認知症

認知症の兆候チェックリストととるべき行動のフロー

誰しも平等に歳をとります。
だからこそ「あれ?」と違和感を感じたときは、何かと老いのせいにしがち。
本人も家族もすぐに「認知症」と認められないものです。

しかし、本当に認知症という病にかかっていたとしたら、早い治療と適切な対応が今後を左右するといっても過言ではありません。
認知症の兆候を紹介するとともに、とるべき行動もご紹介します。

もしかして認知症?と思ったら

認知症と認めるのは勇気がいるものです。
医療の発達により、薬で病の進行を遅らせることはできるものの、現代の医療ではまだ治ることはないのが認知症です。

そのことを知っていてか、「もし認知症でも治らないんだから、放っておけばいい」と治療をしない方も多くいます。
年相応のもの忘れや、運動能力の低下は誰しも起こりうるものです。
だからこそ、認知症を「ただのもの忘れ」と軽視してしまう気持ちもわかります。

しかし、認知症はれっきとした“病気”です。
認知症を早く自覚し、家族もサポートを始めることは、本人も安心できる生活を送ることができますし、家族の介護の負担を減らすことができます。

問題視するようになったときに治療を開始するのではなく、早期発見し適切なケアや治療をすることで、元気に最期まで生きることも可能となるのです。

もの忘れ?それとも…認知症の兆候6選

家族や自分に訪れた「……あれ?」という違和感を大切にすることで、早くに認知症を発見できる場合があります。
ここでは認知症の兆候を紹介いたします。

季節や時間がわからなくなる

例えば年齢が若い方でも、とっさに「昨晩は何を食べた?」と質問すると、すぐに返事ができないこともあるでしょう。
また、学生時代に覚えた勉強も大人になると、思い出すのが難しいといったことは誰しも起こりうることです。

認知症の方の場合は、時間感覚や季節の感覚にズレがでてきます。
明らかに外が暗くなってきているのに「朝ごはんはまだ?」と話したり、季節にふさわしくない衣服を身につけているようなことがあれば、認知症を疑ってみましょう。

同じ話を何度もする

例えば新婚旅行などの素敵な思い出や、大笑いをして楽しい気分になった話などは、繰り返し話題にあがっても不思議ではありません。その話題を持ち出すことで、会話している相手と心を通わすことができるのであれば、それは普通のコミュニケーションだからです。

ところが認知症の人が繰り返すのは、なんてことのない日常的な会話だったりします。
朝ごはんを食べたあとなのに「お腹がすいた」と話せば、家族は「さっき食べたでしょう?」と返事をするはずです。
しかし、認知症の場合はその会話も忘れてしまい、 20分後に再度「朝ごはんはまだ?」と聞いてきたりします。
冗談めいた様子もなく「また聞いてもいい?」などの前置きがないので、受け取る側も違和感を感じやすい会話となるでしょう。

スムーズに話せない

認知症になると、これまでお話しが好きだった女性が急に塞ぎ込んでしまったりすることもあります。

スムーズに話すことが難しく、相手にうまく要望を伝えられなかったりし、孤独を感じやすくなってしまいます。
「どうせ何を話しても誰も理解してくれない」といった思いから、さらに人と関わることをやめてしまい、さらに語力を失ってしまいます。

喜怒哀楽が激しくなる

急に笑顔になったと思えば、たった一言に激しく反応し、すごい剣幕で怒り出すこともあります。
感情のセーブをかけることが難しく、相手の話をよく理解できないので、さらに苛立ちに繋がるのです。
認知症だと分かっていない相手からすると、自己中心的な会話に聞こえてしまい、余計に対人関係がうまくいきません。

他の人のせいにする

自分が落としたものを「人に盗られた」と言ったりします。
被害妄想が強まり、自分の過失を他人のせいにするようになるのも認知症の特徴です。
そのため、同居の家族は心ないことを言われ、介護疲れに陥ってしまうことも少なくありません。

強いこだわりを持つようになる

自分が特に好きな趣味などは、若い頃から嗜好やこだわりがあるものです。
認知症の方の場合は、そのこだわりがさらに激しくなります。

衣服を脱ぐ順番や、物を置く順番や位置にこだわります。
誰かが助言をすると、突然部屋を追い出したり「何も分かってない」と泣き始めたりし、感情をむき出しにしてきます。
そのため、「頑固」「気難しい」と思われてしまいます。

認知症という病でイレギュラーなことに対応するのが難しいため、できるだけ自分のルーティンを守ろうとするのです。

認知症が疑われたら早めの対応を!行動フロー

これまで老いのせいにしていたものが、もしかして認知症という病だと疑ったとき、多くの方は動揺します。
認知症であることを悲観的に捉えるのではなく、ここから新しい未来をスタートする気持ちで、前向きな行動にうつしていきましょう。

1:家族で話し合う

認知症を疑っている状況では、現状で困っていることがいくつかあるはずです。
多くは、現状の生活を続けるのが困難な出来事があり、家族や本人が悩んでしまいます。
認知症に対する正しい知識がないと冷静に話し合いをするのも難しい場合があります。

このようなときは、住民票をおく自治体の地域包括支援センターに連絡しましょう。
日常で困っていることや不審に感じることを相談すると、的確なアドバイスがもらえます。
「自分だけじゃない」と思えると、何事も心が軽くなるものです。
まずは家族だけで抱え込まずに、相談してみましょう。

2:この時点で受診をすると今後がスムーズ

地域包括支援センターや市役所の福祉課に相談し、認知症がより疑われる状態になると、受診を勧められます。
これはデイサービスや訪問入浴という介護サービス使うのに、介護保険の申請をしなくてはいけないことが理由です。
これまでの人生が健康で、かかりつけの主治医がいない場合、現状を記録する意味でも受診を勧められるのです。

「認知症」という診断は、脳の萎縮がわかるレントゲンや、医師がする問診などで診断がつきます。
認知症というのは、れっきとした病なので医師の診断なくして、周囲が勝手に「認知症だね」と診断していいものではないのです。

家族によっては、本人が「認知症かもしれない」ということをまだ受け入れられる状況になく、病院への受診を促すのが難しい場合もあります。
そんなときは地域包括支援センターなどに相談し、できるだけ多くの方と認知症が疑われる方への受診交渉をできるといいですね。

3:介護保険を申請する

認知症の診断がおりたら介護保険の申請をしましょう。

介護保険の申請は、所定の申込書を市役所かWEBで入手し、必要事項を記入する必要があります。
また、医師の名前や診断名の記入の必要があります。

4:介護認定を受ける

仕事の最中などに介護を必要とする人を日帰りで預かってもらえる施設のデイサービスや自宅にヘルパーを呼びたい場合など、これらは介護保険サービスと呼ばれ、介護認定がおりてない人がサービスを受けることはできません。

介護保険の申請を済ませたら、ケアマネージャーに訪問調査をしてもらい、その調査と医師の意見書をもとに介護認定がおります。
介護度は軽い方から要支援2から、いちばん重くて要介護5になります。原則30日以内に郵送で申請結果が送られてきます。

5:ケアプランを作る

郵送で介護保険の申請結果が郵送され、介護度がわかると使える介護保険サービスが分かるようになります。
この申請結果をもって、居宅介護支援事業所か地域包括支援センターにいきます。

ケアマネージャーと家族、認知症が疑われる本人を含めて「今後どう生活をしていきたいか」「困っていることは何か」といったことをベースに使えるサービスを組み込んだケアプランを作成してもらい、これに沿って介護サービスを開始します。

認知症は兆候がみられたらすぐに対策を

認知症を放っておいても、治るものでも軽快するものでもありません。
認知症の兆候を疑い、少しでも生活に不便がでた時点で受診をし、早期発見に努められるといいですね。

天寿をまっとうするときまで、服薬や介護保険サービスを利用することで、できるだけその人らしい人生を送ることもできるのです。

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