病気・症状

高齢者の皮下出血の原因は?留意すべきことも解説!

『皮下出血』という言葉はあまり使わないと思いますが、字を読んで想像できる通り、皮膚の下に出血してしまうものであり、たらたらと血が流れ出してくる状態ではありません。

高齢になると様々な理由でこの皮下出血が起こりますし、起こりやすい体質になってくるのです。

これをそのまま放置しておくと状態が悪くなる可能性もあります。

今回は、この皮下出血について解説致します。

医学的に『皮下出血』とは何か

画像引用

『皮下出血』とは、血管が損傷して皮膚の下に血液が漏れる状態を指します。

『内出血』という言葉をよく耳にすることもあると思いますが、この一種とされています。

皮膚が破れていないため、漏れた血液は皮膚の下に溜まってしまうのです。

外傷(打撲)によって血管を圧迫したときに起こりやすく、出血直後の皮下出血は、赤血球に含まれる色素「ヘモグロビン」によって、上記の画像ように赤く見えます。

ヘモグロビンが破壊されるため次第に紫色に変わり、この段階の皮下出血が「紫斑」「青あざ」と呼ばれる状態なのです。

さらにヘモグロビンは時間の経過によって緑、黄緑色へ変化し、やがて体内に吸収されて自然に消えることが多いです。

外傷をした覚えのない皮下出血は、血小板の減少、血液を凝固する機能の低下が原因で起こっている可能性もあると考えた方がよいでしょう。

高齢者の皮下出血は危険

若い人でも皮下出血を起こしてしまうことはあります。

軽く壁にぶつけたり、注射の後など・・・

そのような時は、部位にもよりますが「アザができてしまった」と思うぐらいで、特に大きな心配はしないで、通常通り生活を送るでしょう。

しかし、これが高齢者の場合にはそうもいかないのです。

高齢者の皮膚の特徴

高齢者になると皮膚にも変化が起こります。

汗や皮脂の分泌の減少があり、これにより皮膚自体が持っている、バリア機能が低下してしまいます。また、乾燥が引き起こされます。

何となくイメージできるかもしれませんが乾燥が強くなるとかゆみも生じやすくなります。

加齢により新陳代謝が低下すると、皮膚の弾力性が低下したり、皮膚が薄くなったりします。

さらに表面が平坦化して光沢を帯びることもあります。

このように弱い皮膚は傷ができやすく、一度出現しまうと治りにくいこともあるのです。

高齢者が多く過ごす、老人ホームやデイサービスなのでは、何らかの皮膚の処置を必要としている人も少なくはありません。

皮膚のバリア機能の低下に加えて、皮膚やその下の組織などが弱くなった高齢者は、愛護的なスキンケアという意識をもつことで、皮膚の健康維持や促進につなげることができます。

高齢者の皮膚は悪循環!?

とぼとぼ歩いている人のイラスト(女性)

高齢者の皮膚は、乾燥しやすく弱いことが分かりました。日常の生活において、この高齢者の皮膚の特性はどのように影響してくるでしょうか?

若い人でも、皮膚や肌が乾燥しないように保湿剤などを塗って、潤いをキープしなければ、掻痒感(痒み)が出現してきます。

高齢者の場合、この痒みは若い人よりも、より顕著に出てきます。

痒いと、無意識のうちに搔いてしまいます。

掻くと、弱くなった皮膚は傷を受け悪い状態の皮膚になります。

悪い状態になった皮膚、傷ついた皮膚はさらに痒みを感じやすくなり、そこにまた『掻く』という行為が入ってしまいます。

こうなると、皮膚状態は最悪でいくら処置をしても傷が出来てしまう負のスパイラルに陥ってしまうのです。

このようにならないためには、何といっても保湿です。

特に皮膚が乾燥しやすい冬場や入浴後は保湿剤を塗るようにします。

保湿剤は市販のものでも構いませんが、皮膚状態によっては皮膚科の医師の受診を受けて、医療的な保湿剤を処方してもらうことも重要です。

「ちょっと乾燥して痒いなぁ」と思う前に、早目の対応をするようにしましょう。

高齢者の皮下出血の原因

ここでは、高齢者が皮膚剥離をしやすい原因をお伝えします。

原因① 手足をぶつけてしまう

これまで解説した通り、高齢者の皮膚は非常に弱いことが分かりました。

この弱い状態に対して外圧(手をベッドでぶつけるなど)が加わることで、簡単に皮下出血ができます。

高齢になると、認知症になる確率も高くなり、危険の予測ができず手足をぶつけたり、転倒・転落によって皮下出血を引き起こすことも増えてきます。

原因② 血小板に問題がある

血小板は骨髄の中で産生される血液成分の一つで、止血をする役割をしています。その血小板が問題があると、わずかなきっかけでも皮下出血しやすくなるのです。

勿論、通常の出血があるとそれは止まりにくく、怪我をすることリスクが高まるでしょう。

原因③ 血液サラサラ系の薬を飲んでいる

サラサラの血が流れる血管のイラスト

高齢者になれば、脳梗塞など血管に異常をきたす疾患を起こすことが増えてきます。

それよって、血液がサラサラ系の薬を医師から処方されることが多いです。

血液をサラサラにするということは、血管の中を血液がスムーズに流れて詰まったりすることを防ぐということです。

しかし、その一方で出血した場合にはなかなか出血が止まらないというリスクも伴うことになるのです。

皮下出血は体外から血液が流れるものではありませんが、同じ出血には間違いありません。

血液サラサラ系の薬を飲んでいたら、皮下出血を起こしやすい状態になってしまうのです。

原因④ 皮膚の脆弱化

高齢者の皮膚を見たことはありますか?

自宅で高齢者の介護をしている人や同居をしている人なら、目にすることも多いかもしれません。

しかし、普段の生活の中では、まじまじと高齢者の皮膚を目にする機会を少ないと思います。

高齢者の皮膚は薄く、乾燥しています。

なかには、しっかりケアしてない場合には粉をふくほど乾燥している人もいます。

そんな状況の皮膚の下は、外圧などの刺激に弱く、少しの刺激によって皮膚に異常をきたしたり、皮下出血を引き起こす原因になるのです。

これは高齢者施設に入所していても同じで、皮膚の弱い利用者に対しては入念に皮膚をタオルや包帯などで保護したり、接触する際は刺激にならないようにかなりの注意を要してケアに当たっています。

皮下出血から皮膚剥離にならないように注意する

皮下出血を起こすと、皮膚剥離になる可能性が高くなります。

皮膚剥離は、弱くなった皮膚がめくれて出血を伴うこともあります。

この下、閲覧注意画像あり

石井整形外科 - 80代男性手背表皮剥離創 | Facebook

画像引用

画像をよく見ると、皮膚がめくれた部分の上部は皮下出血しているのが分かります。

皮下出血した状態は極めて弱い状態であり、ほんの少しの刺激でも皮下出血を起こしてしまうことがあるのです。

指で引っかいた程度の軽度な皮膚剝離なら治りも早いですが、めくれた範囲が広ければ広いほど治るのが遅くなります。

しかも、家庭ですぐ処置できるものではなく、医療機関を受診するなどし、皮膚と皮膚を張り合わせるような医療行為が必要となるのです。

高齢者介護施設や病院に入所・入院したからといっても、皮下出血をしていれば、皮膚剥離を起こすリスクは高いといえるでしょう。

ただし、専門スタッフ(介護福祉士や看護師)が勤務しているので、皮膚の状態に合わせた予防をしてくれます。

皮下出血(皮膚剥離)の対策まとめ

皮下出血と皮膚剥離は、適切なケアと対策を行うことで予防が可能です。

まず第一に行う対策として、栄養の確保が大切になるでしょう。

皮膚は体全体の健康状態を反映する器官であり、栄養が不足するとその健康状態に影響を及ぼします

適切な総エネルギー量の他に、

●蛋白質

●アミノ酸

●脂質

●鉄分

●亜鉛

●銅

●ビタミン

を摂取することで、皮膚の健康を維持し、皮下出血や皮膚剥離のリスクを抑えることができます。

次に、外傷の予防です。

皮膚が薄くなっている場合、手袋やハイソックス、レッグウォーマー等を着用することで、皮膚への刺激やダメージを防ぐことができます。

また、椅子の脚や肘掛け部分にクッションや弾性包帯を巻くことで、誤ってぶつかった際のダメージを軽減することもできます。

これだけではなく、皮膚・肌自体のケアも大切です。

肌の乾燥は皮膚剥離の一因となるため、保湿クリームやボディクリームの定期的な使用は、皮膚の保湿を保つことに役立ちます。

入浴時には、身体が無防備になり、皮下出血や皮膚剥離のリスクは余計に高まりますので、洗体に際しても、やさしいタオル生地のものを使用したり、場合によっては泡だけで洗うくらいソフトに対応して皮膚に優しいケアを心掛けましょう。


皮下出血や皮膚剥離は高齢者にとって大きな悩みとなることがありますが、適切なケアと対策を行うことで予防し、安心して生活することが可能となります。

適切な知識とケアを身につけ、皮膚の健康を守りましょう。

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