栄養を摂ってほしい』『できるだけ食べてほしい』という思いから、本人の好みに合わせてばかりいると、栄養が偏ってしまい生活習慣病などを引き起こす可能性もあります。
できるだけ本人の希望を聞いてあげることは大切ですが、無理のない範囲で栄養面を考慮してあげることが大切です。
嚥下(えんげ)機能の低下
嚥下(えんげ)とは、食べ物を口の中で噛み、飲み込みやすい大きさに変えて喉⇒食道⇒胃へ送り込むことをいいます。
嚥下機能が低下してくると、食事中や食後に次のような症状が見られるようになります。
- むせたり咳き込んだりする
- 痰が絡む
- 声がガラガラになる
- 食事を残すようになる
- 胸やけを訴える
高齢者によく見られるトラブルの一つが、嚥下機能の低下による誤嚥(ごえん)です。
誤嚥とは、本来食道に送り込まれるべき食べ物や水分が、気道へ入ってしまうこと。
誤嚥を起こしてしまうと、誤嚥性肺炎に繋がることもあります。
嚥下機能が低下することにより引き起こすトラブルは複数あるため、食事介助を行う場合などは注意が必要です。
咀嚼(そしゃく)機能の低下
咀嚼(そしゃく)とは、食べ物を口内でかみ砕いて、飲み込みやすくすることです。
高齢になると咀嚼をする機能が低下することで、トラブルを招くことがあります。
- 義歯の不具合
- 歯の欠損
- 唾液分泌の低下
『よく噛んで食べること』は、全身の健康につながるため、口内にトラブルがある場合は早急に対処して咀嚼機能を低下させないことがポイントです。
寝たきりの方の場合は、口腔ケアを念入りに行い、少しでも自分の歯で噛んで食べることができるようにサポートしなければいけません。
水分不足
人間は年齢を重ねると体内の水分量が減少してきます。
加えて喉の渇きを司る『口渇中枢』が減退することで、脱水になりやすい状況になるのです。
嚥下機能の低下や食欲不振などは、水分不足に直結し、脱水症状を引き起こします。
厚生労働省の調査では、食事から摂取できる水分量は約1,100mlとされているので、食事をしっかり取ることで水分不足を防ぐ効果もあることを知っておきましょう。
在宅介護でできる食事トラブルの予防法
在宅介護の現場では、要介護者=高齢者の食事を作ることも多くなります。
高齢者が食事にまつわるトラブルを起こさないようにするには、どんな対処法があるのでしょうか?
家族が対応できるトラブルの予防法をご紹介します。
食事の形態を変える
食事の量が減っている・飲み込みづらそうな様子があるという時には、食事の形態を変えることを検討しましょう。
飲み込みやすく噛みやすい形態にすることがポイントです。
- 野菜・肉などは一口大の大きさに切る
- 時間をかけて加熱し柔らかくする
- 噛み切るのが難しい場合は繊維質を切るなど隠し包丁を入れる
- 野菜の皮はできるだけ剥く(トマト・ナスなど)
- なめらかになるように裏ごしなどの工夫をする
- とろみをつける
嚥下機能や咀嚼機能は個人差があるため、個々に合った状態を見極めなければいけません。
好き嫌いなどもあるため、一気に行うのではなく、好みを確認しながら少しずつ試してみてください。
高齢者が食べやすい食材と食べにくい食材を知る
高齢者には食べやすい食材と食べにくい食材があります。
食べやすい食材 | ●肉だんご・ハンバーグなどミンチ状にしたもの ●シチュー・カレーなどポタージュ状のもの ●ヨーグルト・アイスクリームなど乳化したもの ●茶碗蒸し・プリンなどムース状のもの ●あんかけなどとろみの付いたもの |
食べにくい食材 | ●きゅうり・キャベツなどの硬い部分のある野菜 ●たけのこ・ごぼう・セロリなど繊維質の多い野菜 ●こんにゃくなど弾力性のあるもの ●海苔・餅など口の中にくっつきやすいもの ●がんも・はんぺんなどスポンジ状のもの |
好き嫌いだけではなく、一般的に高齢者が食べやすい食材と食べにくい食材を把握しておくことで、調理法や材料に工夫をして対処することができます。
とろみをつけるとろみ剤などは市販のものもあり、手軽に介護職を作れる材料も多くあるので試してみてください。
孤食を避ける
可能であれば、高齢者の孤食を避けることも大切です。
家族と一緒に住んでいるのであれば、できるだけ一緒に食事をするようにしましょう。
やむを得ず一人で食事をすることがあるならば、栄養バランスを重視した宅食サービスなどがおすすめです。
一人暮らしの方の場合は、栄養管理ができないことが多く、知らない間に栄養不足・水分不足・栄養の偏りなどが生まれてしまいます。
高齢者向けの宅食サービスは、弁当タイプにしたり、おかずやご飯の形状を変更したりすることもできます。
同居の場合は孤食を避け、楽しい食事の時間を持つことが理想といえるでしょう。
まとめ
食事はいくつになっても楽しみとして残しておきたいもの…不安・不満・痛み・不快感などがあれば、食事自体に関心が無くなってしまうこともあります。
在宅介護においては、要介護者の介護度は異なりますが、自分で食べることができる方の場合は家族と一緒に食べやすい形状の食事を楽しみましょう。
介助が必要な方の場合は、誤嚥に注意して身体の状態にあった形状の食事を提供することで、食の楽しみを継続することができます。
高齢者にありがちな食事のトラブルは、予防や対処が可能なものも多いため、情報収集を行ってトラブルを防げるように注意したいものです。