事例集

終活にまつわるトラブル・終活を行う母親と息子の本音とは?

自分の人生の最期を自分らしく迎えるための終活…近年では終活に関する知見も広まり、著名人などの終活がメディアで取り上げられることも増えてきて来ます。

「自分が死んだあと、遺された家族に迷惑をかけたくない」という気持ちは、誰も同じかもしれませんが、中にはちょっとしたすれ違いから、終活が大きなトラブルに繋がってしまうことも…。

この記事ではある母親と息子の終活にまつわる事例をご紹介します。

終活における注意点がわかる内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

終活は一人で行うもの【母親の気持ち】

Aさんは甲状腺がんや乳がんを患ったものの、寛解して70代の半ばでも活動的な生活を送っている女性です。

Aさんのご主人は40代で他界しており、一人息子のBさんとは良好な関係を築いていました。

Bさんが結婚し独立した後は気丈に一人暮らしを行い、地域のボランティア活動などにも従事する元気な方でした。

息子に迷惑をかけないのが終活の意義

Aさんは友人から終活に関する話を聞きました。

終活を始めたという友人から話を聞いたAさんの心に刺さったのは遺された家族に迷惑をかけないための整理というワード。

「一人息子のBさん夫婦や孫たちには迷惑をかけたくない」というのがAさんの信条だったため、さっそく終活に関する情報収集を始めました。

Aさんは幸い経済的には恵まれていたため、身の回りの整理や不用品の処理などを業者に依頼したり、エンディングノートを作成したりしながら、着々と終活を進めていったのです。

自分一人なら…という考えから家まで売却

生前整理を行ったAさんは、ガランとした家の中で「この家は自分一人には広すぎる」と感じました。

息子のBさんはすでに自分の家を建てていて、AさんもBさんとは同居はしないと決めていたため、このままこの家に住むのはどうなんだろうという疑問が浮かび上がってきたのです。

年齢をさらに重ねていけば、この広すぎる家を持て余すことになる…そう思ったAさんは、自宅を売却したお金を活かして、サービス付き高齢者向け住宅への入居を検討し始めました。

そして「息子に迷惑をかけたくない」というただそれだけの理由で自宅を売却し、一般型のサービス付き高齢者向け住宅への入居を決めてしまったのです。

終活に関する知識が足りない?

Aさんの決断を知った息子のBさんは、慌てて連絡を取り上京しました。

BさんがAさんと話し合えたのは、すでに自宅の売却が決まった後…Aさんの急な決断にBさんは驚いたといいます。

「自分にとって実家は大切な存在。おふくろが一人で生活していることに不安はあったが、なぜ売却することの相談をしてくれなかったのか」と親子喧嘩に発展するトラブルとなってしまいました。

終活は身の回りの物を全て整理することではないのです。

これから自分が最期を迎えるまでの期間も考慮した上で、取捨選択をしていく必要があったのですが、Aさんは非常に極端な終活をしてしまったことになります。

息子に相談しなかった理由とは?

Aさんが息子のBさんに相談しなかった理由は、「自分のことは自分で決める」「誰にも迷惑はかけない」という少々意固地な性格が起因していたようです。

40代で夫を亡くしたAさんは、ひとり親としてBさんを立派に育て上げなければいけないという使命感を持っていたといいます。

Bさんの結婚後はかわいい孫にも恵まれ、自分の行ってきたことに自信が持てて、このまま終活を行って誰にも迷惑をかけない最期を望んでいたのです。

しかし自宅まで売却し、勝手にサービス付き高齢者向け住宅への入居を決めてしまったAさんに対し、Bさんの腹立たしい気持ちはなかなか治まることがありませんでした。

相談も話し合いもなく…【息子の気持ち】

親の高齢化はどの子ども世代にものしかかる問題の一つです。

さまざまな事情から離れて暮らす親子も多く、独居の高齢者を見守るケースも少なくありません。

今回のAさんの終活にBさんはどのようなことを感じたのでしょうか?

嫁姑の不仲が遠ざけた親子の距離

実はBさんの妻とAさんは、あまりうまくいっている関係ではありませんでした。

過干渉気味のAさんにBさんの妻は距離を取ることを望み、Aさんと同居を検討したときも妻に反対されていたのです。

実家に帰ることすら快く思っていなかった嫁を置いて、Bさんと子供たちとだけで帰省することも多かったといいます。

お互いにハッキリとは言わなかったものの、AさんとBさんの妻との不仲が親子の関係も遠ざけてしまっていたことは否めない事実でした。

母親の焦る気持ちが理解できない

BさんはAさんが焦っているように見受けられたと言います。

Aさんは以前大病はしたものの、後遺症などもなく、毎年の健康診断では異常なしと言われていたため、Bさんはまだまだ自分の好きなことを楽しめる状態だと思っていたのです。

Aさんと妻との関係に懸念はありましたが、万が一介護が必要になる状態になったら、自分達が関わっていこうと決めていたそうです。

それなのに急に終活をはじめ、身の回りの整理だけではなく自宅まで売却するという暴挙(Bさんにとってはこの言葉が一番当てはまる)に出たAさんの気持ちが、どうしてもわかりませんでした。

自分の育った実家の売却を知って

Bさんが実家の売却で一番ショックだったのは自分の帰れる実家がなくなってしまったことでした。

小さい頃からの思い出や、幼馴染などが暮らす地元に帰る場所がなくなり、母親は縁もゆかりもない土地のサービス付き高齢者向け住宅へ入居することを勝手に決めていた…Aさんから「これはあなたの物だから持って帰って」と言われた荷物を見たときに、「なぜ相談してくれなかったのか」と大きな声を出してしまったそうです。

Bさんは詐欺などの心配もしていましたが、幸い売却額などは妥当な金額で、すぐに買い手も付いたのですが、急に実家がなくなることに何とも言えない寂しい気持ちになったと言います。

また二人三脚で歩んできたと思っていた母親が、自分だけで思い出を処分したことに複雑な感情を抱いたそうです。

母親の終活を止めたかった?

Bさんは終活自体を否定しているわけではなく、Aさんの迷惑をかけたくないという気持ちは理解できました。

自分にも子どもがいるため、「年老いてきたときに同じ気持ちを持つだろうと思う」と言うのです。

しかしBさんにとっての終活とは、自分だけで行うものではなく、家族と協力して行うものなのではないかと感じていました。

母親が自宅を売却するまでに何も相談してくれなかったことは、本当にショックだったといいます。

元気だろうと思ってあまり連絡せずにいたことで、母親の考えていることに気付けなかった自分もいけなかったと反省しているそうです。

この事例から学べることとは

終活は確かに遺された家族へ迷惑をかけないための活動です。

特に何をしなければいけないという制約はありませんが、もっとも重要なのは自分の思いを家族に伝えることなのではないでしょうか。

「終活をしようと思う」ということを家族に伝え、取捨選択に関しても相談をしながら行うことが非常に重要になります。

Aさんの例は少々極端ではありますが、自分が亡くなった後のことだけではなく、現時点から亡くなる時点までの生活を考慮することが必要です。

終活は一人では行わず、周囲と相談して行うものだということをこの事例から学んでいこうと思います。

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