介護のはじまり

『看護』と『介護』の違いとは?医療行為についても解説!

介護と看護って、何がどのように違うか明確にお分かりでしょうか?

介護保険制度が施行された2000年当初は、それほど明確化されておらず、介護スタッフがやむを得ず医療行為を行うケースもあったりしました。

ところが、それでは役割と専門性が混合するため、国も明確化する動きを強めて現在に至っています。

これから高齢者のケアを家族がしなければならない人、あるいは今現在ケアをしているが、両者の違いが分かりずらい人のために納得していただける記事にしました。

資格の違い

看護師

看護師の仕事は、傷病者やじょく婦(産後間もない女性)の療養上の世話をしたり、診療の補助を行うこととされています。

『人を看る』という看護師独自の視点で、対象となる人を身体や精神、社会、文化などさまざまな側面から捉え、情報を総合的にアセスメントし、必要な看護を的確に判断します。

病院や診療所などの医療機関のほかに、訪問看護ステーションや介護・福祉関連施設など、人々の生命と生活を支える専門職として、看護師が活躍する場は多いのが現状です。

今後もさらに高齢化が進むため、これからの医療を支えるためには看護師が多様な場でさらに役割を発揮することが期待されています。

看護師は2種類ある

看護師には、正看護師と准看護師の2種類があります。

看護師は国家資格の厚生労働大臣の免許になります。

准看護師と分かりやすくするために正看護師と言われることもあります。

★正看護師・・・国家資格の厚生労働大臣の免許

★准看護師・・・都道府県知事の免許(看護師と比べると資格取得までの難易度が低い)

病院や施設によりますが、行える業務の範囲は看護師とほぼ変わりません。

しかし准看護師は、正看護師のように自己判断で業務を行うことができず、医師や歯科医師、看護師の指示を受けて業務を行います。

介護福祉士

介護福祉士は、介護に係る一定の知識や技能を習得していることを証明する唯一の国家資格です。

介護に関する資格は複数存在しますが、介護福祉の専門職である介護福祉士が唯一の国家資格です。

介護は生活全般に関わる広範な仕事ですが、多くの人々は『介護』というと、おむつを交換するなどの排せつ介助やベッドから起こすなどの移乗介助、暑い浴室の中で行う入浴介助などをイメージする思います。

しかし、介護福祉士が行うのは、これらの介助を行いながら、介護ニーズのある方々の生活に向き合い、その方の生き方や生活全体の支援なのです。

介護サービス利用者のニーズを、生活歴や観察を通して集約するとともに、その方の心身の状況等を理解したうえで、その方が、その方らしく生活を継続していくためには(生活の質を担保するためには)どのような課題があるか、いかにその課題に向き合っていくか等を分析し、多職種と連携しながら、環境の整備を行って、その方に最適な介護を提供する役割を担っています。

在宅における役割

看護師

在宅における看護師の役割は、病気や障がいを持った方の自宅に訪問し、生活上必要な看護や医療行為を行う業務全般を行います。

『訪問看護』と呼ばれる場合もあり、主治医の指示のもと、利用者と家族に寄り添いながら、健康面・生活面のサポートと必要な医療行為を行うのが主な役割です。

看護師は利用者の健康状態の確認から看取りまで幅広く、場合によっては家族へのフォローも必要です。

まず、利用者の体調管理ですが、身体や精神が前日と比べてどのような状態になっているか判断し、抱えている病気や障がいの進行度を把握します。

また、家に配備した人工呼吸器などの医療機器の調整・交換、在宅で可能な範囲のリハビリテーションも重要なケア内容の一つです。

主治医の指示に基づき、点滴注射などの医療行為も行います。

体調の急変によるオンコール対応も求められるので、臨機応変な処置ができる判断力が必要とされます。

利用者の症状によってはターミナルケアや看取りが発生する場合がありますので、療養環境の保全、家族への精神的なケアも大切な役割になります。

介護福祉士

在宅における介護福祉士の役割は、住み慣れた自宅や地域で生活を続けられるため、在宅介護を希望する人に対して介護を行うのが役割となっています。

介護を担当するご家族の負担が大きいイメージもありますが、介護をする人はご家族だけではありません。

希望によって、介護サービスを利用し介護福祉士などプロが関わりながら、本人や家族を支えたりします。

介護福祉士は、介護保険サービスに大きく関わる資格のひとつであり、今後も高齢社会を支える人たちだといえるでしょう。

具体的な業務

ここでは、日々の具体的な業務について説明を致します。

看護師

①注射

②点滴

③創傷処置

④検体採取

⑤状態観察

⑥バイタルチェック

⑦外来患者の問診・誘導

⑧検査の説明・結果確認

⑨カルテの記録・整理

⑩カンファレンス

⑪勤務交替時の申し送り

⑫ナースコールの対応

⑬巡回

⑭入院患者の看護計画の立案

⑮入院時オリエンテーショ

⑯車いす・ストレッチャーを使った移乗・移送

⑰食事・入浴・排泄の介助

⑱薬の配布

⑲ベッドメイキング

⑳体位変換

㉑健康相談

介護福祉士

①食事介助

②排泄介助

③特段の専門的配慮をもって行う調理

④清拭(全身清拭)

⑤部分浴・全身浴・洗面等

⑥身体整容

⑦更衣介助

⑧体位変換

⑨移乗・移動介助

⑩通院・外出介助

⑪起床・就寝介助

⑫服薬介助

⑬自立生活支援のための見守り的援助

医療行為とは何か

高齢者の支援をしていくなかで、医療ケアを必要とされる方もいます。

しかし、医療に関する免許を持っていない介護福祉士等は、基本的に医療行為を行うことはできません。ただし、一部の医療行為が厚生労働省によって許可されているものもあります。

ここでは、介護福祉士を含む介護職に認められている医療行為の種類や医療行為を行える条件を解説します。

『医療行為』と『医療的ケア』の違い

医療行為とは、傷や病気の診断・治療、または予防のために、医学に基づいて行われる行為のことです。

医療行為を行うことにより人体に危害を与える可能性があるため、医師や看護師などの医療資格者のみに認められています。

一方で、医療的ケアとは、自宅で家族などによって日常的・継続的に行われている医療的行為をさします。

介護現場でのケアが医療行為であるかどうか、また介護職が行ってもよい行為かどうかの判断が難しかったため、2005年(平成17年)に、厚生労働省が「医行為でない行為」を明示されたのです。

介護職員が行える医療行為

介護職員が出来る医療行為については、資格を取得したり研修を受けたりするなど、一定の条件を満たした上で、「たんの吸引」「経管栄養」の特定医療行為を介護職が実施できるようになりました。

① たんの吸引
のどの奥にたまったたんを、口腔内・鼻腔内などからチューブを使って吸い取り、呼吸を楽にすることです。

自力でたんを吐き出せない方が呼吸困難や窒息などになるのを防ぐために行います。

介護職が実施できるたんの吸引は、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の吸引です。

② 経管栄養
経管栄養とは、口から食事を摂ることが難しい、あるいは誤嚥の危険性が高い場合に、鼻・胃・腸に挿入したチューブから流動食や栄養剤を送り、栄養補給する方法のことです。

介護職が実施できる経管栄養は、「経鼻経管栄養」「胃ろう」「腸ろう」の3種類です。

介護職員が実施できない医療行為

①眼軟膏

②経皮吸収型製剤

③吸入薬の介助

④褥瘡の処置

⑤摘便

⑥インスリン注射

⑦血糖値測定

介護職員が実施できる医療的ケア

①体温測定(水銀体温計・電子体温計・耳式電子体温計)

②自動血圧測定器で血圧を測定

③入院治療の必要がない人に、動脈血酸素飽和度を測定するためにパルスオキシメータを装着する

④軽い切り傷や擦り傷、やけどなど、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(ガーゼの交換など)

⑤爪切りで爪を切ったり爪ヤスリでやすりをかける

(爪そのものや周囲に化膿や炎症などの異常がない場合)

⑥歯ブラシや綿棒などを使って、歯・口腔粘膜・舌に付着している汚れを取り除き、清潔にする

(重度の歯周病などがない場合)

⑦耳掃除をして耳垢を取り除く(耳垢塞栓の除去を除く)

⑧ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てる(肌に接着したパウチの取り替えを除く)

⑨自己導尿を補助するための、カテーテルの準備や体位の保持などを行う

⑩市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器で浣腸する

医療行為については下記のサイトを参考に記載しています。

厚生労働省【医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について】

在宅において家族は医療行為が出来るのか?

家族には例外として医療行為の一部は認められています。

その根拠となるのが『違法性阻却事由』というものになってきます。

違法性阻却事由とは

『違法』とは、法律に違反することで、『阻却』とは、しりぞけることです。

文字どおりの意味としては、法律違反をしりぞけるということになります。 

広辞苑によると・・・

『違法性阻却』の意味として、「形式的には法令に反し、違法を推定される行為であっても、特別な事由があるために違法ではないとすること」と記載されています。

特別な事由として刑法では、正当防衛、緊急避難、正当行為の3つがあります。

家族ができる医療行為

①目的が正当であること(患者の治療目的であること)

②手段が正当であること(医師の判断に基づき、十分な患者教育、家族教育を行った上で、適切な指導及び管理の下に行われること)

③法益侵害(危険の発生)よりも得られる利益(患者の通院負担の解消)が大きいこと

④法益侵害の相対的軽微性(侵襲性が比較的低いこと、行為者は患者との関係において家族という特別な関係にある者に限られていること)

⑤必要性・緊急性(医師が必要と判断していること。患者の通院負担を軽減する必要があると認められること)

などがあります。

まとめ

これまでのように、『看護』と『介護』には違いがあります。

しかし、利用者や患者に関わる中では、同じチームとして連携して取り組むのがプロですし、家族が介護保険サービスを利用するにあたっては、どちらも同じ高齢社会を支えるプロであることは間違いありません。

自宅で介護を行う(在宅介護)上では、特に医療行為(医療的ケア)について理解をしておき、介護の領域では行えないケアもあることを理解しておきましょう。