人間誰しも怒るよりも、ニコニコ笑顔で笑った方がいいですよね。
笑うといえば、介護や高齢者分野では『笑いヨガ』が有名です。
『笑い』と『ヨガ』を足した言葉で簡単にイメージしやすく、誰もが挑戦できる療法です。
今回はこの『笑いヨガ』を例に出して、笑うことのメリットを解説したいと思います。
介護を受ける高齢者だけではなく、在宅介護を行っている人、その他介護に携わる全ての人にお読み頂きたい記事となっています。
『笑い』とは
笑うということは、楽しさ、嬉しさ、おかしさなどを表現する感情表出行動の一つであることは言うまでもありません。
笑いは一般的に快感という感情とともに生じ、感情体験と深く関わっています。
また、笑いは感情表現の中でも極めて特殊なもので、人間にしかなかなか表現できないものです。
『笑い』のメリット
①免疫力が上がる
『笑い』や『笑顔』には、 『ナチュラルキラー細胞』という免疫細胞を活性化させ、免疫力をアップする効果があるとされています。
面白いテレビ番組や映画、YouTube、SNSなどを観るなどして、ひとりで笑っていても効果的です。
作り笑いでも、口角をあげて微笑んでいるだけで、表情筋の動きは脳に伝わりますので、ひとりで過ごす時間に免疫力を高めることができるとされています。
人と笑顔で向き合うことでも、お互いの免疫力がアップします。
ニッコリ笑顔で挨拶を交わすだけでいるのと、無表情でいるのは、せっかくの免疫力を高める機会を逃していることになるのです。
②最強のエイジングケア
本物の笑顔には、顔のリフトアップ効果も期待できます。
笑顔には2種類があります。
①『デュシェンヌ・スマイル』・・・・本物の笑顔
②『ノンデュシェンヌ・スマイル』・・・・作り笑顔
笑顔に表出する比率で算出される『デュシェンヌ・スマイル』は、目尻が下がり、口角と頬が引き上がっているのが特徴です。
笑顔は顔の筋肉である表情筋の動きによってつくられて、『素敵な笑顔』の人は、表情筋の動きがスムーズだと言われてています。
つまり筋肉がきちんと使えていて、そして笑顔によって鍛えられているということです。
反対に表情筋が硬く動きにくいという人は、どうしても笑顔もぎこちなくなるのです。
少しイメージしてみて下さい。しかめっ面の人は頬も弛んでいるような気がします・・・。
③前向きな気持ちになれる
笑顔になることで顔の表情筋が刺激を受け、それが脳にフィードバックされると、ポジティブな感情が生まれます。
それが、アメリカの心理学者トムキンス氏が発表した『顔面フィードバック仮説』です。
顔面フィードバック仮説について
顔面フィードバック仮説の根拠となる実験として、漫画雑誌を読んだ後に、その漫画の面白さを評価してもらうというものがあります。
実験参加者は普通の状態で漫画を読んでもらうのと、口にペンをくわえた状態で漫画を読んでもらうという2つ条件で実験に参加してもらいました。
口にペンをくわえるという条件は、強制的に目と口の筋肉が動き、笑顔の状態になります。
実験の結果、口にペンをくわえた状態で漫画を読んだ方が、漫画の内容をより面白いと評価するということが判明しました。
この実験結果は、顔の表情が疑似的にでも笑っている状態になることで、顔の筋肉の反応がフィードバックされて面白い・楽しいという感情が生起した可能性を示唆しています。
ただし、顔面フィードバック仮説はあくまで「仮説」であり、現段階において、絶対的な理論ではありません。
参照HP:テルダ医療福祉カレッジ
顔の筋肉は、感情を司る脳の『A10神経群』が密接に関係していることから、脳科学の視点からも、笑顔を浮かべていると脳が楽しいと勘違いしてポジティブな思考になりやすくなります。
反対に、しかめっ面をしているとポジティブな気持ちにはなりにくい、とも言えるのです。
大人になると、ネガティブな気持ちをごまかすための笑顔も作れるようになります。
しかし表情には、『感情の足跡』が残るとされています。
3分間、ネガティブなことを考えてから笑顔をつくると、ネガティブな感情の足跡が笑顔に残るという実験結果があるのです。
それは、笑顔が自律神経に作用していることが関係していると考えられます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、ネガティブなことを考えているときはストレスを感じているので交感神経が優位になります。
自律神経を自分でコントロールすることは難しいので、笑顔を作ってもすぐには切り替わらず、ネガティブな考えをしていた後の笑顔にも影響している可能性があるのです。
④人間関係が円滑になる
高齢者同士のコミュケーションでも、笑顔が多ければお互い気持ちよく人間関係が構築されるのは言うまでもありません。
笑顔の『キャッチボール』をすることによって、その場だけではなく、その後のコミュケーションも円滑に行えるようになるのです。
むやみに笑っていればいいのではなく、笑顔のタイミングが噛み合っているか、が大切です。
笑顔は人生をよりよくする、最大のコミュニケーション術だと言えるでしょう。
⑤周りに伝染する
もともと人の脳には『顔細胞』という、顔や顔のように見えるモノを瞬時に認識する機能が備わっています。
このような経験はありませんか?
車のフロント部分や天井の染み、野菜など顔ではないモノに顔っぽさを見つける・・・
これが顔細胞なのです。
つまり、人は無意識のうちに人の顔に敏感に反応している。
赤ちゃんが人の顔をジーッと見つめるのもそのためです。
かわいい赤ちゃんに見つめられると、こちらも笑顔がこぼれます。
赤ちゃんは特に笑顔に反応しますから、その顔を見て笑ってくれるとさらに嬉しい気分になります。
これと同じことが、高齢者同士でも笑顔の人に出会ったときに起こっているのです。
笑顔は人から人へと伝染します。
私たちは、顔細胞の働きによって表情に敏感に反応し、反射的に伝染していきます。
自分以外の個体の行動を見て、自分が同じ行動を取っているかのように反応する脳の神経細胞「ミラーニューロン」が働くからです。
ミラーニュートンとは
ミラーニューロンとは、鏡を見ているかのように、他の個体の行動を見て、自分自身までも同じ行動をとっているかのように反応をする、高等動物の脳内の神経細胞を指します。
笑顔の人につられて笑顔になると表情筋が刺激されます。
すると、ドーパミンやエンドルフィン、セロトニンといった快に関する神経伝達物質が分泌され、気分がよくなるのです。
すると、相手もまた笑顔につられて笑顔になるので、お互いにいい気分が伝染するのです。
⑥幸福度が上がる
笑顔が素敵な人をみると・・・
「あの人は、きっと幸せだからあんなに素敵な笑顔なのだろう」と思うことがあります。
しかし、実際は逆で「笑顔が素敵だから、幸せになっている」というケースが多いのです。
笑顔は心身の健康が幸福度に繋がるほか、仕事のチャンスや素敵な出会いは、人を介してやってくるのです。
笑う門には福来る!ということなのです。
笑いヨガに挑戦してみよう
『笑いの体操』と『ヨガの呼吸法』とを合わせた健康法のことです。
ヨガで行う腹式呼吸を取り入れているので、名前に『ヨガ』と入っていますが、笑いながらヨガをするわけではありません。
ユーモアやジョークなどは使わず、理由なく笑います。
意識して笑うため、笑い方もぎこちなく感じますが、みんなで集まって笑ううちにだんだん楽しくなってくるのです。
ヨガの神秘的なイメージと違いますが、笑いヨガを実施することで新鮮な酸素を体内にたくさん取り込むことができるため、元気になるのを実感することができます。
介護する人も『笑い』を意識して
要支援・要介護状態、高齢者だけではなく、介護をする人も笑いを意識して、普段のケアを行うと良いことがあります。
自分の生活を営みながら、介護をするのはとても大変なことですが、気分転換できる時間をつくり、『笑い』に繋げられるように考えてみて下さい。
「介護が大変で笑う事なんてなかなか出来ない・・・」
「笑う暇なんてない・・・」
「いつ笑うの?」
そんな声が聞こえてきそうですが、自分で口角を上げて意識的に笑うだけでも構いません。
『楽しい→笑顔』だけじゃなく『笑顔→楽しい』にもなるのです。
介護する人も『笑い』を取り入れて、なるべく幸福感のある介護を提供できるいいですね。