人生100年時代…元気で長生きすることは誰もが望むことですが、高齢化社会に付随する問題として、介護の問題は避けて通れないものといえるでしょう。
介護が始まる時期やきっかけ、要因や介護度などは人により異なります。
しかしどんな背景があるにせよ、介護にはお金の問題がついて回ることは周知の事実。
実際に自分が介護状態になったり、親や家族が介護状態になったりすれば、お金の問題が大きな課題になることは想像に難くありません。
そこでこの記事では、介護のお金に関する情報をご紹介します。
ポイントを5つに分けて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1・介護費用の負担
介護費用の負担は、年齢・所得・介護度によって異なりますが、いずれの場合も自己負担額は発生します。
費用の負担が家計を圧迫するケースも少なくないため、介護費用に対する備えも必要といえるでしょう。
介護サービス・介護用品の費用負担
介護サービスの利用や介護用品の購入をするときは、介護保険負担割合証に記載されている利用者負担割合に応じてサービス費用の負担が決まります。
【介護保険の利用者負担割合】
65歳以上 | 1割 |
65歳以上で一定以上の所得がある場合 | 2割 |
65歳以上で特に所得の高い場合 | 3割 |
40歳~64歳 | 1割 |
介護保険を利用するときは、要介護度別に介護保険からの支給限度額が『単位』で決められています。
その範囲内で利用した分のサービス費用の1割から3割までのいずれかが自己負担となるため、まったく自己負担なしで介護保険を利用することはできません。
自己負担の計算方法や支払い手続きは複雑であり、利用者や家族にとって理解しにくい場合があります。
また自己負担の負担額が変動することもあり、予測が難しいという課題があるのも現実問題の一つです。
医療費の負担
持病がある方の場合は、通院・入院・処方箋などの医療費がかかることも考えておく必要があります。
【医療費の一部負担(自己負担)割合】
75歳以上 | 1割負担 |
75歳以上(現役並み所得者) | 3割負担 |
70歳~74歳 | 2割負担 |
70歳~74歳(現役並み所得者) | 3割負担 |
高額療養費制度や確定申告時の医療費控除などの制度もありますが、症状が重い場合や継続的な加療が必要な場合は、医療費も大きな負担となります。
負担の不均衡
介護費用の負担は、家族や関係者によって不均衡になることがあります。
一部の家族が負担を背負い込み、経済的な負担が偏ってしまうことで、介護を担当する家族の収入や資産によって差が生じ、家族間の負担不均衡を引き起こすことも少なくありません。
2・公的支援制度の問題
介護に関する公的支援制度はいくつかありますが、以下のような課題を抱えています。
複数の制度や手続き
介護保険には、介護給付やサービス利用に関するさまざまな制度や手続きが存在します。
たとえば、要介護認定の手続き・サービス利用計画の作成・サービス提供事業者の選定などがありますが、これらの制度や手続きは、利用者や家族にとって理解が難しく、手続きが煩雑なことが問題です。
階層的なサービス提供体制
介護保険では、介護サービスの提供が階層的になっており、要介護認定の度合いに応じて、介護サービスの利用が決定されます。
しかし、その階層的な制度やサービスの選択肢は複雑であり、利用者や家族にとって迷いや困難を生じることが少なくありません。
複数の関係機関やサービス提供事業者の連携
介護保険では、要介護認定やサービス利用に関わる複数の関係機関やサービス提供事業者が関与します。
地域包括支援センター・介護サービス事業者などが関わり、複数の機関や事業者の連携が不十分な場合、情報の不足やサービスの不連続性が生じてしまうことも課題の一つです。
3・介護保険の限定性
介護保険は介護サービスの一部費用を補てんする制度ですが、その範囲には限定があります。
介護保険の特徴ともいえる限定性によって、どのような課題が生じるのでしょうか。
対象者の限定
介護保険は高齢者や障害者など、一定の条件を満たす人々を対象としています。
一般の健康な人や短期的なケアが必要な人には適用されませんので、介護保険のサービスを利用できる範囲が限られています。
サービスの範囲の限定
介護保険のサービスは、基本的な介護や生活支援に焦点を当てています。
しかし高度な医療や専門的な介護・予防的なサービスなどは、介護保険の範囲外であり、他の制度や費用負担が必要になる場合があるため、課題が生じる可能性があることを知っておきましょう。
サービスの提供形態の限定
介護保険では、基本的には事業所や施設を利用してのサービス提供が前提となります。
在宅でのケアや個別のニーズに合わせた柔軟なサービス提供が難しい場合があるため、自己負担で介護保険外サービスを利用しなければいけないこともデメリットの一つです。
4・個人資産の減少
長期にわたる介護により、介護を必要とする人や介護者の個人資産が減少することがあります。
長期介護の経済的負担
高齢者や認知症患者などの介護が必要な場合、長期にわたる介護費用が発生します。
介護サービスの費用や施設入居費用など、これらの経済的負担は莫大なものとなる場合も…。
個人の資産が介護費用の支払いに充てられ、減少してしまう可能性が高くなります。
家計の負担
介護を必要とする家族がいる場合、介護に伴う費用は家計全体の負担となります。
介護離職などによって家計の収入が減少し、生活費や他の目的のために使える資金が減少することがあるのは、今や社会問題ともなっている重大な課題です。
5・軽減措置の不足
介護に関する負担を軽減するための措置や税制上の優遇措置が不足している場合もあります。
高額な介護費用の負担
高齢者や認知症患者の介護には、多額の費用がかかる場合があります。
介護サービスや施設の利用に伴う費用は、一般家庭にとって負担が大きくなることが多く、その負担を軽減するための十分な公的な軽減措置や補助制度が不足していることが特徴です。
介護に関連する経済的負担が家庭にとって重荷となる可能性があります。
手続きの煩雑さと情報の不足
軽減措置や補助制度が存在していても、手続きが煩雑であったり、利用者や家族にとって理解しにくかったりする場合、実際に利用することが難しくなります。
軽減措置や補助制度に関する情報が不足している場合も、利用者が適切に活用できない原因となるため、情報弱者になりやすい高齢者にとっては大きな課題といえるでしょう。
地域による格差
軽減措置や補助制度の実施や内容は、地域によって異なる場合があります。
一部の地域では充実した軽減措置が行われている一方で、他の地域では不足しているといった状況が生じることがあり、簡単に居住地域を変えられない私たちにとっては課題の一つです。
まとめ
介護に関わるお金の問題は複数の要因があり、個々の準備では賄えないケースも多くなってきています。
『備えがないから・収入が少ないから十分な介護サービスを受けられない』という介護格差は、今後より大きな問題となる可能性を秘めているといえるでしょう。
私たちにできることは、積極的に情報収集を行い、情報弱者にならないことです。
少しでも活用できる制度やサービスを知り、自分達の条件に合ったものを選択していく必要があります。
これからの超高齢化社会における介護のお金の問題は、国を挙げて取り組んでいく必要のある大きな課題なのです。