病気・症状

介護者への感染も?高齢者のかかりやすい疥癬(かいせん)に関する基礎知識

年齢を重ねると、皮膚トラブルに見舞われることが増えてきます。

高齢者施設などでも起こる皮膚の感染症は、患者さんはもちろん、介護を行う人にも感染することがあり、十分な注意が必要です。

この記事では高齢者に起こりやすい疥癬(かいせん)という皮膚の感染症についてご紹介します。

疥癬(かいせん)とは?

皮膚の感染症にはさまざまな種類がありますが、疥癬(かいせん)という病名を聞いたことがありますか?

疥癬は対処を間違えると感染が拡大し、介護者にも症状が出てしまう感染症の一つです。

疥癬とはどのような病気なのか、概要や原因などについてご紹介しましょう。

疥癬の概要

疥癬とは、ヒゼンダニ(疥癬虫)が皮膚の角質層に寄生することにより生じる皮膚感染症です。人から人へ感染し、介護を必要とする家族内での感染や老人ホームでの感染がよく知られています。一度感染すると、約1〜2か月程度の潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)を経て強いかゆみと赤い発疹が起こります。

疥癬はヒゼンダニが皮膚の角層に感染することで発症します。ヒゼンダニの成虫は大きさ0.2~0.4mmで、角層内部で産卵し繁殖します。感染後すぐには症状が現れません。感染してから4〜6週間かけて多数のダニに増殖し、その虫体・脱皮殻・糞がアレルギー反応の原因となり、激しいかゆみが始まります。

疥癬について | メディカルノート

疥癬は生きているダニが皮膚の角質層に寄生するため、通常の虫刺されなどよりも強い痒みが生じるのが特徴です。

痒みで掻きむしってしまうことでさらなる炎症を起こしたり、掻きむしったときに落ちる皮膚の中でダニが生きていることで、感染拡大を招いたりします。

非常に感染力が強いことも特徴なので、疥癬にかかったことがわかっったら、すぐに対処することが求められます。

疥癬の種類

疥癬には通常疥癬と角化型疥癬の2種類があります。

通常疥癬
長い時間、肌と肌、手と手が直接触れることで、ダニが移動して感染します。少しの時間ではほとんど感染しません。まれに、患者さんが使用した寝具や衣類などを交換せずにすぐ他の人が使用することで感染することもあります。感染してから症状が出るまでの潜伏期間は1~2か月です。


角化型疥癬(ノルウェー疥癬とも呼ばれることもあります)
ダニが多く、感染力が強いため、短時間の接触、衣類や寝具を介した間接的な接触などでも感染します。また、剥がれ落ちた角質にも多数の生きているダニが含まれていて、それが付着することでも感染します。角化型疥癬の患者さんから感染する場合、4~5日後に発症することもあります。なお、角化型疥癬患者から感染した場合でも、まずは、通常疥癬として発症します

疥癬(かいせん)を正しく知りましょう|和歌山市感染症情報センター

より注意しなければいけないのは、やはり感染力の強い角化型疥癬です。

角化型疥癬から感染をしても、発症するのは通常疥癬としてなのが特徴。

疥癬が疑われる場合は、早急に診察を受け、適切な対応を行わなければいけません。

疥癬(かいせん)の主な症状

疥癬には2つの種類があり、感染力や対応が異なります。

2種類の疥癬の症状について、くわしくご紹介しましょう。

通常疥癬の症状

通常疥癬の症状の特徴は、丘疹(きゅうしん)・結節(けっせつ)と呼ばれる赤いブツブツと、ダニが皮膚の中を移動したときにできる疥癬トンネルです。

疥癬トンネルは手のひらや指の側面に見られることが多く、丘疹は腹部・胸・足・腕などに表れて強いかゆみを伴います。

結節は男性の外陰部にできることがほとんどです。

角化型疥癬の症状

角化型疥癬の症状として特徴的なのは、垢が増えて固くなったような状態になることです。

灰色や白っぽい黄色の状態で、見た目はかさぶたのようになっています。

症状が発症する部位は全身で、なかには爪にまで発症してしまうことも。

かゆみの感じ方には個人差があり、まったく痒みを感じないという人もいるのが特徴です。

疥癬(かいせん)に罹患した場合の注意点

疥癬の感染が疑われる場合には、早急に適切な対処を行う必要があります。

疥癬に罹患した場合の注意点を3つご紹介しましょう。

適切な治療を受ける

もっとも重要なのは医療機関で受診し、適切な治療を受けることです。

疥癬の治療には塗り薬や飲み薬などがあり、患者さんの症状によっては同居の家族へ予防的治療を行うこともあります。

まずは医師の診断と治療方針を確立することがポイント!

自己判断せずに適切な治療を受けることで、感染拡大や症状の悪化を防ぐことができます。

直接の接触を避ける

要介護者の感染が判明した場合、できるかぎり直接の接触は避けましょう。

  • 同室で寝る
  • 身体介護時は手袋や予防着を着ける
  • 入浴介護の際は必ず衣服を着用する
  • タオルなどの共用をしない

ただし疥癬の種類や患者さんによって、症状には個人差があります。

過剰な隔離などは大きなストレスになる可能性もあるので、通常の生活における注意点も、受診時に確認しておくと良いでしょう。

清潔な環境を保つ

家庭内に患者さんがいる場合は、清潔な環境を保つことも重要です。

  • 衣類や寝具などはこまめに交換する
  • 衣類の着脱を行った場合は掃除機をかける
  • ベッドの掃除も毎日行う

また洋式トイレから感染したという報告もありますので、トイレの使用後もこまめに掃除を行うようにしましょう。

もし家族が感染してしまったら?

万が一要介護者が疥癬に感染していることがわかった場合、どのような対応を取るべきなのでしょうか?

通常疥癬角化型疥癬
隔離の必要性特になし治療開始後1~2週間は個室が望ましい
接触時の注意手洗いは励行・予防着は症状による手洗い・予防着は必須
洗濯ビニールに入れて運搬し通常の洗濯でOKビニールに入れて殺虫剤を噴霧し24時間密封後に洗濯・乾燥機を使うことが望ましい
入浴制限なし入浴は最後・脱衣所に掃除機をかける
参考:疥癬(かいせん) | 皮膚科学関連医療薬品のマルホ

疥癬は対応を誤ると介護者にも感染します。

特に免疫が低下する基礎疾患などをもつ家族がいる場合は、できるだけ接触を避け、消毒・乾燥を心がけましょう。

まとめ

疥癬とは、小さなダニが人の皮膚に寄生することで起こる皮膚の感染症です。

高齢者はかかりやすい傾向にありますが、対処を誤ると介護をしている家族にも感染する病気なので、正しい対処が求められます。

疥癬には通常疥癬と角化型疥癬の2種類があり、それぞれ症状・特徴・対応が異なるため、疥癬が疑われる場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

通常疥癬は非常に強いかゆみが症状の特徴ですが、角化型疥癬は感染力が強いにもかかわらず、かゆみが出ないこともあり、注意が必要です。

疥癬という病気の特徴を知り、万が一罹患した場合には医療機関の受診が必須になります。

正しい対処法と適切な治療が行われれば、症状は自然と回復してきますので、自己判断をしないようにしましょう。

  • LINEで送る