トイレやオムツの中などで便に血が混じっていると、ドキッとすると思います。
何か、恐ろしい病気を発症したのでは・・・と感じる人もいるでしょう。
血便は、消化管からの出血を意味しますが、出血量が少ない場合は、自覚症状がないこともあります。
特に、検診の便潜血検査で陽性反応が出ていても、排便時に明らかな出血が確認されない場合などでは、自覚症状はほとんどありません。
便に血が混じる、『血便』にはいくつか種類があります。
その種類についても解説し、介護者がまず行うべき行動をご紹介していきます。
血便を確認する場面
血便は目で見て確認でき、明らかに便に『血』が混じって分かるものや、肉眼でみても分かりにくい出血である『便潜血』まであります。
高齢者の支援の場面では、簡易トイレ(ポータブルトイレ)や便器、それにオムツ交換の場面があります。
通常、オムツやパットは白色をしていますので、血が出ていればすぐに分かるようになっているのですが、便器に関しては白色だけでなく、薄いピンクやブルーなどのものもあります。
よって、血が出ていても発見が遅れることもあるので注意を必要とします。
介護者は体内から出るもの(汗、尿、便、帯下等)をいつも観察しておく必要がありますが、血便に関してもそれを必要とするので異常がない状態を理解・把握し、異常があった時にはすぐに気が付けるように配慮しておきます。
便に血が混じることの基礎
便に血が混じる『血便』には、『赤い』か『黒っぽい』かで大体出血している場所が分かるとされています。
血が出て時間が経過するにつれて便に混ざる、血の色は赤から黒になるのです。
よく、便器で真っ赤な血を見て驚くようなもの(鮮血)は、肛門に近いところから出ている可能性が高いです。
一方で、便に古い血液が混じって便が黒っぽくなっている状態を『下血』と区別します。
出血する臓器による血便と下血の違いを下の画像で確認してみましょう。
血便や下血で病院に行った場合には、血の色以外に・・・
◆血がでている期間や血の量
◆痛みの有無や便の状態
◆発熱の有無
◆摂取した飲食物
◆海外渡航歴
◆既往歴(以前かかった病気)
などを参考に、総合的に判断します。
血の色で区別できる病気
血便(下血)がある場合は、消化管に出血を引き起こす病気がある可能性が高い状態です。
絶対に放置せずに消化器内科を受診しましょう。
特に自覚症状を伴う場合は、出血量が多く、緊急の対応が必要な状態である可能性があるため、早めの受診を強くお勧め致します。
また、出血の原因となっている病気によっては、出血に関連する症状がなくても、腹痛、下痢や便秘などの排便異常、発熱、肛門痛などの症状が現れる場合もあります。
ここでは、血の色で区別できる病気について解説します。
黒っぽい色
黒っぽい色の場合には、食道や胃、十二指腸などの上部消化管のどこかに出血の原因となっている病気が隠れている可能性が高いです。
上部消化管からの出血は、血液が胃酸と混じるため、黒く変色するのです。
この黒く変色した血液が素材になり、便が作られるため上部消化管からの出血では、便が黒く変色します。
このような色の便が出た場合には、受診では胃カメラ検査を勧められるケースがある、以下のような病気を疑います。
食道の病気
◆逆流性食道炎
◆マロリー・ワイス症候群
◆食道がん
◆食道静脈瘤破裂
胃の病気
◆胃がん
◆急性胃粘膜病変(AGML:Acute Gastric Mucosal Lesion)
◆胃潰瘍
◆胃MALTリンパ腫
◆胃過形成性ポリープ
◆胃静脈瘤破裂
十二指腸の病気
◆十二指腸がん
◆十二指腸潰瘍
◆十二指腸静脈瘤破裂
赤色
◎鮮血便
◎暗赤色便
◎粘血便
これらの場合は、下部消化管(大腸)のどこかに出血の原因となる病気がある可能性があります。
原則として、ストレスが原因で、大腸から出血が起こることはありません。
ただし例外として血の中でも上部消化管からの出血の原因となる胃潰瘍や十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変は、強いストレが原因で起こる可能性があります。
鮮血便、暗赤色便、粘血便が見られる場合は、大腸のどこかに出血の原因となる異常が存在している
め、大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
以下は、考えられる原因となる病気の一例です。
◆大腸癌
◆大腸ポリープ
◆炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)
◆大腸憩室出血
◆虚血性大腸炎
◆感染性大腸炎
◆急性出血性直腸潰瘍
◆宿便性潰瘍
◆放射線性腸炎
◆痔核
血便・下血があったら
家族はどの介助者は、血便や下血があったら、どのような対応をすればいいでしょうか?
まずこれまで幾度となく解説してきました、『色』について観察しておきましょう。
表現が難しい場合には、スマホなどで画像として残しておくのも一つの方法です。
次に、頻度(回数)や腹痛の有無などについて医師に報告できるようにしておきます。
血便や下血関係は、『消化器科内』を受診するようにします。
鮮血の場合には『肛門科』でも構わないでしょう。
カメラ検査(内視鏡検査)
問診や触診では限界があるため、カメラを利用して血便や下血の判断をします。
胃カメラ
経験豊富な内視鏡の専門医なら、短時間で苦痛が少なく検査を行っています。
苦痛や不快感を起こさないよう配慮しながら緻密に検査を行うことで、安全性も高めてくれますし、検査は短時間のうちに終わるので、体のご負担も少なく、比較的らくに終えることができます。
内視鏡専門医・指導医の高い技術レベルを検査に反映できるよう、最新鋭内視鏡システムを導入している病院や医院もあります。
内視鏡分野でも有名なオリンパス社の内視鏡システムなら、微細な病変を短時間に発見することができます。
また、極細の内視鏡スコープは手元の繊細な操作を先端まで正確に伝えるため、より負担の少ない検査が可能です。
大腸カメラ
ベッド上で左側を下にした横向きになり、膝を抱えるような姿勢で検査を行います。
内視鏡を挿入する前に、局所麻酔のゼリーや潤滑用ゼリーを使い、肛門に病気がないか診察で確認してから開始します。
その後、内視鏡を肛門から挿入していきます。
太さはだいたい12mmの内視鏡を肛門から挿入し、大腸の一番奥である盲腸まで内視鏡を進めるようになります。
大腸の長さはおよそ150cmで個人差があり、また、腸の形によっては、仰向けや右向きへと患者様の体の向きを変えながら内視鏡を進めていき、盲腸に到達した後、内視鏡を徐々に抜きながら観察を行っていきます。
内視鏡を抜く際、10分ほどかけて腸内をじっくり観察しますが、腸の形状や長さにより、多少時間が前後する場合があります。観察の際には、内視鏡から空気を入れて腸管を十分に広げ、大腸のひだの裏まで隅々観察をし、この時若干不快感があります。
また、腸内に残っている泡や汚れを適宜水で洗浄しながら、病気の見逃しがないように観察していきます。
観察の際には腸が空気で膨らむため、お腹が張って気分が悪くなるといった症状がみられる場合がありますが、検査中に適宜空気を抜くことで改善するでしょう。