病気・症状

高齢者の肥満に潜む5つの危険性とは?

若年層に比べると、加齢に伴い食欲低下などによって肥満である高齢者が減少するのが一般的です。

しかし、高齢者でも肥満体型の人がいるのも事実です。

今回は、高齢者の肥満にスポットをあて、健康を害する危険性について解説します。

高齢者の肥満は増えている?

厚生労働省が発表している『国民健康・栄養調査』によれば。男性と女性ともに高齢者の肥満率が高まっている傾向にあります。

詳しいデータをみてみると、1984年に19.7%だった60歳代男性の肥満率になっています。
そして、2019年には35.4%にまで達しているのです。

70歳以上の男性は、1984年の14%が2019年には28.5%と2倍以上に増えるなど、最近の高齢男性の肥満率は高まっているというデータになっています。

女性も同じで2019年は60歳代で28.1%、70歳以上で26.4%という結果となっています。

引用:政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)

男女ともに高齢者の3〜4人に1人が肥満ということになっており、70歳以上の高齢者の肥満率増加は、寿命が長くなったことにより比率自体が高まっていることもありますが、主に加齢による内臓脂肪の増加や生活習慣の乱れなどが原因とされています。

肥満そのものは疾患ではないとされていますが、一定の基準を上回る肥満で、それに起因・関連する健康障害があるケースなどを、肥満症として医学的な治療が必要な疾患であるのです。

年々増加する高齢者の肥満症は問題とされています。

高齢者の肥満の特性

BMIが体脂肪量を正確に反映しないことがある

歳をとると身長が縮み、BMIが実際の数値よりも高めになってしまうことがあります。

また、高齢者の場合は低栄養や心不全、腎不全などの病気によって体がむくむこともあり、BMIだけで体脂肪を判定することは難しいです。

日本ではBMI 22kg/㎡を標準体重としていますが、この数字は60歳未満のデータに基づいた数値となり注意が必要です。

BMIとは

「Body Mass Index」の略で、カラダの大きさを表す指数です。

体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割った値です。

計算機で計算する場合には、下記の方法で計算します。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

また、疾病率が最も少ない、理想的なBMI値は「22」とされています。

画像引用

BMIの数値が高値=必ずしも死亡リスクにならない

BMIの数値が高くても、必ずしも死亡リスクにつながるとは限りません。

実は、死亡リスクを低下させる場合もあると言われています。

心不全、慢性閉塞性肺疾患、ガン、感染症などは体重が減少することによって死亡するリスクが高まる病気と言われており、BMIの数値が低い高齢者への影響の方が大きい可能性があります。

ウエストやヒップ比が重要

高齢者の肥満を正確に判断するには、BMIを重視するのではく、内臓脂肪量の目安となるウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比などから判定することが大切です。

男性の場合・・・ウエスト周囲長が85cm以上

女性の場合・・・ウエスト周囲長が90cm以上

であれば、内臓脂肪蓄積の疑いがあります。

また、腹部CTで内臓脂肪面積が100㎡を超えると、内臓脂肪蓄積があると判定されます。

こうした内臓脂肪蓄積があり、血圧・血糖・ 血清脂質のうち2つ以上が基準値から外れていれば、メタボリックシンドロームと診断されます。

肥満のリスク① 膝関節症

体重が増えていくと身体への負担が増大します。
特に、その負担は関節に負担と感じるようになり、膝関節に関しては、歩行障害を引き起こしてしまうのです。

なかでも、変形性膝関節症で軟骨が擦り減ってしまったり、変形が起こった状態で膝に負担がかかると、痛みも酷く出現してしまいます。

諸説あるようですが、体重が増えると膝に大きな負荷がかかり、膝には体重増加の3倍もの負荷がかかるといわれています。

肥満のリスク② 内臓脂肪の蓄積

内臓脂肪という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

以前は、内臓脂肪の働きはエネルギーの貯蔵のみと考えられていました。

しかし、最近の研究では、様々な生理活性物質(サイトカイン)を分泌していることが分かってきたのです。

内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞から分泌されるサイトカインやホルモンのうち「動脈硬化」を抑制するなどの働きのある良いホルモン等が減少し、逆に血糖を下げるインスリンの働きを少なくさせるなど悪いホルモン等が増加するといわれるようになったのです。

肥満のリスク③ 大腸がんの罹患

肥満になるということは、高脂肪食の食生活であることが多いです。

高脂肪食の摂取によって、大腸がんに罹患しやすいという研究結果が出ています。

では、大腸がんとはなんでしょうか?

まず、大腸の働きですが、主に水分の吸収を行い、便を作る役割を担っています。

大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんであり、便が長い間貯留している『S状結腸』『直腸』にがんができやすいと言われています。
大腸がんにかかる方は増加傾向にあり、がんによる死亡数でも胃がんを抜いて第2位なのです。

肥満のリスク④ 生活動作の低下

肥満になり、体重が増えると動くこと自体が億劫になるばかりでなく、実際に動くことのよって身体に痛みを感じるようになります。

軽運動や簡単な体操もできなくなり、簡単な生活動作の実施も難しくなります。

その結果、下肢の筋力低下を中心に、関節の拘縮なども発現するようになってしまいます。

肥満のリスク⑤ 胆石の発生

まず、胆石ですが、胆汁の通り道である胆道にできる結石で、約8割が胆のうにできる胆のう結石なのです。

胆のうは胆汁という消化液を一時的に蓄え、濃縮する働きをします。

胆汁に含まれるコレステロールが増え過ぎて結晶化すると胆石ができるとされています。

欧米では成人の10~20%、日本などでは5~10%が発症する疾患で、決して他人事ではないものです。

最近は健康診断や人間ドックの際に無症状で発見されることが増えている傾向にあります。

健診の機会の増加や、超音波検査やMRCPなど画像検査の技術が進歩したことに伴い、胆石がみつかる人が増えてきています。

高齢者の肥満解消方法

居宅療養管理指導を受ける

ここまで、高齢者の肥満の危険性やリスクについて解説してきました。

本来なら、食生活や適度な運動によって、肥満にならないように努めていければ良かったでしょう。

しかし、すでに高齢者になれば、なかなか改善は難しくなります。

そのために、是非取り入れて貰いたいのが、管理栄養士による居宅療養管理指導です。

これは、介護保険サービスのひとつであり、在宅の利用者であって通院又は通所が困難な人たちを対象としています。

計画的な医学管理の一環として、医学管理を行う主治医の指示に基づき、疾病治療の直接手段として医師から食事箋が発行される特別食を必要とする人または、低栄養状態にあると医師が判断した人に対して、栄養管理に係る情報提供や指導、助言が行われます。

リハビリのサービスを受ける

肥満の高齢者が自宅のみで体重減少を目指すのは難しいのが現実です。

独居高齢者となればそれは尚更でしょう。

そんな時は、介護保険サービスのなかにある、訪問リハビリを利用しても良いでしょう。

リハビリでダイエット?と思う人もいるかもしれません。

体重減少を目指すには、食事管理や有酸素運動が有効的。

しかし、筋力をつけることによって、基礎代謝を高め効率的に体重減少を行うことができるのです。

特に、小さな筋肉である上半身よりも、大きな筋肉がある下半身の筋力アップを目指すと、効率よく体重減少ができます。

勿論、介護保険を利用していない比較的元気な高齢者であれば、スポーツジムに通って筋肉をつけながら、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、自転車等)を行うのが有効的でしょう。

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